0508 炭素と水素はどっちが酸素との結びつきが強い? 中学生用水の合成バッグ編

むかし、あるMLで見かけた質問
水素と炭素ではどちらが酸素との結びつきが強いのですか

つまり、こういうことだ。
酸化銅は炭素を使うと還元するが、炭素の代わりに水素でも還元できる。
これは炭素や水素が、銅よりも酸素との結びつきが強いからこそ起こる化学変化である。
それでは炭素と水素ではどちらが酸素との結びつきが強いのだろうか、という素朴な疑問である。

だいぶ昔の話なので、その質問にどういうレスがついたかは覚えてないし、もしかしたらスルーされたのかもしれないが、少なくとも、結論は出ていなかったはずだ。その時自分もどっちなんだろうと疑問に思っていたから、答えが出てたら覚えていたはずだ。
MLって昔の投稿が探しにくいんですよね~SNSもそうだけど…だからブログ派なんですが。

そんな質問があったことも忘れて、長い時間がたったある日。
教育実習生さんが還元のところを一生懸命授業しているのをボケーっと眺めていたときに、その質問について、こんな答えを思いついたので記しておきたい。

マグネシウムは二酸化炭素中で燃焼できる
2Mg + CO2 → 2MgO + C    … (1)
小学校での経験から、二酸化炭素中では物は燃えないと思っていた生徒はこれを見て驚き、マグネシウムが炭素から酸素を奪ったという説明がすんなり入りやすい実験である。
そして、ここから酸素との結びつきの強さは C < Mg  ということが分かる。

ここで(1)の化学反応式中の Mg を H に置き換えてみる。
H + CO2 → 2HO + C    … (2)
ここから酸素との結びつきの強さは C < H  ということが分かる。
この化学変化が本当に起こればな!

では(2)の化学変化がおきるかどうかを確かめるには、具体的にどのような装置を使ってどのような手順で実験したらいいのだろうか。
(2)の化学反応式をよ~く眺めてみよう
2H + CO2 → 2HO + C    … (2)

Cの部分がないと…
2H + O2 → 2HO … (3)
こ、これは…!! ただの水素の燃焼の式やないか!

これ、水の合成バッグとかユージオメーターとか使って教科書に載ってるよね。
あの実験で、酸素を二酸化炭素にすり替えてやればいいのだ!
逆に、あの実験で酸素の代わりに二酸化炭素を使おうって発想、今まで微塵もなかったよね。

ということで、中学生用水の合成バッグF35-1410
まずは普通に水素と酸素でやってみよう。併せて30mLまでという注意事項があるので、水素20mL+酸素10mLでやってみる。

ですよね~。

それではいよいよ本題、
酸素の代わりに二酸化炭素を入れて、つまり水素20mL+二酸化炭素10mLで実験してみた。
酸素の時ど同様にパンと音を立てて水ができれば水素の勝ちが確定する。

酸素の時と変わらず音がして、水ができた。
このときの化学反応式は、次のとおりである。
 2H2 + CO2 → 2H2O + C
マグネシウムの燃焼の時は、集気びんの中に炭素の粒があったが、水の合成バッグの中にはそんなものはない。
それもそのはず、10mLの二酸化炭素だと、そこに含まれる炭素は5mg程度。それが全部1か所に固まっていたとしても、肉眼で見つけるのは難しいだろう。そして、実際はバラバラにあると思われるから、なおさら炭素の粒は見られない。

かくして、水素の勝利といえそうだ。
ただ、ちょっと気になることがある。この中に酸素は混じっていないのかと。
どうしても口の付近とかは空気が入るスペースがある。ちょっとそこは気になるところだ。

なので次回はこの実験を完全に酸素をシャットアウトできるユージオメーターでもやってみたい。
理科室に未開封のユージオメーターWB-1Nもあるし。

  つづく