1400 日常生活の生理學

加藤元一「日常生活の生理學」岩波書店,昭和7年(1932)

 著者の加藤元一(1890-1979)は慶応大学医学部教授・医学博士です。京都帝国大学医科大学を卒業後、同大学生理学教室に入り、1918年に講師となったと思ったら、同年に慶應義塾医学科予科の創設に伴って生理学教授として転任。1923年「不減衰伝導学説」を発表し、1927年帝国学士院賞を受賞しました。

 そして昭和6年から7年にかけて、東京中央放送局(現在のNHK)のラジオ放送で「日常生活の生理」について連続放送しました。専門書と違ってラジオ放送ですから、一般向けに誰にでもわかるように話したようです。その放送の記録を加筆修正し、さらにわかりやすくするために中等学校の整理衛生の教科書(これも加藤自身が書いている)から図を転載したものがこの本です。

 ということで、本当にわかりやすい。生理学としての解説を自分の体でよく体験していることとリンクさせて話しており、さらに「暖かくなるとどうして眠くなるのか」「心臓の弱い人はなぜ運動して悪いか」「胎児が十カ月間も水の中で肺呼吸をしないで生きていられるのはなぜか」「寒いと鳥肌が立つのはなぜか」など、なるほどそうなのか…と、引き込ませる、今風にいうと主体的に学習に取り組ませようとする力があります。中学理科の「生物の体のつくりとはたらき」とする領域や高校の生物を担当する人は読んでおいても損はないかと。

 調べてみたら古書店で数千円しますが、国立国会図書館デジタルコレクションでも読めます。途中、欠けているページが目立ちますが。

 ただし、この本に載っている「生殖の話」の一講は都合によって放送されなかったという…うん。なんというか、わかる気がする。妙なことに、国立国会図書館デジタルコレクションでも、「第11章生殖の話」がそっくり欠になっているんだよな。手元にある本にはちゃんと11章があるんだけど、見ても、そんなヤバいこと書いてな…あ!

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