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0797 記述問題の問題文の記述

理科の記述問題を、解答者側(生徒)ではなく、出題・採点者側(教員)の目で考察してみたいと思います。

ずっと昔に書きましたが、記述問題は生徒はもちろん、教師にとってもやっかいなもので、特に採点時に悩まない(返却後に生徒に採点について突っ込まれない)ようにするには、あらかじめ採点基準を明確化するだけでなく、採点時に悩みそうな微妙な回答でも明確に判断できるように、作問の段階で問題文を十分精査してしておく必要もあるなと最近強く感じます。

ためしに具体的な問題例をもとに考えてみましょう。

土の中の微生物のはたらきを調べるため、次のような実験を行った。林の土をビーカーにとり、水を加えてよくかき混ぜ、ろ過した。A、B 2つのビーカーに同じ量のろ過した液体を入れ、ビーカーAの液体だけ十分に沸とうさせた後、室温と同じになるまでさました。次に、それぞれのビーカーにデンプン溶液を同量加え、ふたをして37 ℃に保った。2日後、ビーカーA、Bの液体の一部をそれぞれ試験管にとり、ヨウ素液を加えると、Aは青紫色になったが、Bは変化しなかった。次の問いに答えなさい。
(図は省略)
問 Aのみヨウ素デンプン反応を示した理由を、「菌類・細菌類」という語を用いて書きなさい。

まず解答例を考えてみてください。「微生物の働き」を勉強した人には図はなくても文だけでも状況はわかる人にはわかると思います。










白紙とか「菌類・細菌類」という語を用いてないとか、ポイントがずれているという解答は別とすれば(これは×にすればいいだけだから話は早い)、解答は(1)(2)のどちらかのパターンになるかと思います。

解答例(1) Bでは菌類・細菌類のはたらきでデンプンが分解されてしまったが、Aでは菌類・細菌類が死滅し、デンプンが分解されずに残っていたから。
解答例(2) 菌類・細菌類が死滅し、デンプンが分解されずに残っていたから。

つまり、解答例(1)はAだけではくBまでふみこんで説明した解答、解答例(2)はあくまでもAだけ説明をした場合。

さあ、解答例(1)(2)どっちのパターンで解答したでしょうか。

解答例(1)のように書いた方が無難なのはわかりますが、採点者の立場だとそれだけは終わりません。
解答例(2)を採点する場合、○(正解、減点なし)にしますか、それとも△(一部減点)や×(不正解)にしますか。
また考えてみてくださいな。





ここで  をもう一度見てみましょう

Aのみヨウ素デンプン反応を示した理由を…」とあります。Aのみということは、同時に、A以外のもの、ここではBがヨウ素デンプン反応を示さなかった理由も要求しているように読み取れます。そうすると厳密にいえば、(2)では物足りなく、(1)でないと正解と言えなさそうです。あくまでも厳密にいえば、ですが。

 とはいえ(2)のような解答を書けた人なら、Bでは菌類・細菌類のはたらきでデンプンが分解されてしまったことは、きちんとわかっている可能性が高いです。「言葉足らずの解答」だから原点、といわれればそうかもしれませんが、では「問題文は言葉足らずではなかったのか」とブーメランが返ってくると結構痛いのではないでしょうか。

 さらに、妙案として「Aのみ菌類・細菌類が死滅し、デンプンが分解されずに残っていたから」と、Aだけが他と違うことを強調して、Aだけの説明を行うことは可能です。でもそうなると、
(A)菌類・細菌類が死滅し、デンプンが分解されずに残っていたから。 
が△で
Aのみ菌類・細菌類が死滅し、デンプンが分解されずに残っていたから。
が○という、わずかなてにをはで運命が変わるのも微妙な気がしてなりません。

ではこのようなトラブルを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
明確に解答例(1)のように書かせたいならば、
Aヨウ素デンプン反応を示し、Bが示さなかった理由を…

解答例(2)で十分、つまりAについての説明だけ書かせたいならば、
Aヨウ素デンプン反応を示した理由を…

と直すだけで万事解決です。

「Aのみ」と「A」、ほんのちょっとの問題文の違いでこれだけ採点時の悩み方が変わってくるのですね。

記述問題を作問するときは、ぜひ問題文自体の「記述」にも注意しておきましょう。

 ということで、記述問題は作問がいい加減だと、採点で苦労します。作問できちんと作りこむと、採点は楽になります。一字一句、気を付けて作問することをお勧めします。

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