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0973 【化学変化と電池07】化学変化と電池(3) ボルタ電池の仕組み

 では、亜鉛、銅、塩酸のボルタ電池をもとに、どのような化学変化が起こっているのか考えてみましょう。

 まず、銅と亜鉛では以前の実験で、亜鉛は銅よりイオンになりやすい(イオン化傾向が大きい、ということがわかっています)。相対的に、亜鉛はイオンに、銅は原子になりたがるのです。

 ということで、電池の亜鉛板も、原子からイオンになります。
 Zn → Zn2+ + 2e
 イオンになるということは、水溶液中に溶けだしてしまうということです。なので、電池としてどんどん反応が起こると、やがて亜鉛板はボロボロになってしまいます。
 それと、亜鉛イオンが1個できると電子も2個できますが、この電子も処分しなければなりません。これについては、ちょっとペンディング。

 先に銅の方を見てみましょう。
 「銅は原子になりたがる」ということでしたが、すでに銅は原子です。ありゃ。じゃあこれで終わり、何も起こらないか、というとそうではないのです。でも亜鉛側が「原子をイオンにした」手前、やっぱり「イオンを原子」にしなければなりません。
 逆に言えば、陽極側で何とかイオンを原子にしないと、そもそも亜鉛側で原子をイオンにできないのです。
 でも、ない袖は振れない。じゃ、銅イオンはないけど、ほかにイオンはないか…、ありました。水溶液(塩酸)中に水素イオンがあるじゃないですか!

ということで、銅板表面にある水素イオンが、原子の水素になるのです。で、水素原子は1個だけではいられないので、同じような水素原子同士でペアを作って水素分子Hを作るわけですね。
2H + 2e →H

 ちょっと意外なことに、亜鉛と違い、銅は化学反応式に登場しません。つまり、銅は化学変化しないのですね。
 そして、こちらは水素分子を1個つくるために、電子が2個必要です。この電子をどこから調達してきましょうか。

 もうおわかりですね。そう、亜鉛側でイオンとともにできた電子をここで使うのです。

 さて、電子がこのように流れているとき、どちらが電池の+極、-極でしょうか。
 電子は、電池の-極側からでて回路を通って、電池の+極側に入ります。
 したがって、亜鉛側がー極、銅側が+極です。

 全体像をまとめます。

つまり亜鉛と銅はこういうことだと表にまとめておきます。

亜鉛
イオン化傾向大イオン化傾向小
金属板の原子がイオンになる水溶液のイオンが原子になる
-極+極

+極で「水溶液のイオンが原子になる」とありますが、水溶液中にある陽イオンが、ナトリウムイオンのようにイオン化傾向がかなり大きい場合は、原子になることもままなりません。そうすると
O2+2H2O+4e→4OH
のようなさらに別の反応が起こります。

ボルタの電池の一種に「11円電池」というものがあります。飽和食塩水をしみこませたろ紙(もしくはキッチンペーパー)に1円玉と10円玉を挟むと電池になります。このときは

アルミニウム
イオン化傾向大イオン化傾向小
金属板の原子がイオンになる水溶液のイオンが原子になる
-極+極

となります。
-極では Al → Al3+ + 3e
+極では 2H + 2e →H
となりますが、11円電池でひそかに言いたいことは
円玉が
円玉が
ということです。はい。

※ただし、11円電池は1円玉のアルミニウムが溶ける、つまり貨幣を損傷してしまうため、貨幣損傷等取締法で禁止されていますので、実行は厳禁です。
 以前、手品師が海外でマジック用に穴を開けたり、内側をくりいた日本の硬貨を持ち込もうとして貨幣損傷等取締法で摘発された事件があります。裁判では手品師側は「加工コインによるマジックができなくなり、表現の自由を定めた憲法に反する」と主張したものの、最高裁で一蹴されました
 なので、コンプライアンスを尊重する手品師さんは外国のコインを使います。ということは、もし、外国のコインを使った手品をやっていたら、コインにタネがあるということか?!

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