ファストグリーンFCF Fast Green FCF CAS No.2353-45-9
C37H34N2Na2O10S3 = 808.87
食品添加物の合成着色料「食用緑色3号」ですが、意外なことに色は緑ではなく赤褐色。粉末~結晶性粉末。
「食用黄色4号」ことタルトラジンは、共立食品の食用色素黄に含まれていましたが、「食用緑色3号」は食用色素緑には入っていません。食用色素緑には「食用黄色4号」ことタルトラジンと、「食用青色1号」ことブリリアントブルーFCFの2種類で緑色にしています。
で、50年前の論文なので今は変わっているかもしれませんが、
片山脩:食用色素の化学,有機合成化学協会誌,32,8,p..620-631,1974
には、日本におけるタール色素の生産量(昭45.4~46.3)のデータがあり、黄色4号なんかは132120kgもあるのに、緑色3号はたったの1.8kgとごくわずかで、さらに次のように述べられている。
この色素は熱、光、酸にはかなり強いが、アルカリには大変不安定で変色する。緑色 と名付けられているが1,000倍液は青味の強い緑色で,これを単用して緑の着色をすることはできない。多くの場合他の色素と配合した形態で使用される。菓子類,飲料に使われる。生産量はきわめて少ない。
片山脩:食用色素の化学,有機合成化学協会誌,32,8,p..620-631,1974
タルトラジンに比べると、なかなか使い勝手の悪い色素なのかもしれません。
危険有害性は
生殖細胞変異原性 (区分2), H341 遺伝性疾患のおそれの疑い。
特定標的臓器毒性(単回ばく露) (区分3), 気道刺激性, H335 呼吸器への刺激のおそれ。
プレパラートを作る際に、細胞質(たんぱく質)のところをタンパク質を明るい青色に染色する「ファスト・グリーン染色」にも、このファストグリーンFCFが使われます。
富士フイルム和光純薬のサイトにFCFの概要・使用例として
概要 測定波長 : λmax=625±3nm
〈電気泳動・ブロッティング試薬〉〈染色試薬〉〈染色剤〉〈タンパク質染色剤〉
酸性色素でタンパク質の染色に用いられる。
使用方法 7%酢酸に溶かした1%色素液で2時間染色。7%酢酸水溶液で脱色。
と、まさにファストグリーン染色の方法が書いてありました。
できあがった染色液が市販されているので普通はこっちを使いますよね。
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ファストグリーン
ファストグリーンFCF(以降「FCF」と呼ぶ)とは別に、FCFのつかない「ファストグリーン」(CAS No.12777-77-4)(以降「無印」と呼ぶ)もあるのですが、探してみると、富士フィルム和光純薬もsigmaaldrichも関東化学も純正化学もFCFはあっても無印はなかったし、キシダ・国産・米山に至ってはFCFも扱ってないようなので、無印は国内の試薬会社じゃ手に入らないのかもしれません(特注すれば別かもしれないけど)。
lookchemを使って調べてみると、中国とインドに2件ずつサプライヤーがあることが分かりました…。
FCFがあるから無印は出番がないのでしょうかねぇ。
というか、FCFって何の略なんだろう。ググっても Free Cash Flow しか出てこないけど絶対違うよな…。
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