0593 アジサイの蒸散実験 (2)実験編

気を取り直してもう一度。
アジサイはどこから蒸散しているかを調べるために、次のような実験をしました。

アジサイを切って水の入ったメスシリンダーに入れます。
 そのまま  
 葉の表側にワセリンを塗る
 葉の裏側にワセリンを塗る
これらは水やメスシリンダーの重さを含めて60.0gに調節しました。

 葉をすべて取って茎だけ
 もはや茎ですらなく、ガラス棒
これらは水やメスシリンダーの重さを含めて48.0gに調節しました。

そうして、晴れた日に外に2時間程度置きます。風で倒れないように、メスシリンダーはテープで留められています。

そしたら今度はなぜかアジサイがしおれていた!

もう一度アジサイを取ってきてつくりましたが。ウのアジサイは軽かったのか60.0gだと水がメスシリンダーに入りきらず58.0gスタートで実験。

そして結果。

 そのまま  60.0g → 55.2g (4.8g減)

 葉の表側にワセリンを塗る  60.0g → 56.5g (3.5g減)

 葉の裏側にワセリンを塗る 58.0g → 56.9g (1.1g減)

 葉をすべて取って茎だけ 48.0g→ 47.8g (0.2g減)

 もはや茎ですらなく、ガラス棒  48.0g→ 48.0g (0.0g減)

考察

ワセリンを塗ると、そこからの蒸散ができなくなるため、
葉の表から蒸散できないや葉の裏から蒸散できないよりも、葉の両面から蒸散できるが水の減少量が大きいのは当然であるとして、
葉の表から蒸散できないの蒸散量が葉の裏から蒸散できないのそれよりも大きいということは、葉の裏側からの蒸散量が、表側よりも大きいということになる。ここから、葉の裏面の方が表面より気孔が多いことが考えられる。
また、茎だけのがガラス棒のオよりも蒸散量が大きいということは、葉にくらべればわずかではあるが、茎からも蒸散していることの証左である。なお、が0であることは、この実験では水面からの蒸発量は無視してよいということになる。

ところで、こういう実験をもとにした計算問題ってよくありますよね。
=葉表+葉裏+枝+水面
=葉裏+枝+水面
=葉表+枝+水面
=枝+水面
=水面
っていうのを利用して解くパターン問題なのですけれども、

これを今回の実験に当てはめてみると、
=0.0 …水面からの蒸発量
=0.2 …枝の蒸散量
=0.9 …葉の表側の蒸散量
=3.3 …葉の裏側の蒸散量

となるので、アの蒸散量の値は
3.3+0.9+0.2+0.0=4.4 となるので0.4g、1割弱のズレがあります。

表面積を正確にそろえていない(←現実的に大変そう)とはいえ、同じ場所から、ほぼ同じ大きさのアジサイを採ってきています。

そう考えると、この手の計算問題はパズル的思考力を問う問題としてはいいのかもしれませんが、実験してみて本当に計算通りの結果になるかどうかというとちょっと疑問です。

とりあえず、メスシリンダーで体積を0.1cm^3の桁まで測っている計算問題は、そもそもメスシリンダーを読み取ったときに起こりうる0.1程度の誤差についてどう考えるのか小一時間問い詰めたい。

ほかにもたとえば葉の裏側にワセリンが塗られているときは、葉の表側の気孔が裏の気孔が使えるとき以上にがんばっちゃう、なんてことはないのでしょうか。

と思ったら同じ疑問が日本植物生理学会の質問コーナーにありました。

ほか、蒸散実験に関する論文が。ワセリンを塗った時にストレスで蒸散量が増えるらしい。なるほどねぇ。

あとこの実験に関して植物生理学会のサイトの植物Q&Aからは
植物の蒸散実験
吸水量と蒸散量
アジサイは気孔がない葉の表から蒸散するのでしょうか?
の質問もチェゲラッチョだ。