いよいよステップ3へ
ステップ2の「リスクの見積もり」がCREATE-SIMPLEを使ってとりあえずできました。
化学物質管理者講習テキストより
今回はその先のステップ3に進んでみましょう。
リスクの見積もりに基づくリスク低減措置の内容の検討
リスクの見積もり、つまり「こういうリスクがありますよ」と分かったところで、じゃあそのリスクをどうしようかと対策を考えるというところが次のステップです。
もし、法令で「これをやれ」というのがあれば当然それをやることが最優先ですが、それ以外でも、リスクをどうやって減らすか、検討する減らし方にも順番(優先順位)があります。
1.本質安全対策
簡単に言うと、ヤベー化学物質を、使わなかったりもう少しまともなものに変えられないか、使用条件などをより低リスクなものに変えられないか、ということです。
理科の実験でいえば、例えば、融点を測る実験に使われる物質には、かつてはパラジクロロベンゼンとかナフタレンが使われていましたが、有害性が指摘され、今は化粧品にも使われているパルミチン酸が使われています。
2.工学的対策
システムや装置などハード面の対策。高校やお金持ち私立ならドラフトチャンバーがあるかもしれませんが、貧乏中学プロパーのあっしにはかかわりのないことでござんす。
と思ったけど、例えば水の電気分解の実験で、装置がH字管から簡易電気分解装置に変わりましたが、これによって中の水酸化ナトリウム水溶液が手に着くリスクはかなり下がりましたよね。これも工学的対策と言っていいかもしれません。
昔、私は硫酸ナトリウムに変える方法を提案していたのですが、やはり時間がかかってしまうというネックが大きいことと、時代は新しい実験装置を作る方に流れていきましたね…
3.管理的対策
マニュアルやルール、安全教育等のソフト面の対策。現実的な落としどころはここに集中するとは思うのですが、忙しいとき、めんどくさいときにどこまで徹底できるかがカギ。多分そこに信用がないから管理的対策より、お金で解決できる工学的対策の方が上位に来ているのだと邪推~。
4.保護具の着用
実験のとき保護眼鏡を使うことはすっかり定着しました。これで液体の飛沫が目に入る、という最悪の事態は防げるようになりました。一方、手袋というと100枚入り千円前後のニトリル手袋、場合によってはポリエチレン手袋なんかを使っているのではないでしょうか。
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実はここでいう保護具としての手袋っていうのはそうじゃないんですよ。
このあたりの話をするとまた長くなるので、別の回で詳しく話しますね。
今回の場合
さて、今回の「リスクの見積もり」結果がこちらです。
リスクレベルS,吸入+経皮Ⅰ、危険性Ⅱ
判定結果
有害性
・濃度基準値設定物質以外の長時間(8時間)ばく露の評価結果は十分に良好です。
・濃度基準値設定物質以外の短時間ばく露の評価結果は十分に良好です。
・保護手袋を着用しましょう。
危険性
・引火するおそれがあるため、着火源の除去、爆発性雰囲気の形成防止対策の管理を引き続き実施しましょう。
そもそも吸入+経皮はレベルⅠ、十分に良好なので改めて何かをする必要は低いです。
リスクレベルSは保護手袋ですが、保護具については検討の順番としては後回しでしたね。
引火レベル性ⅡをできればレベルⅠに落としたいところです。
ということで、まず、本質安全対策。葉緑体の色を取るという操作をエタノール以上に安全な物質には代える候補が思いつかないので、量を減らすことを考えてみました。試験管ならエタノールが10mLもいらないよね、ということで微量からごく微量(10mL未満)にします。
工学的対策は思いつかないし、管理的対策も気をつけてやりましょう、じゃゼロ回答に等しいよね。今まで気をつけてなかったわけでもないし。
保護具の着用については保護眼鏡はいいとして、問題は保護手袋。コメントにも「保護手袋を着用しましょう。」というのですが、今回手袋の着用の質問に対して「取扱物質に関する情報のない手袋を使用している」と答え、手袋の適正な使用方法に関する教育の質問に対して「教育や訓練を行っていない」としていました。ここに手を加えるとしたら、「耐透過性・耐浸透性の手袋の着用している」「十分な教育や訓練を行っている」と答えられるようにすべきなのですが、それはさすがにコントロールバンディングほどではないけど過剰すぎる。
また今度触れますが耐透過性・耐浸透性の化学防護手袋となると結構高いです。そうすると、ウチのようになかなか実験器具もろくに揃えられないような予算の学校ではとても買えません。同情するなら金をくれ。やむなくニトリル手袋で継続。
まとめると、この例ではエタノールの量を減らす、という対策を立てました。
まとめ
リスクの見積もりに基づいて、リスク削減措置の内容を検討します。法令でやることがあればそれをやったうえで、本質安全対策、工学的対策、管理的対策、保護具の着用の順で具体的な方法を考えていきます。
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