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0528 マグネシウムに水をかけてはいけないのは

町田の工場でマグネシウム火災が発生しました。

マグネシウムに引火?金属加工会社で火災、8人重軽傷 東京・町田
 13日午後4時15分ごろ、東京都町田市成瀬の金属加工会社「シバタテクラム」の工場から出火、午後6時半現在で1、2階計約1400平方メートルが焼け、東京消防庁が消火活動を続けている。同庁によると、男性作業員8人が負傷し、うち3人は重傷とみられるが、いずれも意識はあるという。

 警視庁町田署によると、工場は地下1階、地上2階建てで、1階部分が火元とみられる。工場内でマグネシウムを扱っており、水をかけると、化学反応を起こして爆発的に炎上する恐れがあるため、消火活動が難航している。

 会社関係者は「ハンダ付けの火花が飛び散り、近くにあったマグネシウムなどに引火した」と説明しているといい、同署が詳しい出火原因を調べている。

 現場はJR横浜線成瀬駅から東に約1キロの商店やアパートなどがたち並ぶ一角。近くの介護施設の男性職員は「雷が落ちたような『ドーン』という音がして外を見ると、黒煙がみるみるうちに広がっていった」と不安そうに話していた。
(msn産経ニュース 2014.5.13 17:48)

なぜ、マグネシウムを扱うと水をかけてはいけないのでしょうか。

マグネシウムは水と反応し、水素が発生します。ということは、水素が燃えて爆発することが考えられます。
Mg+2HO→H+Mg(OH)

そのため、マグネシウムは消防法によって危険物2類(可燃性固体)に指定されています。しかし、禁水性物質という意味では第3類(自然発火性物質及び禁水性物質)に似た面もあります。

ということで、マグネシウムの運搬容器には「火気注意」と「禁水」の2つの表示をしなければいけません。

では、このような火災の場合、どのような手段で消火したら良いのでしょうか。
困った時のMSDS…といいたいところですが、いつの間にかMSDSからSDSへすり替わっていました。ということで、困った時のSDS…界面活性剤みたいだ…を調べてみると、

産総研の化学物質の爆発安全情報データベースにあるSDSは火災時の措置について次のように書かれています。

火災時の措置
消火方法 少量の場合は乾燥砂等で被覆して消火する。延焼危険がある場合は、速やかに容器を安全な場所に移す。大量に燃えている場合には周囲への延焼防止を図る。水、炭酸ガス、泡消化器等を使用してはならない。
消火剤 金属火災用消火剤、乾燥砂、フラックス、黒煙粉、ダライ粉(鉄系金属の切削粉)。

また、中災防の安全衛生情報センターのSDSでも、以下のように書かれています。

5.火災時の措置
消火剤: 小火災:粉末消火剤、ソーダ灰、石灰、砂
大火災:乾燥砂、粉末消火剤、ソーダ灰、石灰
使ってはならない消火剤: 水、泡消火薬剤
特有の危険有害性: 熱、火花及び火炎で発火するおそれがある。
消火後再び発火するおそれがある。
火災によって刺激性、毒性、又は腐食性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法: 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
移動不可能な場合、容器及び周囲に散水して冷却する。
消火活動は、有効に行える十分な距離から行う。
容器内に水を入れてはいけない。
消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器を含め完全な防護服(耐熱性)を着用する。

水は厳禁で、代わりに砂を使うのですね。
ちなみに炭酸ガス、つまり二酸化炭素で消火しようとすると、逆効果です。二酸化炭素中でマグネシウムは燃えてしまうのです。

 その他、塩化ナトリウム、つまり食塩が消火剤に使われることもあります。

 この工場はマグネシウム合金の機械仕上げ加工が主な業務ということですので、加工中のマグネシウムの切りくずが発火して、周囲の切り屑や機械油などに引火した-という可能性が考えられます。

 なお、マグネシウムの火災事故は意外に多く、岐阜県土岐市にある小野田森村マグネシウムでは22日(火)午前2時40分頃に工場火災が発生し、鎮火したのは6日後の5月28日(月)午後3時でした。(延焼の恐れがなくなったことを確認して消防が鎮火宣言するので、実際には工場火災そのものは発生の翌日に鎮圧しています)。

参考サイト
マグネシウム切削の火災防止対策は?
マグネシウム合金取扱い上の注意(大阪富士工業株式会社)
携帯電話ボデーの仕上げ作業で爆発事故が頻発!
携帯電話用外枠生産工場でのマグネシウム粉じんの爆発・火災
日本マグネシウム協会

マグネシウム火災に対する乾燥砂等の消火効果に関する検証
町田での火災の現場において、燃焼しているマグネシウムを窒息消火させるための、乾燥した砂を用意することに時間を要した。ことから、乾燥した砂及びパーライト、水分を含んだ砂及びパーライト、耐熱クロスによる消火にどのような差異が生じるかについて、基礎的な消火実験を行った論文  

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