0167 昭和22年指導要領試案での理科の教科書
戦後間もない時期、昭和22年試案の学習指導要領時代に使われていた教科書を見てみましょう。
海をどのように利用しているか(大日本図書)
文部省著作教科書 私たちの科学9 海をどのように利用しているか
中学校第2学年用
表紙と中扉 サイズは 縦 17.7cm × 横 12.8cm
カラーは表紙の海の絵に青を使っていただけです。扉以下はずっとモノクロです。
先に奥付を見ておきましょう。
昭和22年3月26日、30日にそれぞれ印刷、発行。昭和23年6月7日、10日に修正印刷、発行。で、昭和23年6月10日に文部省検定済。昭和24年度発行と。発行所は大日本図書。
目次…ではなく目録です。
「まえがき」「むすび」の他、海洋、海水の動き、海水jの作用、海水の成分、海洋と生物の5つの章に別れています。1つの章はいくつかの節で構成されており、各節は「海と陸とはどのようにしてできたのであろうか」という問いになっており、1冊で30の節(問い)があります。
そして海をテーマに物・化・生・地縦横無尽に展開されます。「海」をテーマに多面的・多角的に学習しているというみかたもできますが、このような学習を積み重ねただけでは、知識の漏れやだぶりがあるだけでなく、物理や化学などそれぞれの学問については系統的に学習していないため、知識同士のつながりに気づきにくく、応用が利かないという批判があります。
物理の例。「海はなぜ青いか」という問いのもと、プリズムの分光のことをやっています。物理だと他にも水圧や波の話もあります。
地学の例。「海岸は海水によって、どんなに変化するだろうか」という問いのもと、海による地形の話が出ています。
化学は「食塩はどんな元素からできているか」という問いのもと、食塩水を電気分解しています。
もちろん生物もあります。「海そうはどんなに利用されているか」「プランクトンとはどんなものか」ほか、そもそも「海洋と生物」で一つの章を割いています。
昭和22年の学習指導要領には、たしかに第八学年の理科指導に「単元三 海をどのように利用しているか。」とあります。が、第八学年にやる理科の単元はこれ含めて6つあります。この教科書は91ページありましたから、同じボリュームの教科書を6冊1年間で(1冊を2か月で)やるのはかなりきついだろこれ。「這いまわる経験主義」とか揶揄されてるけど、これ、いちいち経験していたら教科書終わらない量だし。むしろ詰め込み教育なんですが…。
着物は何から作るか(三省堂)
文部省検定済教科書 私たちの科学7 「着物は何から作るか」
もはや理科というよりは家庭科の教科書といったほうがいいかもしれません。繊維の種類やメリヤスとはどんなものかとか詳しく書いています。ただ、「人工絹糸はどのようにしてつくるか」で銅アンモニア法で人工絹糸をつくる実験をやるなど、理科の矜持は忘れてはいません。
印刷発行は昭和25年2月。
土はどのようにしてできたか(三省堂)
文部省検定済教科書 私たちの科学10 「土はどのようにしてできたか」
今日の物理・化学・生物領域の話は全くと言っていいくらいありません。地学領域のみです。むしろ社会科の「地理」っぽい内容(いわゆる自然地理)が多いです。
昭和25年初版、26年再版。定価24円50銭。
縦20.7cm × 横 14.7cm 「着物」は54+索引3ページ、「土」は89+索引3ページです。
交通通信機関はどれだけ生活を豊かにしているか(三省堂)
同シリーズの3年生用の教科書。
結構高度な電気回路が登場しています。理科というより技術・家庭の技術分野かな。
昭和25年 定価38円
意外にレベルは高い?こなせたのか?
まさに「生活単元学習」ということで、子どもの生活を題材に学習が進められていますが、その内容は今の中学校理科と比べると結構レベルは高い印象です。どこまで当時の生徒がこれを知識として理解していたかが気になります。
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