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1025 「遺伝子」とかいうズンドコベロンチョ

中学校教師として基本中の基本のことなのですが、よくわからないので「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」ってことでお尋ねします。

遺伝子って何ですか?

染色体、DNA、遺伝子、ついでにゲノム。よく同じような場面で使われる用語ですが、理科とか苦手で、って人にとってはその区別が難しいことばでもあります。

教科書の説明を読んでもはっきりいってよくわかりません。説明がわからない理由はおそらく、それぞれのイメージがもてないからだと考えています。なぜイメージがもてないからというと、これらの用語の説明はたぶん中学生などの初学者、そして「理科とか苦手で」なオトナがいちばん知りたい大切なところが明確に書いていなくて、その性質や役割に重点が置かれているからだと分析しています。

一番大切なのは、それが何なのかということでしょう。「もの」なのか、「概念」なのか、あるいは…。

端的に言えば、染色体は「物体」で、DNAは「物質」です。それでは遺伝子は何なのか。

「情報」?

本当にそれででいいのですか?
ファイナルアンサー?(古い)

とりあえずネットで「遺伝子とは」で検索して上位になったところで、かつ、それなりに信用できそうなところの解説を拾ってみます。
「遺伝子って情報なのかな」と仮説を立てたうえで、それを確認するつもりで読んでみてください。

ベネッセ
遺伝情報をもっているDNAの一部(領域)のことを遺伝子といいます。

東京女子医大遺伝子医療センターゲノム診療科
遺伝子とは人間の体をつくる設計図に相当するものです。
ヒトには約3万個の遺伝子があると考えられています。
この中の「DNA」が「遺伝子」として働いています。

DDBJセンター
トーマス・ハント・モルガンらがショウジョウバエを用いて行なった研究により,遺伝子は染色体という細胞の核の中のひも状に見える構造物に,あたかもじゅずつなぎになっているということがわかりました。
遺伝子と言うと,普通このような働き(遺伝子の機能)がともないますが,DNAは「デオキシリボ核酸」という物質であり,機能はとりあえず考えません。

産総研(リンク切れ)
生物のからだを形作っている細胞では、主にタンパク質が中心に働いています。そのタンパク質の構造にかかわる暗号部分と、その暗号の読み取りを指令する部分が遺伝子です。
DNAの中で、遺伝暗号をもっている遺伝子といわれる部分は、DNA全体の数パーセントに過ぎないと考えられています。

これらの文章を読むと、どうもスパッと「遺伝子は情報だ」と言ってくれないで、むしろ微妙に避けている感じがして不安になってきます。

「遺伝子はDNAの一部(部分、領域)」という表現をするならば遺伝子は「物質」となるけど、その解釈には違和感があるし、「遺伝子の持つ情報」という表現をするなら、新聞(紙)がニュースでないように、遺伝子そのものは情報ではないことになります。「設計図」なら紙に書かれているのでDNAの一部(物質)なのかと言うところがあります。

こうしてみると、「遺伝子は情報である」と思っていた人も、「情報」と言い切っていいか一抹の不安が残り、遺伝子の特徴を理解している人でさえ「ひょっとして今まで自分は、壮大な勘違いをしていたのではないか」ってならないですか?

まして、生徒たちがまず頼りにする教科書では遺伝子という言葉は「染色体には生物の形質を決める遺伝子がある。」と、定義をせずにしれっと登場して、あとのページで遺伝子がどうのこうのと「遺伝子」という用語が頻出しています。で、あげくに「遺伝子の本体はDNA」なのだそうな。ある用語を明確な定義をせずに特徴や性質だけを積み重ねて語っていくのは遺伝子に限らない「教科書あるある」ですが、だからといってこれで遺伝子とは何なのか、きちんと生徒たちは理解できるのでしょうか。

こういうことは、それなりにテストでは点数のとれるはずの生徒も混乱してきて、質問に来ます。
そのため、こちらも一応の解決策として、イメージしやすいたとえを考え教材までつくったのですが、「遺伝子は何か」という問いに対する自分の中でストンと腑に落ちる(実感を伴った)解決は、まだできておりません。遺伝子のたとえも「文字」もしくは「文字が書いてあるページ」、「文字が示す内容(意味)」という方がふさわしいのかもしれない、と思いながら。

ところであの有名なズンドコベロンチョ、すごいですよね。やっぱズンベロですよね。
この前もズンベロが・・・

と話を振られたら、「ズンドコベロンチョ」って何だ?ってことになるでしょう。でも、どんどん話が進むといまさら「ズンドコベロンチョって何?」と聞けなくなります。とくに知識自慢の人ならなおさらプライドが許しません。

そこでこっそり「ズンドコベロンチョ」とは何か調べてみるのだけれども、結局それが何なのかよくわからない。でも周囲は自分がそれを知っているものとして話を振ってきて、それに応えなければならない。地味に恐怖…。そしてついに「ねえ、教えて!ズンドコベロンチョって何~~!!」と叫び、周囲の失望を買う-。

これは往年のテレビドラマ「世にも奇妙な物語」の「ズンドコベロンチョ」という話です。結局「ズンドコベロンチョ」とは何かはわからないままで物語は終わります。

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生徒にとって、それもそれなりに理科に興味を持っている生徒にとって「遺伝子」というキーワードが、分かっているようで密かにわからない、しかも理科に自信のある生徒ほど人には聞きづらい、調べてもわからない「ズンドコベロンチョ」的存在にならなきゃいいんですがね、というお話でした。

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