0469 電気分解装置いろいろ
水の電気分解で使った装置を見てみよう。
この実験では、基本的に水酸化ナトリウム水溶液というヤバめの液体を入れる、ということに注意してそれぞれの装置の使い勝手を考えてみよう。
H字管
まずは古典から。文字通りH字になっているガラス管。H字の端には電極やゴム栓をさす。ところが、H字管を使った電気分解は操作が複雑なのと液をこぼしやすい(というかこぼれるのが前提となっている)ためにバットの中でやるというそれってどうなの仕様。
また、特殊な形のガラスということは、割れやすく、そのくせ高い。作る側も相当に熟練した職人でないと作れないのでそれはもっともな話。それどころか、作れる人がいなくなってきているという話もどこかで聞いたような…。教科書のメイン実験器具としては後進に道を譲ったので、だんだんと消えていく運命か。
今回は中性の硝酸カリウム水溶液でやってみました。BTBで色をつけ、電圧をかけたら、陽極側が黄色、陰極側が青になりました。
次のような反応が起こったためです。
陽極 2H2O → O2 + 4H+ + 4e–
陰極 2H2O + 2e– →H2 + 2OH–
中学生用電解装置EA-400N
ステンレス製の極を2本とりつけたプラスチック製の水槽とガラス製目盛り付き気体捕集管(2本)およびプラスチック製気体捕集管ばさみがセットになっています。
私が公立中にいた20世紀末の頃、これを使って生徒実験をしていました。
しかし、液体の量が結構必要なこと(たとえばH字管は250~300mLなのに対し、これは400~500mL)、そしてご覧の通り液面がフツーに露出しているのでこぼれやすい。実際、私が授業したとき、水酸化ナトリウム水溶液がはねて顔にかかったという生徒がいて速攻で病院に連れていきました。幸い目ではなく(当時は保護眼鏡の着用という概念はなかった)、ほおにかかったかかからなかったかという程度だったので大事にはなりませんでしたが、今思えばこの装置って安全性に相当問題がありますよね。おそらくそういう事例、他にも多くあったんじゃないかと。
さて、水の電気分解はアルカリ性の水酸化ナトリウムは危ない!ということで、中性の硝酸カリウム水溶液でやってみたところ、時間がかかって使い物にならない。20Vで1分でも0.5mLがいいところです。電圧をかけて4~5秒後には黄色と青に分かれるのですが。
で、何分か電圧をかけて黄色と青になるでしょ。そのあと、黄色と青に分かれた液体を全部戻すと緑色になるかと思いきや、なぜか青くなりました。それも電気分解を重ねるほどどんどん青くなっていきます。H+よりOH–の方がたくさんできたのかな?同じだと思ってたのに…
それはともかく、アルカリ性になると、電気分解したときの気体が発生するスピードが中性のときより段違いに速い。これはそれこそ2004年にこのEA-400Nをメインにして紹介した水の電気分解の原稿にも書いたけど、H+やOH–は他のイオンに比べて当量イオン電導度が大きい、つまり水溶液が電流を流しやすいんですよね。こっちはスイッチ入れて1分で水素(青)側が1mL発生しています。
そうするとやっぱり、水の電気分解には酸性やアルカリ性の水溶液じゃないと実験には向かないわけだ。南無~。
電解装置E-DF型
マリスこと東京前川科学の電解装置E-DF型。
こいつのすごいのは中の液体を封じ込めていること(一応、小さな空気穴はある)。これにより、液体が手につくというリスクがほとんどなくなった。ただ、最後に集まった気体を確かめる実験をするときはやはり液体が手につくリスクは残る。
ちなみにマリスこと東京前川科学は、2000年に倒産してしまいました。かつては「東京」前川科学なのに、なぜか北海道に強大な営業力をもっていたり、科学館の展示品製作を島津理科(京都科学標本)とともにほとんど複占状態だったりしたのですが…
未開封の電解装置E-DF型の箱、貴重品です! メル●リで…(おぃ
水の電気分解装置WE-02
へー、ついに。。。
水道水でいいんだって。水酸化ナトリウムいらないの。水の電気分解装置WE-02
でもお高いんでしょ? ¥19,800(税別)
同じナリカで白金めっきチタン電極つきのH字管電解装置が¥19,600(税別)なので、十分検討の余地がありそう。
おそらく電極として使われている白金チタン、ニッケルが触媒として反応に一枚噛んでいるのだろうけど、もはやブラックボックス。
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