川崎市にある生田緑地は、多摩区と宮前区にまたがる多摩丘陵の一角にあり、標高84mの枡形山をはじめとした起伏に富んだ地形の地学スポットです。
以前、勤務校では江の島で地学巡検をしていたのですが、学校から遠いことや雨の日が大変だということ、さらに観察地が整備されるなどして地層観察が難しくなったこと、そして、あの東日本大震災を経て、班行動中に津波が発生した場合のリスクを考えると、100人以上の中学生を引き連れていく江の島巡検は難しくなってきました。
そんなわけで、当時、江の島に代わる巡検場所を開拓する必要があったのだ。このあたりの経緯と実際の開拓のようすは拙稿「地層の野外観察地の選定プロセスと生田緑地での実践」をどうぞ。
さて、生田緑地の地層ということで、枡形山の入り口から登山して観察します。といっても、高低差40~50m程度、1時間程度ですが。
立派なシダですね。
1番目のポイント。飯室層。土を触るとさらさらしています。つまり小さな粒、泥の層です。
飯室層は、約100万年前に海で堆積した地層(海成層)です。貝の化石から、水深100mほどの浅い海で堆積したことがわかります。飯室層のほとんどが、緻密な泥~シルトで構成されている不透水層なので、露頭表面はいつも濡れていてコケやシダが生えています。
少し上がったところです。泥岩より茶色っぽい部分に「節理」と呼ばれる規則性のある割れ目が見られます。
もう少し登ってみました。次に2番目のポイント、飯室層をほぼ水平な不整合面で覆った上にある「おし沼砂れき層」です。約30万年前に堆積した海成層です。土を触ると、飯室層にくらべざらっとしていて粒が大きいです。さすが砂礫層。
縞模様がよくみられます。二酸化マンガンの黒い粒や鉄の酸化物による赤い層などがみられます。また、このあたりには平べったい礫が落ちています。浅瀬で波に両方向から来ていることがわかります。これが川のように一方向の流れだったら、一方だけ削られるのでおにぎり型の石になるはずです。
飯室層では粒が小さくそれゆえに緻密なため根が入り込めなかったのですが、ここでは植物の根が入り込んでいます。
さらにのぼります。上の薄茶色が関東ローム層です。関東ローム層の中でも多摩ローム層の上の方です。29万年前の箱根火山噴火によってできた「ごま塩軽石層」もあります。長石が風化して白っぽく見えて霜降りのように見えます。白は石英、黒は角閃石を中心に輝石や黒雲母のごま塩です。寒冷化により海から陸になったこともわかります。
29万年前の火山噴火によってできた「ごま塩軽石層」
立川ローム層の下の部分。約5万年前。
そして頂上へ。いやその前に。
ニャンコ発見。
あ、頂上行かなきゃ。(続く)
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