2021 鉄と硫黄に代わる2種類の物質を反応させる実験の検討 ―銅と硫黄、銀と硫黄の反応―(後編)

銀と硫黄の反応

銀と硫黄の反応 (1)

 次に銀と硫黄の反応を同様のマイクロスケールで実験してみました。
 銀は酸化銀の熱分解の実験で得られたものを使います。粉末にして硫黄の粉末と混ぜたものと銀の塊に硫黄の粉末をまぶしたもので反応させてみました。どちらも黒くなりましたが、塊の方は中を切ると銀色がみられ、表面のみの反応だったことが分かります。

銀と硫黄の反応 (2)

 そして反応前の金属の銀は電流を通しますが、反応後の硫化銀は電流を通しませんでした。こちらは反応の前後で性質が変わったため、違う物質となったことが分かります。

マイクロスケールのまとめ

マイクロスケール化した実験のメリットとデメリット

 以上の実験を通してマイクロスケール化した実験のメリットとしては、マイクロスケール実験の本質ともいえる少量で実験でき、有害な気体が発生したとしても少量にとどまる点に加え、加熱後冷めるまでカバーガラスを開けないことで、有害な気体を吸い込む量を減らすことができます。
 一方、マイクロスケール化したことによって、硫黄や金属が0.1gあるいはそれ未満になることもあり、質量を正確に測り取ることが難しく、適当な量で実験することになります。また、金属片など大きな塊の場合、反応は内部まで完全に進むわけではなく、表面のみにとどまります。なお、ホールスライドガラス、カバーガラスは一度蒸気になった硫黄が再び固体になってこびりつくため、使い捨てとなります。
 マイクロスケール実験では、表面のみの反応ではあるが、有害な気体を大量に吸うリスクは軽減されるため、化学物質のリスクを削減する措置としては有効と考えられます。

金属同士の比較 ~銅と銀は鉄を超えるか?~

金属の硫黄と反応させる前後での性質の違い

 そして、反応前の金属と反応後の硫化物との性質の違いがみられる方法について比較しました。
銅、銀ともに色の違いは見られましたが、電流を流すかという点については銀は違いがみられましたが、銅はどちらも電流を流すので、違いがみられませんでした。
 一方、鉄は色の違い、電流を流すかという点の違いの他、磁石につくか、塩酸との反応でも言おうとの反応前後で明確な違いがみられ、鉄だけに「鉄壁の守り」がみられました。
 銅や銀ならば、銀の方が実験に使えそうですが、化学変化をモデルや化学反応式で表そうとすると、鉄や銅ならFe+S→FeS、Cu+S→CuSと原子1個ずつがくっつく形になるのですが、銀の場合は2Ag+S→Ag2Sと、少し複雑になります。また、銀を使う場合、価格という大きな問題点があります。

結論

まとめ

 ここまでをまとめますと、本研究では、2種類の物質を反応させる実験として鉄と硫黄の反応の代わりになるものがないかを検討しました。具体的にはホールスライドガラスを使ったマイクロスケール化した銅と硫黄、銀と硫黄を結び付ける実験がその候補として耐えうるかを検証しました。
 その結果、マイクロスケール化した実験により、表面のみの反応ではあるが、有害な気体を大量に吸うリスクは軽減されたものの、銅と銀は鉄に比べると、反応の前後で明確に変化する性質が少なく、性質の違いから物質の変化を見い出す点では劣るということが分かりました。

 以上より現行の鉄と硫黄に取って代わることは難そうだが、別法として酸化銀の分解でできた銀を硫黄と反応させてみよう…という展開だったらできそうな可能性が示唆されました。発表は以上です。ご清聴ありがとうございました。

学会発表は以上ですが、次回(2025/8/31更新)は銀その次(2025/9/1更新)は銅の実験の様子を紹介します。

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