音の三要素として、「大きさ」「高さ」「音色」があります。このうち、「音色」は比較的難しいのでおいといて、中学理科は「大きさ」と「高さ」についてとりあげます。
この「大きさ」「高さ」については、日常会話で「声が低くてよく聞こえない」「しっ!声が高い!」などと、「大きい」「小さい」の意味で「高い」「低い」を使うことがありますが、理科ではこれらを明確に区別をします。「大きくても低い音」「小さくて高い音」というのもあるわけです。
さて、音の大小や高低については、モノコードを使った実験があります。
はじくときの弦の条件をいろいろ変えて、音の大小や高低の変化を調べるのです。
変える条件 かっこよく言うと独立変数
①はじく強さを 強くする←→弱くする
②弦の長さを 長くする←→短くする
③弦の太さを 太くする←→細くする
④弦を引く力を 大きくする←→小さくする
結果 条件を変えて調べたい音の大きさや高さが従属変数
①強くはじくと 音が大きくなる 弱くはじくと音が小さくなる
②弦が長いと 音が低くなる 弦が短いと 音が高くなる
③弦が太いと 音が低くなる 弦が細いと 音が高くなる
④強く引かれた弦をはじくと 音が高くなる 弱く引かれた弦をはじくと 音が低くなる
この結果だけを暗記しても、どうせすぐに、「長いときがどっちだっけ…」、ということになります。
なので、どうしてこういう結果になるかイメージで理解したいところです。
考え方
①はじく強さ
「音の大きさ」は振幅、つまり振動の幅の大きさで決まります。
振動の幅が大きい音を「大きい音」とよびます。
したがって、強くはじく、すなわち弦を大きく振幅方向に動かしてはじけば
振幅が大きくなる、つまり大きな音になるのは、そりゃそうです。
②弦の長さ ③弦の太さ
「音の高さ」は振動数、すなわち1秒間に何回振動したか、で決まります。
振幅を一定とすれば、「振動の速さ」といってもいいでしょう。
振動数が大きい≒振動が速い と「高い音」になります。
弦が「太い」または「長い」ということは、すなわち「質量が大きい」のです。
※音の話から脱線する話題なので色を変えます。なんだったら飛ばしてもよいです。
質量についてですが、運動方程式F=maの質量mを特に「慣性質量」と呼んだりするくらい、慣性に深く関係があります。
慣性とは物体が等速直線運動、つまり向きや速さなどの運動の様子がずっと変わらない状態を続けようとする性質、ということができます。質量が大きいと慣性も大きくなるのですが、それは、向きや速さなどの運動の様子の変化をより嫌うということです。
ところが、振動という運動は何度もあっち行ったりこっち行ったり、向きや速さなどの運動の様子が変わり続けています。ある意味、慣性がむちゃむちゃ嫌がる運動といえます。
したがって質量が大きいと振動はしにくくなるのです。
質量が大きいと振動はしにくくなるので、あまり振動しない、振動がゆっくり、振動数が小さい…ということになります。
これは「低い音」ですね。
逆に考えれば「短い」「細い」弦は「軽い(質量が小さい)」ので、簡単に振動する。つまり素早く振動する、振動数が大きい…これは「高い音」となります。
④弦を引く力
では、弦を強く引っ張ると高くなるのはどう考えたらよいでしょうか。
強く引っ張られると、ピーンと振動のないまっすぐな弦に戻ろうとするはたらきが大きい
→早くまっすぐな弦に戻ろうとする
→速く弦が動く
→高い音になる
考え方は以上ですが、実験結果を単に丸暗記するのではなく、こうだからこうなるという理屈を理解しておきたいところです。
ところで、高い音は振動数が大きい、低い音は小さいといいますが、実際に振動している弦を見てもよくわかりません。ヒトの耳に聞こえるぎりぎりの低い音でも、1秒間に何十回も振動しているのでわからないでしょう。
そこで、高い音と低い音の弦の振動のスロー動画を撮影しました。太い弦(ゴム)が低い音、細い弦(ゴム)が高い音の例です。同じスピードで再生していますから、弦の動く速さを比較してみましょう。
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