リスクレベルSのSとは、どうやらSkin(皮膚)のSなのかなという感じがしますが、中学校などで現実的な保護具といえば、前回出てきた保護眼鏡に続くのは保護手袋かな、ということで保護手袋についてみていきましょう。
保護手袋
CREATE-SIMPLEでリスクレベルSと判定され「保護手袋を着用しましょう。」などとコメントされることがあります。一口に保護手袋と言っても何から保護する手袋なのかによって、いろいろな保護手袋があります。汚れ防止や滑り止めに使う軍手も「一般作業用手袋」なんて呼ばれますし、刃物で手を切らないようにする手袋とか、振動を抑える手袋とか、溶接のときにあの熱いのから守る手袋とか、感電しないように絶縁する手袋とかいろいろあります。化学物質を取り扱う作業等に使用する手袋は化学防護手袋です。
ちなみに2024年4月1日から、皮膚等障害化学物質等の製造・取り扱い時に「不浸透性の保護具の使用」も義務化されています。保護眼鏡だけじゃないんですね。
ドラッグストアーで安価で売られていて、日常で手軽に使われるようなビニール手袋は、耐水性、耐油性、耐溶剤性・耐薬品性に優れていると言われていても、保護手袋ではあるかもしれませんが、化学防護手袋とまではいきません。
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それにはこんな動画をみてもらうとわかるかと思います。ニトリル手袋の外側にアセトンをつけ、手袋の内側で揮発性有機化合物(VOC)濃度を測った実験です。
あっけないほどすぐにアセトンがニトリル手袋を通過してしまったことが分かります。ちなみにこのチャンネル、労働安全衛生の勉強になるのでチャンネル登録しました!
じゃあほんまもんの化学防護手袋とはどんなものかというと、シゲマツとかダイヤゴムのサイトを見ると、一見では普通のゴム手袋と変わらない感じがします。ですが、これ(リンク先の表)を見てください。何の表か、わかりますか。
いちばん上の行の02-100とか37-136は化学防護手袋の型番。1行目はアセトンで02-100は>480とあります。これは480分以上使える、ということ。37-136は<10となっていますが、これは37-136の化学防護手袋ではアセトンは10分もたない、ということを意味します。
化学防護手袋は、しっかりと化学物質から手を守ってくれますが、それには時間制限があるというわけです。それは手袋の外側にあった化学物質が、手袋の隙間を通ったり(浸透)、手袋の表面から手袋の内部へ吸収され、その中でに分子レベルで拡散したり(透過)して手袋の内側に入るまでの時間です。なので一度使い始めたら(化学物質に手袋の表面がふれたら)、途中で使わなくなっても、手袋を洗っても、制限時間(破過時間といいます)が伸びるわけではありません。
なのに、値段を調べると、安いものでも1双で数百円、高いのになると1双なのに1万円を超えるものもあります!
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先日のCREATE-SIMPLEでのエタノールをあたためて葉から葉緑体を取り除く」という作業の判定コメントで「保護手袋を着用しましょう。」とありました。この場合、安くても1双数百円の化学防護手袋が必要なのでしょうか。
私はたぶんそこまでいらないのではないかなと考えています。というのもあのとき、取扱量を「極微量(10mL未満)」としたのですが、「多量(1kL)」に変えて再判定したら、リスクレベルもあがりましたが、コメントも「不浸透性の化学防護手袋を着用しましょう。」に変わったので、「保護手袋を着用しましょう。」レベルだったらサクラメン手袋で十分なんだろうなと思ってます。エタノール10mL未満だし。
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参考資料
皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル(2024年2月 厚生労働省)
耐透過性能一覧表(労働厚生省) pdf エクセル
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