今年も共通テストがありました。コロナ禍に大雪に津波、そして東大ではまさかの事件も起こり、受験生はもちろん、運営側もいろいろ大変な2日間だったとお察しします。
共通テストは、高校の学習内容をもとに出題されているはずですが、よくみると知識レベルは中学校の範囲だったり、文章をよく読んでちょっと考えて計算すれば中学生でも正解できるものもあります。つまり、きちんと理科を勉強した中学生でもできてしまう問題は何問か紛れているのです。
2022年度の共通テストからそんな問題を拾っていきましょう。今日は理科②から物理と生物、地学を拾ってみます。化学は該当問題はありませんでした。
物理
第1問
問2
次の文章中の空欄[2]に入れる選択肢として最も適当なものを後の①~④のうちから-つ、空欄C[3]に入れる語句として最も適当なものを直後の{ }で囲んだ選択肢の中から-つ選べ。
図2(a)のように垂直に矢印を組み合わせた形の光源とスクリーンを凸レンズの光軸上に配置したところ、スクリーン上に光源の実像ができた。スク リーンは光軸と垂直であり、F、F’はレンズの焦点である。スクリーンと光軸の交点を座標の原点にしてスクリーンの水平方向にx軸をとり、レンズ側か ら見て右向きを正とし鉛直方向にy軸をとり上向きを正とする。光源の太い矢印はy軸方向正の向き、細い矢印はx軸方向正の向きを向いている。このとき観測者がレンズ側から見ると、スクリーン上の像は[2]である。
次に図2(b)のように、光を通さない板でレンズの中心より上半分を通る光を完全に遮った。スクリーン上の像を観測すると
[3]{①像のy>0の郎分が見えなくなった。
②像のy<0の部分が見えなくなった。
③像の全体が暗くなった。
④像にはなにも変化がなかった。 }
[2]は倒立、上下左右が逆になる。光源がxyともに正の向きなのだから、像はxy軸ともに負の向きとなる。 ③
[3]
これは凸レンズの働きのときに使った図ですが、紫赤黄青緑、どの光も像をつくっています。これに上半分の紫赤黄がなくなっても、青と緑の線(光)で像はできますよね。ただし、線(光)の量が減ったわけですから、像は暗くなります。③
問2 Bさんは,水平な実験机上をなめらかに動く力学台車とばねばかり、おもり, 記録タイマー、記録テープからなる図1のような装置を準備した。そして物体に一定の力を加えた際の力の大きさや質量と物体の速さの関係を調べるために次の2通りの実験を考えた。
【実験1】いろいろな大きさの力で力学台車を引く測定を繰り返し行い,力の大きさと速さの関係を調べる実験。
【実験2】(割愛)
問2 【実験1】を行うときに必要な条件について説明した次の文章中の空欄
[8][9]に入れる語句として最も適当なものを、それぞれの直後の { }で囲んだ選択肢の中から一つずつ選ぺ。
それぞれの測定においては力学台車を一定の大きさの力で引くため,力学台車を引いている間は
[8]{①ばねばかりの目盛りが常に一定になる
②ばねばかりの目盛りが次第に増加していく
③力学台車の速さが一定になる }
ようにする。
また各測定では
[9]{①力学台車を引く時間
②力学台車とおもりの質量の和
③力学台車を引く距離 }
を同じ値にする。
これは知識ではなく、実験の計画、とくに[9]は条件制御の話なので、考え方自体は小学校からやっている内容。
[8]「力学台車を一定の大きさの力で引く」って言ってるんだから、ばねばかりの目盛りが常に一定にならなきゃダメでしょ。 ①
[9]「力の大きさと速さの関係を調べる」のだから、速さの要素となる時間や距離は揃えられない。でも、とりあえず速さと無関係な質量の条件は揃えないとダメでしょ ②
あと物理では、第3問が、電圧のグラフの意味を読み取れれば、問2の[18]と問3以外は正解を導けるはず。(問1は0.5を5×10-1表記する点はおまけして)
生物
生物は、知識ではなく、あたえられたデータからだいたいこういうことだろうと読み取れればできる問題。
第1問の問2もタンパク質のアミノ酸配列とかすっ飛ばして、違う部分が大きい⇒似てない⇒系統樹で遠い…と想像できればいけそうだけど、今回はパスします。
第4問
実験1 アリの巣と餌場の間を図1のような二つの通路(通路A 通路B)でつ ないだ。しばらくするとアリの行列が観察された。条件Ⅰでは通路Aと通路 Bの長さを同じにし,条件Ⅱでは通路Aよりも通路Bを長くした。実験開始か ら30分経過した後に通路Aと通路Bを通行しているアリの数を10分問記録 した。条件Ⅰと条件Ⅱで各20回の試行を行い. 両通路のうち通路Aを通行して いるアリの割合が0~20%, 20~40%, 40~60%, 60~80%, 80~100%であることが観察された回数をそれぞれ数えたところ,表1の結果が得られた。図2 は条件Ⅰでの通路Aの通行率と,そのときの通路上のアリの分布の例を示したものである。なお実験中のアリは巣と餌場の周囲以外では通路上のみを通行できるものとする。
問1 実験1 の結果の記述として適当なものを次の①~⑥のうちから二つ選べ。 ただし解答の順序は問わない。
① 条件Ⅰでは各試行における通路Aおよび通路Bの通行率は,それぞれ約50%になった。
② 条件Ⅰでは各試行における行列は通路Aと通路Bとに交互にできた。
③ 条件Ⅰでは20試行中の14試行で,80%を超えるアリが,通路Aまたは通路Bのどちらかに集中した。
④ 条件Ⅰ ・条件Ⅱともに通路Aと通路Bの両方にほぼ同数のアリが行列 をつくった観察回数は全体のなかで最も少なかった。
⑤ 条件Ⅱでは20試行中の16試行で80%を超えるアリが通路Bを通行 した。
⑥ 条件Ⅱでは通路の長短はアリの通路の選択に影響しなかった。
知識不要の読み取り(読解力)問題。
① 当該記述は、条件Ⅰの40~60%が20となることを意味しているけど、そうではないので×
② 交互かは実験結果からわからない。×
③ 0-20%(つまり80%を超えるアリ通路Bに集中)が7試行、80-100%%(つまり80%を超えるアリが通路Aに集中)が7試行で、合計14試行、つまり正しい。
④ 条件Ⅰ ・条件Ⅱともに40~60%のところが最少。正しい。
⑥ 当該記述は、条件Ⅱの0~20%が16となることを意味しているけど、そうではないので×
⑥ 条件Ⅱでは80%を超えるアリが通路が短いAに集中しているのが20試行中16試行。明らかに通路の長短が影響していますから× ③④
地学
第3問
B 問3
(略)…このように年代を知るのに使われる化石を何と呼ぶか。また,それはその化石となった生物のどのような特徴を利用したか。名称と特徴の組合せとして最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選ぺ。
年代を知るのに使われる化石は示準化石、流行(はやり)のあいつです。③
ちなみにあえて具体的な化石の生物と地質年代の関係を問わないところが、断片的な「知識」ではなく、思考して得た本質的な理解をみたいんだろうな、という感じがします。ま、受験生の中には示準化石=生存期間が短い、示相化石=生息環境が限られる、と暗記に走る人もいるんだろうけど。
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