2107 或る植物園の終焉(後編) 

 この記事は旧ブログで2021-12-31に更新したものです。
 新ブログに移行するにあたり、バレバレだとは思いますが当該植物園の名前を伏せました。現在は園長も経営方針も植物も入れ替えてリニューアルして同じ園名で営業しているので、一応。

2階から眺めるのもまた善き哉。

2階のコーナーも充実してたんですよ。企画展示コーナーもあったけど、それ紹介したら写真がいっぱいで、この記事が年内に終わらない。この記事が更新されるのは大晦日だぞ。なんで今回はあえて、普段の植物センターの展示を見てみますよ。いろいろ解説したいけど全部吹っ飛ばす!






3階もあるんだな、これが。




で、やっぱり2階の企画展の写真も1枚だけ。「知の果てのまだその先へ植物園の種をまく」という企画展だ。全国の小さな植物園や博物館、コケの展示などもあったけど、ここは企画展に込めたメッセージが最大の見どころだな。異論は認める。

植物園は好きですか?
博物館は?水族館は?美術館は?動物園は?
図書館は?プラネタリウムは?科学館は?民芸館は?
それからそれからそれから……
世界中には不思議なものや綺麗なものがたくさんあって

日本中に面白いものや不思議な世界を体験できる場所がたくさんあります。
自分の眼で見て、自分の手で触れて、自分の心で感じると
楽しく過ごせる世界がどんどん広がります。
さあ、新しい世界へ出かけよう!

わたしたちは やめない。
 
知ろうとすることを。
知りたいと思うことを。
知らせようとすることを。
知っているふりをしないことを。
知ることを。
 
さあ行こう、
種子をみつけに。
知の果ての まだその先へ。

「たとえ明日、世界が滅亡しようとも
   今日私はリンゴの木を植える」
Even if I knew that tomorrow the world would go to pieces,
I would still plant my apple tree. 
             マルチンルター

 渋谷区ふれあい植物センターは皆様にとってどんな存在だったでしょうか。「ホタルを見に行った」「お昼休みの休憩を過ごした」「学校から帰ったら皆で集まってゲームした」「遠くにいるけれどブログを読んで身近に感じていた」思い出は様々でしょう。沢山の思い出に関わらせていただき本当にありがとうございました。「センター」という名前から植物の販売施設やショールームと間違われることもありましたが、「日本で一番小さい植物園」が渋谷区東の地域に溶け込んだ区民の皆様のお庭として、多くの方に愛していただいた植物園であったなら良いなと思っています。

 私たちスタッフは「植物と人間、人と植物園の懸け橋になる」ことを目標にしてきました。「植物センターが面白かったから、次は**植物園行ってみようかな」「ここで職場体験して、植物の事好きになったから高校は園芸高校行きます」「なんか植物育てたくなっちゃったから、渋谷に良い園芸店ありますか」そんなお声がよせられるのが、私たちの喜びでした。植物園を通して、植物を楽しむ・生活を楽しむ・人生を楽しむ、文化が育まれるのを感じていたからです。

 植物は我々生物にとって無くてはならない存在です。二酸化炭素を吸収し酸素を供給してくれるだけではなく、生物は何かしらの形で植物を介した食糧を食べて生きています。人間はさらに、植物由来の繊維を身にまとい、家を建て、紙に文字を書き連ね、まさに衣食住の全てを植物に頼って生きているのです。人間の営みは植物と共にあり、植物は我々を支えてくれています。

 マルチン・ルターの上記の言葉は彼の信仰の志を意味するとされていますが読み手によって解釈は様々です私たちは延々と重なる明日を生き抜くために、種子を播き続かねばなりません。命の糧の種子を、文化の礎の種子を、生きる喜びの種子を。

 渋谷の植物園はあなたの心に「植物園の種子」を播きました。水をやり大きく育てていただいても、種子のまま大切に持っていていただいても、誰かにあげても、自由にしていただいてかまいません。けれどもどうか種子を持っている事の大切さを忘れないでください。あなたは種子を持ち明日を繋ぐ人です。

 いつかどこかの木陰で一息つかれた時、一瞬でいいのでその木陰を生み出す樹のことを、足元で揺れる小さな花のことを想っていただけませんか。渋谷の植物園の魂をこの世界の全ての植物とあなたに託します。17年間、誠にありがとうございました。

あなたに満開の花よ咲け、花よ降れ。

          2021年12月
          *************
          園長 ****

 

 くそ、催涙弾だ。泣かしにかかりやがる。

 で午後6時の閉館までねばったよ。みんな名残惜しくて6時過ぎても居座るんじゃないかと思ったら、敵もさるもの。みんなで外へ出でドームの消灯を見守りましょうと放送があった。そしてカウントダウンがこの有り様だ。なんでみんな電気が消えただけで拍手するんだ。自分もしたけど。

とどめに、ドームの外で園長の挨拶だ。

 愛する施設や、館や、場所として失って悲しいと思う最後の園にしませんか。ここからは残していくだけです、つなげていくだけです。
 私たちは、言葉があり、文字があり、 そして心があります。 誰かに、つなげていくことができます。 植物たちは、自分の命を使って皆さんに 食料を与え、そして空気を与えて生きています。 私たちは、それを甘受して生きているわけです。 だからこそ、皆さんはそれを受け取ったうえで次につなげていくことができるはずです。
 植物園だけではありません。 文化や、喜びや、生きる糧それぞれ皆さんにとって大切なものというのは、 皆さんにとって大切だからこそ、誰かにつなげていく必要があります。 それを、誰かにバトンとしてつなげていくために自分に何ができるかを考えてみましよう。 それが、渋谷にできる、渋谷の植物園にできる 最後の仕事でした。 だからこそ受け取ってください。 おうちに帰るまでが、楽しい遠足の、ひとつです。 どうぞ皆さんお気をつけてお帰りください。 そして来年、自分が「いいな」って思うところに行かれたら、ぜひ、それを「いいな」って思って 誰かに伝えるようにしてください。
 17年間、ありがとうございました。 そしてまた、どこかでお会いしましよう。 あなたにも、私にも、そして誰かにも。 花よ降れ、花よ咲け。 では皆さん、お気をつけてお帰りください。 ありがとうございました。

 この後、スタッフへのねぎらいが続くんだけど、冬の寒い時期のはずなのにこれだけ熱い想いを託されたら、これだけ種子を播かれたら、明日に、未来につなぐしかないじゃねーか。受け取った身になってくれよ。

 種は受け取った。おい、種。育ててやるから「実」になってくれよ。
 受け取った「実」になってくれよ。

 推しは推せるときに推せ!布教はオタクの教義!「カール請願」ではもう遅い!…というわけか。
 しょうがない。「いいな」と思ったことは、来年もこのブログでも伝えていくよ。それが自分にできることだから。

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