1146 【力学的エネルギー3】仕事とエネルギー(3) 仕事の原理

仕事、を現実にする場合、物体を直接手で押したり引いたりすることもありますが、てこや滑車、斜面などの道具を使うこともよくあります。

これらを使うと、楽に「仕事」をするようにみえますが、理科の「仕事」という点で見ると、道具に加えた仕事以上の仕事を外部にすることはできる、つまり仕事を得することはできるのか、お金のたとえでいえば1000円で、2000円のモノをうまく買うことはできるのか、それを検証してみましょう。

課題　道具を使うと仕事を得することはできるのだろうか。

作戦　道具を使うと、仕事を得することができるか検証する。それを道具を変えて何パターンかやってみる。

小課題： 定滑車を使うと、仕事を得することはできるか。

質量48gの物体を0.1m（10cm）もちあげるケースで検証してみましょう。
詳しい実験の解説

①木片がされた仕事
仕事　＝0.48Ｎ × 0.1ｍ＝ 0.048Ｊ

②手がした仕事
　力の大きさ　0.48Ｎ
　 0.1ｍ持ち上げるのに必要な距離 0.1ｍ
　　仕事＝0.48Ｎ × 0.1ｍ＝ 0.048Ｊ

考察
　木片がされた仕事の大きさは、手がした仕事より大きいわけではないので、定滑車を使っても仕事を得したわけではない。

小課題： 動滑車を使うと、仕事を得することはできるか？

質量48gの物体を0.1m（10cm）もちあげるケースで検証してみましょう。
詳しい実験の解説

①木片がされた仕事
仕事　＝0.48Ｎ × 0.1ｍ＝ 0.048Ｊ
①’木片と滑車がされた仕事
仕事　＝0.80Ｎ × 0.1ｍ＝ 0.080Ｊ

②手がした仕事
　力の大きさ　0.40Ｎ
　 0.1ｍ持ち上げるのに必要な距離 0.2ｍ
　　仕事　＝0.40Ｎ × 0.2ｍ＝ 0.080Ｊ

考察
　木片と滑車がされた仕事の大きさは、手がした仕事より大きいわけではないので、動滑車を使っても仕事を得したわけではない。
　むしろ木片だけ持ち上げたいのに、余計な滑車まで持ち上げなくてはいけないので動滑車を使うと余計に仕事するともいえます。4800円を一括で払えないので2回に分割払いにしたら2400円になると思いきや手数料がかかって4000円を2回払いとなって、かえって損してる感じですね。

小課題：斜面を使うと、仕事を得することはできるか？

質量500gの力学台車を0.1m（10cm）もちあげるケースで検証してみましょう。

普通にぶら下げたら５Nの力がかかる力学台車ですが、斜面を使うと、なんと0.5Nと一桁小さくなってしまいました。

そのかわり、高さ10cmを上げるには、斜面にそって延々と１ｍ登らないといけません。
このあたりの斜面の力と距離の関係は、力の分解の最後の方ででてきた、「(重力とその垂直・水平分力の)3つの力の矢印でできる三角形は、斜面の三角形と相似形」というところから、ちょこっと数学を使えば導くことができます。

①力学台車がされた仕事
仕事＝ 5Ｎ × 0.1ｍ＝ 0.5Ｊ

②手がした仕事
　力の大きさ　0.5Ｎ
　 0.1ｍ持ち上げるのに必要な距離１ｍ
　　仕事＝ 0.5Ｎ × 1ｍ＝ 0.5Ｊ

考察
　木片がされた仕事の大きさは、手がした仕事より大きいわけではないので、斜面を使っても仕事を得したわけではない。

小課題：てこを使うと、仕事を得することはできるか？

質量10kgの物体を0.1m（10cm）もちあげるケースで検証してみましょう。

①木片がされた仕事
仕事＝ 100Ｎ × 0.1ｍ＝ 10Ｊ

②手がした仕事
　力の大きさ　50Ｎ
　 0.1ｍ持ち上げるのに必要な距離 0.2ｍ
　　仕事＝ 50Ｎ × 0.2ｍ＝ 10Ｊ

考察
　木片がされた仕事の大きさは、手がした仕事より大きいわけではないので、てこを使っても仕事を得したわけではない。
　というかこの計算、むしろ仕事(力×距離)の値を求めて、そこから手がした力や距離を求めているので、当たり前だといえば当たり前です。