0792 【電流03】 回路と電流・電圧(3) 行きと帰りで電流が大きいのは?

今日は、いきなり問題から入ります。

下図のような回路で、Aを通る電流とBを通る電流では、どちらが大きいか。

ア.Aを通る電流の方が大きい
イ.Bを通る電流の方が大きい
ウ.どちらも等しい

 以前、これを予想させて、ア、イ、ウそれぞれの説を支持する人から理由を出させ、どれが正しいか議論する…という授業を参観したことがあります。それなりに盛り上がりをみせて授業は終わりましたが、私は、先生にスルーされたある生徒のつぶやきに激しく同意しました。

 なんで実験しないの?

 いやもちろん、予想してもしょうがない、と言っているわけではありません。電流の概念(イメージ)ができあがっている人への質問ならともかく、電流の概念が完成する前の段階での予想は、この問題は、電流のイメージを問う、具体的には「電流は回路を流れるとだんだん減ってしまうのか?」という質問が隠されているように見えます。この答えは、既習事項や経験を材料に論理を積み重ねれば中学生ならばおおむね正解を導くことができる、と言うのとちょっと違う気がするのです。

 そんな題材を1時間も使って議論する価値があるのかな~と言う疑問です。もっとも、予想させないで実験すると「目的意識がなく実験している」と批判されそうだし、「どれだと思う?カンでイイから」だと「根拠なき予想」になってしまい、科学的思考でも何でもない、だったらしっかり予想させて徹底的に議論する方がよい、という反論があるかもしれませんが。

 実験もせず、根拠に乏しい結果の予想で1時間も水掛け論みたいな議論するなら、時間や手間もかからないし、さっさと実験してAを通る電流とBを通る電流はどちらも同じ大きさだ、という結果から電流とはどんなものなのかを分析、解釈して電流とはこんなもんだというイメージを持たせる方が価値のある科学的な思考ができると考えるのですが…きっと私が間違っているんですね。はい。

 さて、長い長い前振りでしたけれど、実際に実験するとAもBも同じになります。
 ここから、回路を流れる電流は、水道からつないだホースの中を水が流れ続けているとき、ホースのどこでも同じだけの水が流れているように、回路の中を流れているわけで、別に増えたり減ったりするようなものではないということが分かります。

 ここから、電流というもののイメージを作っていきましょう。
 回路の中を電流が流れる。この電流は、回路というぐるっと一周するルートを歩く人たちと同じで、回路上のA地点を通過した人が5人なら、別のB地点を通過するひとも5人のはずです。ここで人数が増えたり減ったりしたらおかしいでしょうという話ですね。

 すると、電流とは、人とか、リンゴとかお饅頭のように、形があり1つ、2つ、3つ…と数えられる、具体的な「物」のようなイメージが作れると思います。

結論:電流とは、回路を流れる「物」である。

回路の中を電子とやらがぐるぐる回っている.これが電流です。このとき、回路のどこでも同じ速さで電子は動いています。そうしないとどこかで渋滞が起こったりスカスカになったりしますから。
だからA地点を通過した電子がもし100個なら、B地点だろうが電球だろうが電池の中だろうが100個の電子が通過したことになります。つまり、回路のどこでも電流の大きさは等しいとなるわけです。