0807 理科教師のための作問入門(14) 構想

 ここから3回にわたり、思考・判断・表現に含まれる3つの視点を見ていきたいと思います。まず、「構想」の問題をどう作問するかについて考えていきましょう。

構想は条件制御に始まり条件制御に終わる

 全国学力調査の問題を見てみると、「構想」に分類されているものの多くが、条件制御が絡んでいます。

 実験方法を1から書かせたりするのは採点が大変ですし、どういう条件で実験するかということを選択式で答えるのでも十分に学力を測れそうなので、当然の帰結かもしれません。

 条件制御といえば、中学校では生命を柱とする領域で対照実験をいくつもやっていますが、もちろん生命領域の専売特許ではなく、エネルギーや粒子、地球でも作問可能ですし、実際に出題されています。

 条件制御の問題は、令和4年度 全国学力調査 中学校理科 1(2)のように、少しずつ条件が違っている似たような実験のうち、どれとどれを比べれば調べられるのかという問題が多く、要因を一つだけ変えて、あとは条件がそろっているものを比べる、という考え方が抑えられていれば、基本的に解答は難しくありませんでした。
 ところが、全国学力調査でいえば平成27年度から、課題(もしくは検証したい仮説)が何なのかということも押さえたうえで、考えなくてはいけない問題が出てきました。平成27年度の1(5)はまさにそこをついた問題でした。4択の問題ですが実はどれを選んでも、何を検証できるかは変わってきますが、とにもかくにも対照実験としては成り立つ。だからこそ、何を検証したいかに注目しないと正しい選択肢は選べないという仕様です。
 ちなみに、平成27年の問題は他にも課題を意識した問題が多く出題されています。そのことは当時の『理科の教育』誌で指摘しました。
 また、平成30年4(2)では、条件制御でも、そろえなくてはならない条件を指摘するという今まではあまり問われることのない問題が出ています。この問い方だと、答えがいくつも出てきてしまうので、採点がちょっとめんどくさくなるんですよね。

 したがって作問する際には、課題(もしくは検証したい仮説)を明確にして、そこからどういう条件で実験するのかを選択肢として落とし込む必要があります。

条件制御でない構想の問題

全国学力調査で「構想」とされているものの中で、条件制御以外の出題パターンとしてこんなものがあります。出題者としておすすめ度合いも載せておきました(これはそれぞれの問題の良否をさしているのではなく、あくまでも出題・採点の立場からのコスパの程度を表したものです)

おすすめ 平成27年2(2) 平成30年5(2) 自然事象をモデルを使って再現した実験において、モデルを使った実験で使った道具が、実際の自然現象の何に対応しているかを問う。
⇒モデルの対応は課題がある、つまり意外にわかってないという結果だったので、出題する価値は大きいです。

チャレンジ 平成24年 4(6) ある事象を説明する2つの異なる仮説のうち、どちらが正しいかを検証するために何に注目し、どのようになればどちらの仮説が正しいことになるかを問う
※平成27年6(2)はこのパターンの変化球です。
⇒それなりの作問技術が必要な出題者にとってのチャレンジ問題ですが、うまくできると美しい問題が作れる可能性が高いともいえます。

微妙 平成24年 1(6) 独立変数をより細かく設定する。
⇒検討改善で、令和4年の5(3)に通じるポイントですが、少々狭い内容。

採点で悩みそう 平成30年9(2) ある事象が起きる要因を考える。
⇒ブレーンストーミング的な側面があり、採点で悩むことを考えると試験によっては出題しにくい。

授業でやれ 平成27年 7(3) ある事象を観察して、疑問に思ったことから課題を設定する。 
※平成30年8(3)はこのパターンの変化球で、新たな疑問を書かせています。
⇒この問題が出題された当時は課題や疑問を書け、という問題は全くと言っていいほど出題されていなかったので全国学調で出されたということで業界の一部には大きなショックを与えたはずなのですが、これも答えがいくつもある。しかもふざけたりしなければ、ほとんど何を書いても正解になりそうな勢いもあるので、試験問題としてはあまり広がらなかった(広げられなかった)というのが個人的な感想です。
 これはテストより、授業で扱った方がいいのでは…?生徒の疑問や課題にフィードバックもしたいし。

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