前回のモデルを見ると、中和で水ができるのはわかりましたが、他にもイオンがありました。
ということは、中和でできるのは水の他に何かあるのかな?
課題:中和によって水の他に何ができるのだろうか。
前回のモデルで(2)でちょうど中和が終わりましたが、このときのビーカーの中身に注目してみましょう。
H2OとNa+とCl-がそれぞれ2個ずつあります。
ここから水を蒸発させるとNaCl 塩化ナトリウムが結晶として出てきます。
ちょっと丁寧に見ていきましょう。
塩酸 HCl と、水酸化ナトリウム水溶液 NaOH は、それぞれ電離してイオンになっています。
両者が出会うと、水素イオンと水酸化物イオンは、すかさず水に変化してしまいます。
すると、アルカリの陽イオン(ここではナトリウムイオン)と酸の陰イオン(ここでは塩化物イオン)という余り物どうしでコンビを組みます。そうしてできた物質を塩(えん)と呼びます。
塩酸と水酸化ナトリウム水溶液でできる塩(えん)は塩化ナトリウム、通称「食塩」ですが、最も身近な塩(えん)ともいえるので、塩(しお)とも呼んでいますね。なので、読み方には注意しましょう。
塩は、アルカリの陽イオンと酸の陰イオンのコンビですから、酸とアルカリの組み合わせによって、違う種類の塩ができてきます。
たとえば、硝酸と水酸化カリウムだったら
硝酸 HNO3 → H+ + NO3–
水酸化カリウム KOH → K+ + OH–
ですから、 カリウムイオン K+ と 硝酸イオン NO3– で 硝酸カリウム KNO3 が塩として生成します。
硝酸カリウムは1年生の溶解度や再結晶のところで登場しましたが、水に溶ける塩です。
また、硫酸と水酸化バリウムでは
硫酸 H2SO4 → 2H+ + SO42-
水酸化バリウム Ba(OH)2 → Ba2+ + 2OH–
ですから、 バリウムイオン Ba2+ と 硫酸イオン SO42- で 硫酸バリウム BaSO4 が塩として生成します。
硫酸バリウムは白色の難溶性(水に溶けにくい)の塩ですので、沈殿します。
ちなみにこれを前回のようなモデルで書こうとすると、難溶性の塩ということは水に溶けてイオンとならず、むしろH2Oのようにがっちりくっついたまま沈殿します。
なので、(2)などはイオンがどこにもなくなってしまうので、この瞬間の液体は電流を流すことができません。
結論:中和によって、水の他にアルカリの陽イオンと酸の陰イオンが結びついた塩(えん)ができる。
で、このような中和の仕組みは酸性の土壌にアルカリの石灰(生石灰・水酸化カルシウム)をまいて改良することなどに使われています。
他にも酸性の河川を中和している例もありますが、こちらは中和に使っている「石灰」は石灰石(炭酸カルシウム)で、中学理科で定義するアルカリ(水溶液になると電離して水酸化物イオンを生じる物質)ではないところに要注意が必要です。
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