2325  HANB教育を振り返る(2)

加藤先生との出会い

 平成15年9月、筆者の飼っているネコのかかりつけの動物病院で「臨床獣医学フォーラム」というイベントの案内を頂いてきましたた。無料で、そして市民向けの講座もあるので(しかもなぜか弁当付きの講座も)、参加しようと思ったのですが、そこで「HAB」という3文字のアルファベットが目についきました。
 「HAB系」と称された一連の講座を見てみるとなんとなく、HABがどういうものであるかはわかったが、その中でも気になったのが「-人と動物の絆-ヒューマンアニマルボンド教育」というタイトルの講演である。商売柄、「教育」という単語に惹かれ、この講座に参加してみようと思った。
 講師は獣医師の加藤元氏。動物病院の院長をしている傍ら、ヒューマン・アニマル・ボンド教育を普及させるNPO法人、日本ヒューマン・アニマル・ボンド・ソサエティ(以降J-HABSと表記する)の会長でもある。講演の冒頭で参加者にプロフィールを聞いた。獣医師、VT(動物病院の看護師さん)、市民、そして教員…なのですが、そのとき教員は私だけでした。そして講演は、HABは何かというところから始まり、HABが多くの科学に基づいてできていること、その効果、そしてHAB教育の必要性を熱く説いていた。
 その時点で長く考えていた、子どもにとって身近な自然といえるペット(コンパニオンアニマル)から始める生命尊重・自然愛護の気持ちを高める教育活動へのヒントを得たような気がしたので、講演のあと、加藤氏にいろいろ話をうかがい、HABに対する熱い想いを聞かせていただいた。それと同時に、自分の中でHAB教育の展開の必要性を確信してしまい、「いつかこのテーマで授業を展開してみたい」と思ってしまったわけです。あの頃は若かった。

素朴な疑問

 数日後、学校にHAB関係の資料が届き、主にイヌを使ってどんな活動をしているのかより詳しくわかったわけですが、一方でネコ派の自分としては。当時大学の構内にいたネコたちのことが頭に浮かび、それに関する素朴な疑問をメールで資料送付のお礼とともにこんな質問をしてみました。ちなみにAAEというのはAnimal Assisted Education(動物介在教育)のことです。

お世話になっております。

昨日、学校に資料が届きました。ありがとうございます。
さっそく「総論」を拝読させていただきました。
みなさんのHABに対する想いと期待が先日のフォーラムと同様に伝わってきました。

ところで、一つ質問があります。
本校は、中学校だけでなく、幼稚園から大学院まで一つのキャンパスにあります。そのキャンパスには、野良猫が何匹かいます。その野良猫を門のところにいる守衛さんや、大学の学生さんなどが、定期的にエサをやっています。もちろん、猫もその餌を食べたり、門の近くで寝そべっていたりします。私の知る限り、とくに猫をいじめたりするような場面は見かけたことがありません。

このような状況を、HABやAAEの立場から見ると、どうなのでしょうか?もちろん、感染症の問題とか、トラブル時の責任体制の問題とかはあるでしょうが、人と動物のふれあいという面では、良い効果は確実にある、ある意味理想の形だと思うのです。だからこれを否定的にとらえたくないんです。

というのも、本校(小学校や幼稚園なども含んで考えます)でAAEを実施する場合、訓練や検査を受けた、いわば「エリート」の動物との交流だけで教育活動を進め、学内にたくさんいる野良猫たちを、まるで汚いものを見るように「あれは野良猫だからさわってはいけません」で切り捨てたり、その存在を全く無視してしまっては、かえって、動物間の差別意識を生み、本当の意味での自然愛護・生命尊重からは、むしろ逆行してしまう気がしてなりません。

AAEの中で、エリートではない彼らノラ猫たちとのつきあい方も、ぜひともカリキュラムの中に含まれるものであってほしいと思うのですが…その点はいかがでしょうか?

ただ、当時のメールをさかのぼっているのですが、これに対する答えのメールはいただいていませんでした。おそらく口頭でいただいたのかな、忘れてしまいましたが。

ミッション

 その後も、獣医師界の重鎮は、ペーペーの中学理科教師とサシであっていただき、いろいろ話をしていただいたり、おいしいものをおごってもらったりしましたが、ある依頼を受けていました。

 学校でHABの授業を展開できないか。また、教員研修などをして仲間を増やせないか。 

 たぶん、河辺先生のArTechもそうだったと思うのですが、教育を謳うNPOやNGOでは、自分たちのやっていることを学校に導入してもらいたい半面、なかなか学校はコネもないことから相手にすらしてくれない(当時はカリキュラム・オーバーロードという言葉はありませんでしたが、すでにそうなっていた気がします)。そこに学校の教員という内部の人間が賛同してくれたというわけですから、そりゃ協力を仰ぎたくなるわけですね。

 一方、私の方もたしかに加藤先生からの熱伝導という側面はあったものの、野心あふれていた時代で、これはうまくいくと一つの業績にできるのではないか、他にやっている先生がいなければブルーオーシャンだし…という目論見もありました。
 ただし、いざ学校でやろうとすると、総合的な学習の時間はすでに各学年で年間の予定が立っているので入り込みにくく、理科でもさすがに教科書から外れてそんな好き勝手なことできませんし、そもそもそんなことやる時間はありません。てことで実質放置状態が何年も続きました。
 そもそも自分の中ではKid’s ISOなど「省エネルギー学習実践モデル校」をメインで回していたときでしたし。動くとしてもその後だなと。
 実際、省エネルギー学習実践モデル校が終わった2006年に転機が訪れました。

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