寄贈者の菱川法之氏は日本蝶類学会会長でもあり、チョウの専門家ということで蝶、じゃなかった超すごいチョウのコレクションというのはわかる。ところが、もう一つ、異常巻アンモナイトがこれだけあるというのはどういうことだ。北海道というアンモナイトの産地ということはわかるけど、それにしてもチョウのついでにシレッと異常巻アンモナイト50個とか、意味が分からないのだが(ひれ伏す)。
アンモナイトといえば内部構造にある隔壁。これは普通の巻貝との大きな違い。で、アンモナイトの表面を磨いて見られる縫合線は隔壁の外殻との接合部にあたります。つまり縫合線が複雑な形をしているということは、隔壁が複雑な形をしているということになります。
ニッポニテス オキシデンタリス
ちなみに、アンモナイトが登場したデボン紀では、縫合線は結構シンプルな形をしていましたが、進化につれ、複雑化したようです。
ニッポニテス オキシデンタリス
アンモナイトには、隔壁同士をつなぐ細い管、連室細管があります。中に入れる液体の量をコントロールして、浮力調整に使っていたと考えられています。連室細管はオウムガイは中心部に見られますが、アンモナイトは縁の近くに見られます。
ニッポニテス・ミラビリス
化石になるとこの連室細管を通じて泥などの堆積物が入ることもあります。泥岩とアンモナイトの密度差が小さいため、CTで中の構造を壊さずに分析するというのも、そう簡単ではないようです。
ニッポニテス・ミラビリス
最初の貝は カンブリア紀のStage2 からいたようですが、0.1mm~0.2mmと小さく、電子顕微鏡サイズでした。でも、この時から巻貝や二枚貝もあったといいます。
最古の頭足類はプレクトロノセラスというのがあり、これもカンブリア紀。
頭足類では一時期、頭部の一部が変化して「腕」になったという仮説もありましたが、現在は「足」が変化し「腕」になったと考えるのが妥当だとされています。
ニッポニテス・ミラビリス
頭足類はまっすぐな形からだんだん曲がっていったと考えられています。直角石(オルソセラス)から、少し湾曲し、さらに巻きが強くなる感じです。
アンモナイトもデボン紀に出現しましたが、まっすぐなバクトリテス類からだんだん曲がってらせん状に進化していきます。
ニッポニテス・ミラビリス
さて、異常巻アンモナイトと言いますが、決してそれ自体は異常(奇形)ではなく、正常巻のアンモナイトから進化してできたものです。
ニッポニテス・ミラビリスは、世界でもっとも有名で、かつ、珍しい異常巻アンモナイトです。特に完全なものは少ないはずなのですが、そんなものが、当たり前のようにここに30個くらいあります。これを富の集中といわずして何といおう。
ニッポニテス・ミラビリス
異常巻きアンモナイトは、一見でたらめなようですが、U字型の蛇行を繰り返すなど、ちゃんと規則性があります。個体差は大きいですが。
ユーボストリコセラスが蛇行してニッポニテスになったのでは?と考えられています。
ニッポニテス・ミラビリス
コメント