操作の理由 (2016-07-05)
教育実習生の授業で、ネギの根を使った細胞分裂の観察をやっていたのですが、観察前の説明の板書に、塩酸で処理をする、染色液をたらす、根を押しつぶす、などの操作が書いてあり、授業でもそれを説明したあとに、丁寧にそれぞれの操作の理由を説明していました。
別に悪いわけではないし、普通の授業のですが、なにか引っかかりました。
この違和感は何だろう…。
この観察をどうやろうか構想するとき、思考の流れとして、たとえば
1)ネギの根の細胞を顕微鏡で観察したい
2)ではネギの根を切ってプレパラートを作ろう
3)でもネギの根は細胞がたくさん重なっているから顕微鏡で見たら真っ黒だ。
4)ネギの細胞をばらさなくちゃ
5)そうだ、塩酸処理しよう (ここは実際には先生からのアドバイスでしょうが)
6)でも、細胞の核がよく見えない
7)そうだ、染色液で…(ここも先生からのアドバイスで…)
という流れになるでしょう。
なので、授業でも実際に観察実験の計画は立てなくても、そのような、実験方法に対する小さな「課題→解決」を入れながら方法をたどっていくことで「活用(構想)」の力がついていく、そこに授業改善の余地があるのではないか、そんなことをふと思った授業でした。
(実習生の授業の良し悪しを言っているのではありませんよ)
キリンを冷蔵庫に入れる3つの手順(2012-10-05)
知っている人もいるとは思いますが、こんなクイズがあります。
キリンを冷蔵庫に入れる3つの手順は?
Thinking time!
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正解は
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1 冷蔵庫の扉を開ける。
2 キリンを中に入れる。
3 冷蔵庫の扉を閉める。
まじめに考えた人ほど、この「正解」にいろいろ突っ込みを入れたい気持ちはあると思います。
ただこれって、「キリンを冷蔵庫に入れる」という目的を達成するための手順としては至極妥当なんですよね。123それぞれの手順は確かに目的達成に必要不可欠で、この3つの手順を踏めば確かにキリンは冷蔵庫に入り、このことに反論の余地はないでしょう。
この答えに突っ込みを入れたい人は、おそらく「だからどうやって冷蔵庫の中にキリンを押し込むんだよ!」みたいな、それぞれの手順の詳細が述べられていないことへの指摘だと思います。もちろんそれも実務上は大切なことでしょうが、123の大局的な手順に比べれば、枝葉の部分で、そこらへんにとらわれすぎたから、冒頭のクイズに正解できなかったわけでしょう。
実は生徒実験についても似たことが起きているんじゃないかな、と考えているのです。
つまり、生徒は教科書を見ながらその手順通りに操作する。すると、たぶん予定通りの結果になってくれる(ことが多い)。ただ、肝心の生徒は、自分が何を(何のために)しているか、何が起こっているか、その意味を分かっていない…。実験の後で先生が考察やまとめをするところで、手を動かした体験としての生徒実験とは無関係に、黒板に書かれた知識を覚える。(少し極端な書き方をしていますが)
ちょうどそれが「大きい冷蔵庫を用意して…」「キリンに首を下げてもらって…」と細かい部分であーだこーだ悩んでいる様子と重なるのです。もし、実際にキリンを冷蔵庫に入れることになったら、キリンの大きさを考えず、大きい冷蔵庫を用意して、仮にその必要がなくてもキリンに首を下げてもらうのだろうなと。
中学校学習指導要領の理科の目標には「目的意識を持って観察、実験を行い」とある。つまりただ観察、実験を行えば良いのではなく、そこには何のために行うのかを考え、学習の結果、何が獲得され、何がわかるようになったかをはっきりさせることが重要なわけです。
たとえば、酸化銀の加熱実験では、「酸化銀を加熱し、できた物質の性質を調べる」という目的を設定して、
1.酸化銀を加熱する
2.できた物質の性質を調べる
というシンプルな2つの手順をまず押さえます。
そして次に、1では酸化銀を加熱するための具体的な方法になりますが、これは見方を変えれば、「酸化銀を加熱する」という目的を達成するための手順
2では「性質を調べる」という点に関してどのような性質を調べるのか?を押さえて、それぞれの性質を調べる方法に入ります。
そうして、一つ一つの細かい操作の意味が見えてくるようになるのではないでしょうか。
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