0676 風船やマシュマロの入った容器の空気を抜くと…

真空ポンプとデシケーターという肉厚のガラスの容器を使った実験です。
デシケーターの中に風船やマシュマロを入れて、真空ポンプでデシケーターの中の空気を抜きます。
どうなるでしょうか。

空気を抜く前は、風船の中と外に空気があり、風船の中の空気は外に向けて、ちょうど風船を膨らませるように、圧力がかかります。一方、風船の外の空気は、風船をつぶそうとするように圧力がかかります。両者が等しくなったところで、風船の大きさが決まります(図1)。

ところが、真空ポンプで空気を抜くと、風船の中の空気は変わらず、風船の外の空気だけが減っていきます。すると、風船を周りからおす圧力が小さくなります。そうすると、膨らもうという圧力の方が大きくなるので、風船は膨らみます(図2)。

しかし風船が膨らむとそれだけ広い面積を押す必要があるので、風船の中の圧力も小さくなります。そうして風船の外と中の圧力が等しくなったところが風船の大きさとなるのです(図3)。

マシュマロはどうでしょう。動画で見てみましょう。

では、ふくらんだマシュマロを食べるために、デジケーターを開けてみましょう。それには、もう一度空気を入れなければなりません。が…

空気を入れたらまた小さくなってしまいました。「がっかりだよ!!」by桜塚やっくん

フリーズドライ

ということで、容器の中にマシュマロを入れ、真空ポンプで引くと、マシュマロが膨らみますが、マシュマロを食べようと思って、容器を開けると、空気が入ってしまい、マシュマロは最初の大きさに戻るどころか、かえって小さくなってしまうことがわかりました。

そういえば、フリーズドライ製法のドライは真空乾燥だけど、なぜ、わざわざ「フリーズ」(冷凍)する必要があるのか。小さくなったからこれで良さそうじゃないかと思ったので少し調べてみました。

実はフリーズドライは、冷凍させてから真空乾燥させることで、凍結したまま水分子(氷結晶)を固体から気体に「昇華」させているのです。こうすることで食品の水分が入っていった場所(空間)が収縮されません。したがって水のあった空間が孔になるので多孔質に仕上がります。形が崩れていないので、これに水を入れると短時間でもとのみずみずしい状態に戻る点です。

温めて乾燥させたのでは、乾燥したら水のいた場所が潰されてしまいます。だから水を加えても元に戻らないのです。

これをもとにマシュマロが小さくなった理由を考えると、
1.中心部の水分が気化しようとして表面へと移動する
2.いっしょに溶けているものも表面へ移動する
3.結果的に、中心は疎、表面は密、となる
4.そこに真空(低圧)から普通の気圧に戻ったとき、
    ア.中心は疎なのでつぶれる。
    イ.表面は密なので外から空気や水分が入りにくい
5.したがって、最初の状態より小さくなる

で、このフリーズドライ技術が永谷園の「さけ茶づけ」(1970年)、や日清食品の
カップヌードル(1971年)の具で使われ、現在ではインスタントコーヒーや
味噌汁などにも使われているわけですね。

ま、マシュマロをフリーズドライして水やお湯で戻して食べてもしょうがないですが。