1549 はじめてのリスクアセスメント @school (19) リスク提言措置の実施と再見積もり
CREATE SIMPLEを使ってリスクがわかり、対策を実施します。実施した対策が本当にリスクを下げているかどうかを再評価する必要があります。化学物質管理者講習テキストより
温めたエタノールで葉緑体を脱色するのはもともとリスクが低く判定されているので、あらためてリスク軽減措置をする必要は低いです。というか、これ以上リスクを下げろといわれても、どないせーっちゅうねん!と、現実的、かつ効果のある対応策は思いつかないでしょう。なので、今回は、「3%の過酸化水素水と二酸化マンガンで酸素を発生させる実験」を例に考えてみましょう。
これがCREATE SIMPLEによる最初の評価です。リスクレベルⅢ、ⅣはなんとかⅡ以下に落としたいところです。吸入(短時間)と経皮吸収が引っかかっています。
ん-どうしようかな。ということで作業時間は30分もいらないな、ということにして、「30分超~1時間以下」を「30分以下」にかえて。[リスクの再判定]をクリックします。
そしたら。
全然変わっていません。作業時間を減らしたところで効果はないということですね。
では別の作戦。吸入(短時間)を減らすには、空気中の濃度を下げればよい。それには…換気ですね。現在は理科室の窓を開けたり換気扇をつけたりするのを想定した「換気レベルB(全体換気)」ですが、換気レベルを上げてみましょう。
換気レベルC(工業的な全体換気、屋外作業),D(外付け式局所排気装置)にかえたところ、吸入(短時間)はレベルⅢに下がりました。換気レベルE(囲い式局所排気装置)を使ってやっとレベルⅡが達成できました。コメントが変わっているところ(下の画像中の青枠)に注目。
次に、経皮吸収のリスク低減措置をしましょう。これはもう保護手袋ですよね。化学防護手袋について、「耐透過性・耐浸透性の手袋を着用している」に変えてみましょう。ついでにこっそり保護具の教育について「教育や訓練を行っていない」とレベルダウンしてみます。
再評価の結果は、レベルⅡです。化学防護手袋を使えば、教育や訓練はいらないのね。教育の敗北です。(いや、そういうことじゃないということは、ちゃんとわかってますよ)
コメントは「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアルに従い、適切な皮膚障害等防止用保護具を着用しましょう。」で変わらないのね。
以上、リスクⅡまで低減できましたが、中学校の理科室に囲い式局所排気装置を設置してさらに化学防護手袋を着用してやる必要があるのでしょうか。
今回は3%の過酸化水素水を使ったためここまでの防護が必要でしたが、市販のオキシドールもフェナセチンなどの添加物が入っていることもありますが、ほぼ3%の過酸化水素水です。しかし、業務用でない市販のオキシドールを使えば労働安全衛生法の適用外ですから、局排も化学防護手袋もいらないことになります。
そうすると今度は、かつてコントロールバンディングであったように、CREATE SIMPLEでも正確にリスクを判定しているのか、という疑義が生じてきます。個人的には安全のために、擦り傷切り傷にオキシドールを1億回使ったってなにも起こらないんじゃないかと思うのですが、一方で偉い人が「本来はけがの患部にオキシドールをかけるときも局排や化学防護手袋が必要だ」といえば、そうなのか!…と信じてしまいそうです。CREATE SIMPLEが言っていることが正しいのか間違っているのか、私には判断できないのです。
もっとも、CREATE SIMPLEの言っていることが正しいか誤っているか判断できるなら、そもそも自分で正確にリスクの見積もりができるわけですから、そんな人はCREATE SIMPLEいりませんね。
かくしてCREATE SIMPLE頼みの庶民は、重すぎるリスク低減策を前に判定をどこまで信じていいのか悩むのでした。でもできないのはできないので、このケースではそのまま無対応(保護眼鏡やニトリル手袋は継続して使いますが)でファイナルアンサーかなと。
せめて、これは危ないかもな、気をつけなくちゃな、と残存するリスクを意識して作業するようにしましょう。
本当かどうかわかりませんが、利用客の数の割にはホームが狭く、電車が入ってくるとき、いかにもホームにいる人が危険そうだな、と感じさせるけど、事故が起こったことが全くないという駅があるらしいです。いかにも危ないと思うとみんな自分事として気をつけ、むしろ危険を感じない、安全に見えるほうが油断して事故が起きるのかもしれません。
まとめ
現実的に可能なリスク低減策を実施しても、CREATE SIMPLE上のリスクの見積もりではびくともしないことがある。
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