1221 はじめてのリスクアセスメント @school (5)  困ったときのSDS頼み

2024年8月19日

 前回は、試薬の瓶に貼ったあるラベルには危険性・有害性などの情報などが書かれていることをみていきました。
 しか、しだ。ラベルの大きさには限りがある以上、載せられる情報量には限りがあります。もちろんとりあえず重要な情報はラベルに書かれていますが、もう少し詳細な情報が知りたいときもあるでしょう。また、多数の試薬の特徴を調べたいときに、いちいち薬品庫から試薬瓶を取り出すのも面倒です。

 そこでSDSですよ。SDS(Safety Data Sheet;安全データシート)とは試薬などを買ったときにもらえる、その化学物質の物理化学的性質や危険性・有害性及び取扱いに関する情報が書かれた文書なのです。
 かつてはMSDS(Material Safety Date Sheet;化学物質等安全データシート)と呼ばれていたのですが、国際調和されたGHSではSDSとして定義されていたので、尺貫法がメートル法になったように、g重がNにとってかわられたように、日本では平成24年からMSDSはSDSと呼ばれるようになりました。この関係で平成24年前後の文書には(M)SDSという表記が散見されますが、テストで解答するにあたって漢字に自信がないときに、一応漢字で答えて、その上にフリガナをふるような周到さを感じます。

SDSには次の16項目が番号・タイトル付きでこの順番に書かれています。

  1. 化学品及び会社情報
  2. 危険有害性の要約
  3. 組成及び成分情報
  4. 応急措置
  5. 火災時の措置
  6. 漏出時の措置
  7. 取扱い及び保管上の注意
  8. ばく露防止及び保護措置
  9. 物理的及び化学的性質
  10. 安定性及び反応性
  11. 有害性情報
  12. 環境影響情報
  13. 廃棄上の注意
  14. 輸送上の注意
  15. 適用法令
  16. その他の情報

 これも、ラベルと同様に実物を一度見ておくことをお勧めします。手元にSDSがない人も大丈夫。
物質名と「SDS」の2語で検索すれば、いろんな会社のその物質のSDSが出てきます。

 ただし、有害性の判断の根拠にどんな実験をしてどんな結果だったかみたいなマニアックな情報もあるので、すべての項目を熟読し、理解する必要はありません。とりあえず、危険有害性や応急措置、取扱い及び保管上の注意、ばく露防止及び保護措置(特に保護具について)、廃棄するときには廃棄上の注意あたりを見ておくとよいでしょう。
 これはあまり大きな声では言えませんが、たとえばスクロース(ショ糖、つまりお砂糖のこと)のSDSで「飲み込んだ場合:口をすすぐ 。医師の手当、診断を受けること。」みたいな記述をしているところもあり、この手の文書では仕方がありませんが、責任回避のためか、極端に安全側に振りすぎているきらいがあります。これの怖いところは、「SDSは大げさすぎる」という意識をもたれることによって、事故の発生時など肝心なときにSDSの指示に従わずに必要な措置をとらなかったり遅れたりすることで被害が拡大することですよね。たとえそうなっても、SDS発行者側は法的責任を問われないかもしれませんが。

 また、同じ物質でも、試薬会社によって、同じ項目に微妙に違うことが書いてあることがあります。なので、特にマイナーな物質については、複数の会社のSDSを読み比べてみるのも良いと思います。

 それよりは、監査が入るという噂を耳にしたので対策を立てたいというとき、事故が発生したときなど、必要なときにいつでも見られるようにきちんと保管しておくことの方が大切です。いらないときは邪魔なのに、必要なときになると忽然と姿を消すことってあるあるじゃないですか。SDSに関してはそうならないようにしましょう。いや、確かに検索すれば見られるかもしれないけど、そういう問題じゃなくて。

 ちなみにSDSは紙で渡されるとは限らず、磁気ディスクなどの媒体だったり、ファックスやメール添付で送られたり、はたまたURLや二次元コードを配られて、ここを見てね!というパターンもあります。特に試薬会社がネットにアップするパターンは、新たに有害性情報が分かったときなどに修正するのも直したPDFをアップしなおせばいいだけなので、今後増えてきそうです。

今日のまとめ
 SDSを見ると薬品の情報がラベル以上に詳しく分かるぞ!
 だからいつでも見られるようにしておくと吉。