1654 ニュースとつながる理科のツボ(1) 

 2012年4月から月2回、朝日中学生ウイークリーで連載を持つことになりました。タイトルは「ニュースとつながる理科のツボ」。ニュースや季節の話題から、関係する理科の学習のポイントを解説し、最後に入試問題で確認する、という、中学生に理科の有用性を知らしめる良い企画です。連載自体は昨年からですが、このたび、執筆者が交代して(私になって)リニューアルというわけです。
*2013年3月までは月2回ですが、2014年度は月1回と2年間連載は続きました。「朝日中学生ウイークリー」は現在の朝日中高生新聞です。

「理科がわかるとニュースがわかる!」とまでもっていければ理想的ですが、毎回タイミング良くいいニュースがあるか、単元に偏らずいろいろな学習内容を紹介できるかという要素もあり、これまでの掲載紙を見る限り、前任者もかなり苦労されていたんじゃないかな、という気がします。でも、私にとってはぜひやってみたいチャレンジです。

まずは、従来、ニュースなどの話題から学習テーマに振った後は、普通の理科の教科書のまとめになってしまっているのをやめ、
無性生殖は形質が変わらない、だから挿し木でふえたソメイヨシノは一斉に花が咲くんだ
といういような、学習内容を解説して、それをニュースに活用するような方針をとりました。

ソメイヨシノ→無性生殖と有性生殖(2012/4/1)

第1回目のテーマはソメイヨシノを題材に、無性生殖と有性生殖について。このブログでは、スペースの都合で紙面に掲載できなかった話題を紹介します。

春と言えばサクラですね。サクラがいつ開花予想、今は何分咲きかとか、テレビでは毎年飽きずにやっています。もちろん、咲いたら咲いたでお花見ですね。そして、サクラが潔く散るとちょっと寂しかったりします。そう考えると在原業平の
世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
って歌は、1000年以上も時を超えた現代でも全く色あせることありませんね。こんなことなら高校でもっと古典を勉強しておくんだった。。。

さて、ひとくちにサクラといってもいろいろな種類があります。当ブログでも、いろいろなサクラを過去に紹介してきました。
サクラ(2)カイドウ
サクラ(3)
2011新宿御苑のサクラ(前編
2011新宿御苑のサクラ(後編)
冬の桜@新宿御苑
とはいえ、なんといってもサクラといえばソメイヨシノです。ところが、このソメイヨシノ、実はクローンだったって、知っていましたか?

江戸時代に染井村(現在の東京都豊島区駒込)で、オオシマザクラとエドヒガンをかけあわせてソメイヨシノができました。この掛け合わせ自体は、2つの親からできる「有性生殖」です。ところが、せっかく優秀なソメイヨシノができたので、その形質をそのままに、新しい個体=クローンを作りたい。それには挿し木のような「無性生殖」の出番です。そうやって1本だったソメイヨシノをふやして、今では日本のあちこちに見られるようになったのです。そのため、すべてのソメイヨシノは全く同じDNAをもつのです。ある意味、非常に人工的な木、ということもできるでしょう。

すべてのソメイヨシノは形質が同じということは、その場所がどこであろうと、どの個体だろうと、一定の条件がクリアすれば例外なく一斉に花を咲き、そして散っていきます。逆に言うと、ソメイヨシノが咲いたということはその地域の環境では一定の条件をクリアした(ざっくり言えば「春が来た」)という、季節の到来をみとる一つの指標になるのですね。

まてよ、江戸時代にできたってことは、在原業平が歌ったサクラはソメイヨシノじゃないわけだ!(今気づいた)

東アジア低炭素成長パートナーシップ対話→有機物の燃焼(2012/4/15)

朝日中学生ウイークリーの連載「ニュースでわかる理科のツボ」新年度第2回です。ちょうど新聞に掲載される4月15日に東京で温暖化防止の国際会議「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」が開かれることから、このニュースを題材に、温室効果ガスである二酸化炭素がらみの学習を取り上げることにしました。

二酸化炭素関連の学習事項というのもたくさんあります。気体の性質の学習もあるし、炭酸水素ナトリウムの分解もあります。ドライアイスは二酸化炭素の固体です。生物分野では呼吸や光合成で登場しますし、火山ガス主成分は水蒸気に次いで二酸化炭素が多い。新指導要領では地球温暖化そのものも取り上げられることになりました。

前回が生物分野だったことから、今回は化学だなと。とはいえ二酸化炭素だけの性質を取り上げると、もし酸素や水素、アンモニアを含めた「気体の性質」を取り上げるときに重なってしまう…。

一方、温暖化で二酸化炭素が増えたのはなぜか→化石燃料などを燃やすようになったから→なぜ化石燃料を燃やすと二酸化炭素が発生するのか→そうだ、「有機物の燃焼」を今回学習しよう、という流れです。そうすれば、水素がなぜ燃料として注目されるのかも説明ができます。

ということで、有機物の燃焼という論点での入試問題を探したのですが、多そうで意外に少ないですね。問題集ではよく見かけるのに…。やっと見つけた11年鳥取を採用しました。しかし4択問題だと行数が多くなってきついな。スペースが限られているだけにこれは厳しいです。