1537 はじめてのリスクアセスメント @school (15) CREATE SIMPLE

そういうことで、いよいよCREATE-SIMPLEの登場です。

ではさっそく使ってみましょう、と言いたいところですがその前に、CREATE-SIMPLEの特徴を見ていきましょう。

CREATE-SIMPLE対象  :有害性(吸入、経皮吸収)・危険性

CREATE-SIMPLE(Chemical Risk Easy Assessment Tool, Edited for Service Industry and MultiPLE workplaces;クリエイト・シンプル)は、サービス業などを含め、あらゆる業種にむけた簡単な化学物質リスクアセスメントツールです。

ばく露限界値(またはGHS区分情報に基づく管理目標濃度)と化学物質の取扱い条件等から推定したばく露濃度を比較する方法となっています。英国安全衛生庁(HSE)が作成した、HSE COSHH essentialsなどに基づく、リスクアセスメント手法における考え方を踏まえた、大量(数kL、数トン)の化学物質取扱事業者から極少量(数ml、数g)の化学物質を取扱う事業者まで、業種を問わず幅広い事業者が使用可能な簡易なリスクアセスメント支援ツールです。

また新機能として、米国NIOSHの手法などを踏まえたばく露限界値から算出した経皮ばく露限界値と取扱条件等から算出した経皮吸収量を比較する方法により、経皮吸収による有害性のリスクを見積もるとともに、GHS区分情報と取扱条件(着火源の有無等)から取扱物質の危険性についてもリスクを見積もる機能を追加した画期的な簡易なリスクアセスメント支援ツールです。

特徴
・労働者の化学物質へのばく露濃度等を測定しなくても使用できる。
・大量(数kL、数トン)から極少量(数mL、数g)まで幅広い化学物質取扱量に対応
・選択肢から回答を選ぶだけで、簡単にリスクを見積もることが可能。
・リスク低減措置の検討も支援しており、どこを改善すればリスクが下がるかが確認可能。
・厚生労働省版コントロール・バンディングでは考慮していない作業条件(換気や作業時間、作業頻度など)の効果も反映。
・吸入による有害性リスクだけではなく、経皮吸収による有害性リスクや危険性についてもリスクの見積もりが可能。

手法
・(有害性)英国HSE COSSH essentialや米国NIOSH 「A Strategy for Assigning New NIOSH Skin Notations」(2009)などを踏まえた吸入及び経皮吸収による有害性リスクを見積もる手法。
・(危険性)危険性に関するGHS区分情報と取扱条件(着火源の有無等)を踏まえて危険性リスクを見積もる手法。
・ばく露限界値(またはGHS区分情報に基づく管理目標濃度)と化学物質の取扱い条件等から推定したばく露濃度を比較する方法。

注意点
・何らかの理由によりばく露が大きくなるような作業については、リスクを過小に見積る可能性がある。
・危険性については、プロセスについては対象外としており、化学物質が潜在的に有する危険性に気づくことを主目的にしているため、プロセスで用いる場合などは、労働安全生成総合研究所が作成した「安衛研 リスクアセスメント等実施支援ツール」などをご利用ください。

ざっと見ると、理科室のような実験で少量しか使わなくて作業時間や頻度が低いのも配慮してくれそうなので期待がもてます。

では、CREATE-SIMPLEを使って、「エタノールをあたためて葉から葉緑体を取り除く」という作業の危険有害性のリスクを見積もってみましょう。

スクリーニング支援ツールコントロールバンディングは、web上で使いましたが、CREATE-SIMPLEはマクロのあるエクセルファイルをダウンロードして使います。

エクセルを開いて、「リスクアセスメント」のタブを開きます。
こんな感じで入力しました。
ステップ1 対象製品の基本情報を入力しましょう。
タイトル ⇒ エタノールによる葉緑体の脱色
実施場所 ⇒ 理科室
製品ID等 ⇒ (空欄)
製品名など ⇒ エタノール
作業内容 ⇒ 試験管に入ったエタノールで、オオカナダモの葉緑体を脱色する
備考 ⇒ (空欄)
リスクアセスメント対象 ⇒ 吸入 経皮吸収 危険性(爆発・火災等)
性状 ⇒ 液体  
成分数 ⇒ 

ステップ2 取扱物質に関する情報を入力してください

これ、[物質一覧から選択]からエタノールを選んで入れると簡単。

最後に含有率として100%と。

STEP3 以下の作業内容に関する質問に答えましょう。
Q1 製品の取扱量はどのくらいですか ⇒ 微量 (10mL以上~100mL未満)
Q2 スプレー作業など空気中に飛散しやすい作業を行っていますか。 ⇒ いいえ
Q3 化学物質を塗布する合計面積は1m2以上ですか。 ⇒ いいえ
Q4 作業場の換気状況はどのくらいですか。 ⇒ 換気レベルB(全体換気)
1日当たりの化学物質の作業時間(ばく露時間)はどのくらいですか。 ⇒ 3時間超~4時間以下
Q6 化学物質の取り扱い頻度はどのくらいですか ⇒ 週1回未満 1日/月
Q7 作業内容のばく露濃度の変動の大きさはどのくらいですか ⇒ ばく露濃度の変動が小さい作業
Q8 化学物質が皮膚に接触する面積はどれくらいですか。 ⇒ 大きなコインのサイズ、小さな飛沫
Q9 取り扱う化学物質に適した手袋を着用していますか。 ⇒ 取扱物質に関する情報のない手袋を使用している
Q10 手袋の適正な使用法に関する教育は行っていますか。 ⇒ 教育や訓練を行っていない
Q11 化学物質の取り扱い温度はどのくらいですか。 ⇒ 室温以上 78℃
Q12 着火源を取り除く対策は講じていますか。 ⇒ はい
Q13 爆発性雰囲気形成防止対策を実施していますか。 ⇒ いいえ
Q14 近傍で有機物や金属の取扱いがありますか ⇒ はい
Q15 取扱物質が空気又は水に接触する可能性がありますか ⇒ はい

ちょっと厳しめに設定してみました。4時間授業するという前提で3時間以上4時間未満とか、手袋について教育や訓練を行っていないとか。「近傍で有機物の取り扱い」って…葉っぱを入れるわけですから当然「はい」ですが、エタノール自体が有機物だし、今回のケースでは影響ないと考えます。

ステップ4 リスクの判定
リスクレベルS,吸入+経皮Ⅰ、危険性Ⅱ

判定結果
有害性
・濃度基準値設定物質以外の長時間(8時間)ばく露の評価結果は十分に良好です。
・濃度基準値設定物質以外の短時間ばく露の評価結果は十分に良好です。
・保護手袋を着用しましょう。
危険性
・引火するおそれがあるため、着火源の除去、爆発性雰囲気の形成防止対策の管理を引き続き実施しましょう。

スクリーニング支援ツールコントロールバンディングに比べて、だいぶ現実的な判定になりました。めでたしめでたし。これなら最初からCREATE-SIMPLEを使えばよかったんじゃ…(11)~(14)の記事はいらなかったんじゃ…という真実には目をつぶりましょう。

まとめ
CREATE-SIMPLEを使うと有害性と危険性の評価の見積もりができます。かなり現実的な判定が出ます。

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