1620 プラスチックと密度の実験
以前つくった3つの液層に、プラスチックを入れる実験。
ただ、液体は作り直して、99.5%のエタノールでは密度が0.8近くなって密度の小さいPPでさえ沈んでしまうので、水で薄めて50%のエタノールとします。
50%のエタノール(密度0.9)、水(密度1.0)、飽和食塩水(密度1.2)で3層をつくります。
まず、50%のエタノールは赤で色を付けています(左)。
そのあと、無色の水、黄色で色づけした飽和食塩水を漏斗とゴム管を使ってそこに入れて加えると(右)、うまく3層別れました…といいたいところですが、メスシリンダーの目盛りに注目してください。
左の写真を見ると、赤い50%エタノール層の体積は50cm3。ところが、右で赤い部分はそれより少し多くなっています。というか、黄色と無色の境界がはっきりしているのに比べ、無色と赤は少しずつうすくなっていきます。つまり、多少境界面付近では50%エタノール水とただの水が混じっているわけです。
そこに、5大プラスチックのサンプルを
小さく切って、3層のメスシリンダーの中に入れます。そうするとどうなるか。
まず、一気に下に沈んだのが、PET(ポリエチレンテレフタラート)とPVC(ポリ塩化ビニル)。ちょっと見えにくいですが、底に沈んでいます。
それからPS(ポリスチレン)は密度が1.05-1.07なので水と食塩水の間で止まっています。
PE(ポリエチレン)の密度は0.92~0.97ですので、50%エタノールと水層の間で止まるはずですが、エタノール水と水が混じってしまったので、赤い層の中で止まっています。そのあたりがちょうど液体と同じ密度なのでしょうか。
そして最も密度の小さいPP(ポリプロピレン)は浮いています。
で、全体像。ただしこのときは、PPだけでなくPEまで上に浮いてきました。これは密度の小さい50%エタノールに密度の大きい水がどんどん混じって、相対的に赤い層の密度が大きくなったため、PEが浮いてしまったものと思われます。
つまりエタノール水と水層で、境界面をつくるのは難しいということですね。
ところで、密度は物質ごとに固有の値をもつと勉強します。たとえば、アルミニウムだと2.7g/cm3、鉄だと7.9g/cm3というふうに。この話が純粋な金属だったら、話は簡単です。ある物質の質量を体積で割ると7.9になった。じゃ、これはアルミニウムじゃなくて鉄だな、としても問題はありません。
ところが、プラスチックの密度には幅があるという点には注意が必要です。
資料によっても違いますが、PETの密度は1.38-1.40,PVCの密度は1.2-1.6となっています。一応この数値が正しいとすると、次のような事が起こります。
*たとえば、あるプラスチックの密度が1.39g/cm3とわかっても、それだけではPETと断定できなません。PVCの可能性も十分にあるわけです。
*プラスチックAの密度が1.3g/cm3、プラスチックBの密度が1.5g/cm3だったとして、「密度が違うからプラスチックAとBは別の種類のプラスチックだ」とも言い切れないのです。どちらもPVCという可能性もあるわけです。
金属なら、密度ですぐ結論が出るはずなのに(「合金」は反則ですっ)、これはまた歯切れの悪い話です。
ですから、プラスチックの分別は、PET,PP,PEのどれか、みたいにかなり絞られていないと、密度だけでは断定できない部分があります。
ちなみにPETかPVCか迷っている場合なら、バイルシュタイン反応でチェックできますね。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません