1140 ヘリウムの風船と慣性の法則

前編(2010-05-30)

慣性の法則の話題、再び。

電車が急発進すると、乗っている人は後に倒れ、急停車すると前に倒れる、ということについては以前ありましたが、これが、人ではなく、ヘリウムの入った風船だったらどうなるでしょうか。

動画は理科ねっとわーくにあったのですが閉鎖してしまいました…orz
代わりになる動画、探しますor作成します。

この通り、発進時には前方に傾き、停車時には後に傾きます。つまり、人の倒れる向きと逆なんですね。

授業で、慣性の法則を学習した後に、この実験を提示して、予想してから行うと、まあ予想を裏切る結果になります。その自分の予想に反する結果が、驚きと認知的葛藤(←ちょっとカッコイイので使ってみた)を引き起こし、その驚きや葛藤を解消し納得できるような考察を積極的にして、こちらの思うツボにはまってしまう、というからくりです。

発問:では、なぜ風船は逆方向に傾くんでしょうか。

多くの人は、人が倒れるときのイメージから発進時には後方に、停車時は前方に傾くと予想します。しかし、結果は予想と逆なので、どこか1ヶ所だけ逆になっていることを見落としている可能性があるという発想で原因追究ができると、かなり賢い。こういう考え方のツールを何種類もっていて、自由自在に使える能力って、ビジネスに必要なナントカ力(りょく)とか言われてそうですね。

「風船と人では何が逆なのか」と気づけば、あとは理由説明ができるのは時間(と表現力)の問題。
それでもわからない人のためにもう一つだけヒント。「空気の重さ」あとは考えてね。

後編(2010-05-31)

ちなみにこの実験を知って、力学台車に風船をくっつけて、力学台車を急発進させても、人と同じように後に倒れてしまう。「あれ、変だな?」と思ったのですが、よく考えたら当たり前な話です。

つまり、力学台車が動いたところで、風船やその周りの空気は止まったまま。にもかかわらず、力学台車が前に進めば、糸が前に行くので、風船は後に傾くことになる。これは電車の中にいる人が、電車が前に進めば、足が前に行くので、人は後に傾くことになるのとまったく同じ。

そういえば、自転車やバイクでは乗っている人は乗り物とともに動いているのに、周囲の空気は止まっている=相対的に空気は動いているから、顔は激しい風を受けることになります。ところが、同じ速さで走っている電車の中の人は、
電車内の空気がほぼいっしょの速さで動いている=相対的に止まっているので、風をあまり感じないのですね。
とはいえ、急発進すれば、電車内の空気が「後に傾く」ため、空気より軽いヘリウム風船は前に追いやられるしかないわけです。

ということは、急発進した電車の中では風船は前に傾き、電車の外では風船は後に傾くことになります。
本当にそうでしょうか。やってみました。

右から左に勢いよく急発進してみました。箱の上のピンクの風船は後に傾いていますが、箱の中の黄色い風船は前に傾いています。
ちなみにこの写真、ある原稿に載せたら「あやしくていい」と好評?でした。

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