後半では本題に入ります。この実験の化学物質の安全面の視点からとらえた話です。
鉄と硫黄を結び付ける実験は、いろいろ安全性の問題があり、毎年のように事故が続いている実験です。硫化鉄に塩酸を加えて発生させた硫化水素を吸い込んで体調不良になる案件は有名ですが、加熱の段階で硫黄の蒸気や二酸化硫黄を吸い込むというケースも侮れません。さらに授業後の無人の理科室のごみ箱で、未反応の鉄と硫黄が水分の力を借りて反応が始まり、ボヤになったというケースもあります。また、製油所等で粉末の硫化鉄による発火事故がありますが、何で学校ではそのような事故が起こらないのだろうと思っていたら、この事故の元となった自然発火性の硫化鉄とはFeSではなくFe2S3で、学校での実験のやり方ではFe2S3はできないようなので、これについては心配しなくてよくなりました。
追加スライドでは硫化水素の一件について、硫化水素の発生と被害を抑えるための方法をまとめてみました。それに加え、これだけこの実験と硫化水素の悪名が高くなってしまったために、実際に、少なくとも人体に影響がおこるほど吸い込んではいないのに、「吸ってしまったかも」という不安感だけで体調を崩す可能性を指摘しておきました。こんなケースまで理科の先生の責任にされてはたまりませんからね。
硫化水素に関連して、授業が連続すると理科室に硫化水素のにおいが残ってくることも原因の一つではないかという、貴重なご指摘もいただきました。確かにそれはある!

さらに、リスク削減措置なんて言葉が出てきましたが、これは化学物質管理者が行うリスクアセスメントの一部です。
で、それをちゃんとやるなら防護具として防毒マスクを使用する必要がありますが、価格や使い勝手の問題もさることながら、生徒が使っていないのに自分だけ防護具を使うのか、という教師の立場上の心理的な抵抗があります。そんな危ないガスが発生しているのに生徒はマスクなしかなんて言われてしまいそうですし、かといって生徒全員に防毒マスクと使い捨ての吸収缶を準備できるかというと、だったらそもそもそんな実験やるな!という話になってしまいます。

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また話を戻して、じゃあ鉄と硫黄の代わりになる化学変化はないかと検討して実験をマイクロスケール化して、そのメリットやデメリットを比較し、また鉄と比べてと今回候補として検討した銀や銅では性質の違いが分かりやすい項目が少ないという課題点を示しました。
スライドガラスという耐熱性のないガラスで加熱をするため、ガスバーナーは使えず電気コンロで少しづつ加熱するというところにも指摘をいただきました。それもまたもっともです。
ついでに、この研究の本当のきっかけは、鉄と硫黄の実験を何とかしたい、ということではなく、酸化銀の熱分解で得られた銀がたまってきたんだけど、なんかいい使い道はないかと思ったことからだ、と暴露しました。
そして、もし銀を使おうおとするならば、近年の銀価格の上昇もあり、コストのマイクロスケール化も必要だなということでしめた次第です。




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