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0608 【動物の体のつくりと働き04】生命を維持する働き04 お前らもっと唾液の凄さを知るべき

 前回の実験から、だ液によってデンプンが麦芽糖やブドウ糖などに消化されることが分かりました。
 だ液のような消化の働きをもつ分泌液を消化液といいます。
 消化液には、だ液の他、胃液、胆液(胆汁)、膵(すい)液、腸液などがあります。
 胆液は肝臓で24時間営業でつくられます。でも胆液が必要なのは食べ物が通過するときだけなので、肝臓でつくられた胆液はいちど胆のうで蓄えられ、必要な時に小腸(十二指腸)に分泌されます。
 一方、膵液は食べた物が十二指腸に到達してから膵臓でつくられ、小腸(十二指腸)に分泌されます。
看護roo!の画像を加工しました。

 デンプンが麦芽糖やブドウ糖などに消化するのは、だ液の中にあるアミラーゼという消化酵素のはたらきです。
 消化酵素は、タンパク質の一種で、特定の栄養分の消化を助けるはたらきがあります。
 アミラーゼの場合、あの「六角形」が何百個も並んだ超巨大分子のデンプンを

「六角形」数個ずつに切ってくれるはさみのような役割をしてくれます。
 長い紙テープをはさみでチョキチョキ切って短くしても、はさみは減ったりなくなったりしないように、いくら栄養分を消化しても、消化酵素自体が減ったりなくなったりするわけではありません。これは、酸素発生させる実験での二酸化マンガンのような、化学変化の速度を変える(この場合は速くする)「触媒」といえます。
 ただし、消化酵素(一般的な酵素)には、他にも特徴があります。
 一つは、特定の物質にしか働かない点。アミラーゼは、デンプンを消化しますが、それ以外の物質に対しては、何もしません。できません。では、タンパク質はどうして消化できるのか。別の消化酵素、具体的に言うと胃液に含まれるペプシンのお仕事です。消化酵素には種類ごとにどのような栄養素を消化(分解)できるかが決まっていて、自分の担当の仕事を粛々とやるのです。、

 ところで、ペプシンって、コーラみたいな名前ですね。実は「ペプシコーラ」のネーミングはこのペプシンからきているのです。もともとペプシコーラは、米国ノースカロライナの薬剤師キャレブ・ブラッドハムがつくった”Brad’s Drink”(ブラッドの飲み物)という消化不良の治療薬で、そこにはペプシンも処方されていたのです。後に原料のコーラナッツとペプシンから「ペプシコーラ」と改称されました。

 二つ目は、特定の温度、それも体温付近でしか働かない点。アミラーゼによるデンプンの消化の実験でも、10分放置して消化を待っている間、37℃の恒温槽に入れていました。これはまさに、アミラーゼが体温付近でしか働かないからです。
 体温が42℃を超えてしまうと、体内の酵素が熱凝固するものがでてきます。(だから体温計の目盛りは42℃までなのです。)当然、酵素としてのはたらきも急激に下がっていきます。一方、温度が下がっても、酵素は働きはだんだん鈍くなっていきます。このような酵素の特徴は、温度が上がれば反応速度も上がっていくだけの、過酸化水素の分解における二酸化マンガンのような無機触媒のそれとは大きく違っています。
wikimediaより

 三つ目は、特定のpH(酸性・アルカリ性の強さ)でないと働かない点。ペプシンは強い酸性下でしか働きません。だから胃液って、強い酸性なのです。それはいいのですが、一つ疑問がわきそうですね。どうして胃はそんな強い酸性でも大丈夫なのか。それについては雑談本に書いていますのでそちらをご覧ください。(おかげさまで重版となりました!)

 とまあ、制約の多い消化酵素ですが、消化、すなわち栄養素の分解という化学変化は、それこそ消化酵素なしで行うことは不可能に近い。それをこともなげにやってしまう消化酵素は、余人をもって代えがたい大切な仕事をしているのです。唾液を汚いという人もいますが、唾液がないとお米を食べても元気が出ないのです。唾液、えらい。唾液はもっと評価されるべき。唾液 is beautiful. 日々唾液に感謝してご飯を食べましょう。

check it out!
DeAnna E. Beasley ,Amanda M. Koltz,Joanna E. Lambert,Noah Fierer,Rob R. Dunn, The Evolution of Stomach Acidity and Its Relevance to the Human Microbiome. PLOS ONE, 2015; 10 (7): e0134116 .
Fig 1. Comparison of stomach pH (mean ± S.E.) across trophic groups with gastrointestinal tracts of representative birds and mammals.と Table1 The Evolution of Stomach Acidity and Its Relevance to the Human Microbiome に注目。いろいろな動物の胃液のpHが載っている。

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