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0448 東北研修2012:「釜石の奇跡」は奇跡なんかじゃない!/その他メモ書きから

津波は人的被害が避けられる唯一の天災です。

釜石市も津波の被害にあい、死者・行方不明者が1000人を超えました。しかし小中学生の被害は学校にいなかった5人。2921人99.8%の児童・生徒は津波から逃れました。マスコミでは群馬大-釜石市防災課-釜石市教育委員会が連携した釜石の防災教育が功を奏した「釜石の奇跡」と言われていますが、関係者はそうは思っていないようで…

事前にDVDで避難した小中学生や、学校の先生のインタビューを見ましたが、「釜石の奇跡」という表現には違和感を持っています。すなわち、これは防災教育の成果で、もう一度同じことが起きてももう一度みんな同じように避難して助かるだろうから、「奇跡」なんかじゃない、というわけです。

たしかに、ここまでの対策をしているのに、何も知らない第三者が「(努力の結果ではなく)たまたま運が良かった」というニュアンスのある「奇跡」という言い方をするのは、関係者に失礼というものです。「釜石の奇跡」に替えて「釜石の当然」と言っていいのではないでしょうか。もっとも、おごりの気持ちをもってはいけませんが。
それにしても、「教育の力」というものを改めて思い知らされます。

釜石市の防災担当者の方からお話をいただきました。
「防災教育では一定の効果があったかもしれないが、これだけの犠牲者が出てしまって、防災担当としては切腹もの」

そもそも防災教育を始めたきっかけは、住民意識の低さがあります。明治29年、昭和8年、昭和35年と津波はあったのに、10%も逃げる人はいない、住民意識の低さです。
なぜ逃げないか。来るはずはない、テレビで見ていると50cm程度と言っている。寒い。というような回答。
防災講演会を開いても来るのはいつも同じ人で減少傾向。
それならば子供の意識を変えておとなの意識を変えよう、家庭を変えて地域を変えよう、という考え方で防災教育をはじめました。

当初は反対も多かったようです。沿岸の学校は内陸出身の若手の先生が多く、地域を知らない。そのため現実的には地元出身の用務員さんがリーダーになっていこともあります。

津波防災教育のための手引き
釜石市動く津波ハザードマップ

津波避難の3原則
 一つ目は「想定にとらわれるな」。
 二つ目は「最善を尽くせ」。
 三つ目は「率先避難者たれ」。

その他、こんなことも話されていました。
帰宅困難者よりも死者を出さないように対策することが重要。
人的被害を出さないことに集中すべき、死んだら防災は負け
たしかに東京では3.11の反省から帰宅困難者の問題が言われていますが、よく考えてみると死者は出ない、という前提で議論されているような部分もあるかもしれません。だとすると東京はまだまだ甘いのかも…。

その他メモ書きから

東北研修2012シリーズ。最後は、今までの記事で触れることのできなかった内容について、メモ書きをアップしておきます。断片的なものが多いですが、ご容赦を。
(注:この記事は旧ブログで東北研修2012の最後に取り上げた記事です)

被災地格差
宮城、被災地まで近いので救援などが充実
岩手、被災地まで遠いので難しい
宮城、岩手 それでも自然が原因なので前向きに復興を目指している
福島、いつどこで何をやればいいのかわからない。
相手 東電・原発があるため気持ちがそこへ向かってしまう。

「被災地」から「復興地」と呼び方が変化

住民の気持ち
ぜひ見にきて欲しいと思っている。最も恐れているのは忘れられること。
ほとんどの方は普通に元気に生活している。哀れむのではなく
写真も構わない。さすがにある国会議員のようにVサインをするのはまずいが。

田老町 壊滅的な被害
田老観光ホテル三階まで被害
防潮堤の被害があったために大被害
自分で身を守らない悪い事例に
「津波安全地域」の被害

被災地の修学旅行
被災地を見せ物にするわけではなく
広島などの平和学習と同じ考え方
土産物なし、トイレも不十分、それを理解して

宿泊施設
沿岸地のホテルシングルは少なく、あっても復興関係者数ヶ月単位で抑えている
速攻で宿泊施設をおさえたのは、マスコミ.

被害状況
ライフラインの復旧
盛岡 電気3日、水道2日、ガスはプロパンガスで復旧は早かった。
仙台 電気3日、水道3日、ガスは都市ガスで点検のため一月かかった。
92.5%が津波による水死
62.5%が老人65歳以上

復興特需
 仙台市内は揺れたのでホテルは使えない
 盛岡は大丈夫だったがホテルの数が少ない
 ホテルを抑えたのはマスコミ→ライフライン(電力、水)→工事、生保、損保、自動車メーカー
 ※警察はホテル 花巻温泉ではパトカーや護送車が集まる
 自衛隊は野営

 ガソリンは10L買うのに5時間かかる。自転車の修理依頼殺到、ママチャリはもちろん、高級自転車も売れる。

仙台の歓楽街
 作業服を着て金曜日に呑みに繰り出す例も。
 仙台 国分町ではテナント入居率が70%切れ→95%以上
 キャバクラの時給アップ 東京より高くなるため、東京から仙台へ出稼ぎする例も

遠野
 内陸―沿岸の中間にある唯一の町
 後方支援活動の前線基地、そのつもりで平時から準備していた。

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