2015年にノーベル医学・生理学賞に輝いた大村智さんの「イべルメクチン」は、オンコセルカ症に効果がある薬で、4000万人を治療し、60万人の失明を未然に防ぎ、毎年約3億人が服用していると言われています。どんだけ人救ってんだよ…
しかし、もし、大村さんがノーベル賞をとらなかったら、大村さんと「イブロメクチン」の存在を知っている日本人は、関係者などごくわずかに限られていたのではないでしょうか。かくいう私も、ノーベル賞の報道ではじめて大村さんを存じ上げたクチです。
そう考えてみると、今現在も、ノーベル賞受賞前の大村さんのように「あなたが神か」レベルの世界的な貢献をしている日本人にもかかわらず、ほとんどの日本人に知られていない、そんな人物もきっとたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
で、今日ご紹介するのが
佐々木健一 「Mr.トルネード 航空事故を激減させた気象学者 藤田哲也」 小学館 , 2017
本書で取り上げられている藤田哲也さんもノーベル賞受賞前の大村さんみたいなものといえましょう。不可解な航空事故の原因を、それも研究者たちがこぞって「それはありえない!」と支持されないような真実「ダウンバースト」と突き止め、その結果対策がなされ、同様の事故の発生を防いだのです。
…でも、そんな人知らなかった、という方も多いのではないでしょうか。
私も、ただの中学理科教師だったら「節子とカミナリ雲」を観るまでその存在を知らなかったかもしれません。
ただ、一応は気象予報士の資格を持っているので、試験の対策で「ダウンバースト」のことや竜巻の藤田スケールについて学んだときにその名前を知りました。とはいえそのときですら、「竜巻の研究者」程度の認識です。試験には藤田さんの生涯についてまで出題されませんから。
1975年6月24日にJ.F.ケネディ空港で起こった着陸時の航空事故。その原因がわからない。
実は、事故の直前に着陸した2機の飛行機がウインドシア(風の急変)の存在を訴えていた。しかし、空港ではその風は観測されておらず、実際に他の飛行機は何事もなく着陸している。
事故原因がパイロットの操縦ミスで片付けられそうになる中で、航空会社はシカゴ大学のある人物へ謎の解明を依頼した。
その人物こそが-藤田・テッド・哲也だった。
ストーリーは、この事故の原因が、当時は未知の気象現象「ダウンバースト」だと看破したものの、気象界の猛烈な反発にあう。それにめげずに、ドップラーレーダーを使ってダウンバーストを観測し、その存在を証明するという一連の話を中核に、日本での話や(これもいろいろ面白い話があるのですが)、晩年の闘病生活などが描かれています。
もっと評価されるべき日本人科学者の一人です。
新品価格 |
コメント