1120 品川区教育会理科部 研究授業 2015年12月 流れる水のはたらき (後編)

昨日の続きです。

2.どのような視点をもたせるか。

「ウサギとカメ」のお話において、ウサギとカメはどちらが速いといえるでしょうか。この問題、「速さ」をどのような視点でとらえるかで、ウサギが速いともいえるし、カメが速いともいえるのです。「速さ」という言葉は、2つの視点をもつことのできる曖昧な言葉なのです。

このようなあいまいな言葉は理科の授業でもしばしば登場します。
たとえば、

力がはたらくと運動のようすが変わる

「運動のようす」とは具体的に何でしょうか。「速さ」と「向き」の2つです。どちらか1つでも変わると、「運動の様子が変わった」ということになります。

均一な性質をもつ空気のかたまりを気団という

「性質」とは具体的に何でしょうか。専門的な話はさておき、中学校理科で持っておきたい視点としては「温度」と「湿度」の2つです。

「様子」「性質」のような表現で、児童・生徒はどのような視点でとらえればいいかわかっているでしょうか?
落ちたボールが床で跳ね返る現象は、「運動の様子が変わった」といえるのか判断できるでしょうか。「速さ」と「向き」という明確な視点があれば、「向きが変わったから運動の様子が変わった」と自信をもって答えることができます。

「流れる水のはたらき」は、侵食、運搬、堆積の3つの視点をもった言葉です。授業ではこの3つを一緒くたにしたまま観察をしたことにより、流水実験機の水が流れた跡から、児童自身がで視点を探して考察していくので、結果でおさえておきたいポイントを児童だけでは網羅できなかったようにみえます。

ここは侵食・運搬・堆積の3つの視点に分けて、
①削られた砂の量を平常時と増水時で比較する
②流された砂の量を平常時と増水時で比較する
③堆積した砂の量を平常時と増水時で比較する
とやって、いずれも増水時には大きくなることを結果で確認して、
だから大雨などで川が増水すると、流れる水のはたらきは大きくなると結論付けられます。

なお、堆積作用については、それこそ「視点」というか、堆積作用をどう定義するかの問題があります。
単純に考えれば
①トレーの下側にたまった砂の量が多いから、堆積作用が大きくなったといえる。
洪水を繰り返す河川の下流部で自然堤防が発達するのも水量が増えると堆積作用が大きくなる例です。実際に大雨により大量のごみが河川に堆積した事例なんてのもあります。
なので、一応はこれがスタンダードな解釈なのです。

が、深読みすれば次のような視点ももてます。
②しかし、下にたまった砂の量というのは水が運んだ砂の量だから、それは堆積作用ではなく運搬作用が大きくなっただけじゃないか。
③はたまた、トレーの下側は河口付近で急に幅が幅が広がり、流速が落ちたところだからやっぱり堆積作用だ、そしてその量が増えたんだから堆積作用は大きくなった。
④いや堆積作用を比較するんだったら砂の運搬量をそろえないといけない。ってことは、この実験ではそもそも条件がそろっていないんじゃないか…。
⑤下のグラフは、流速と粒径の条件によって侵食(Erosion)・運搬(Transport)・堆積(Deposition)のどの作用が起こるかを示したユールストローム図です。

粒径(Grain Size)を固定して考えると、流速(Flow Speed)が一定値以上あると侵食が起こりはじめ、別の一定値以下だと堆積が起こりはじめます。侵食が起こるレベルの流速では堆積作用は起こらないので、そこから流速が増えたからと言って堆積作用はゼロからゼロですから「大きくなった」とも「小さくなった」とも言えないんじゃないか。

まあなんというのでしょう、深入りせずにスルーするアンタッチャブル(ふれてはいけない)な内容のように思えてきました。

3.流れる水のはたらき

 この単元に使えそうなサイトとして、リアルタイムで河川の水位情報や川の様子のカメラ画像が見られるところを紹介します。品川区は運のいいことに観測地点が多いですね。

東京都水防災総合情報システム(東京都建設局河川部提供)

品川区気象情報

水位観測情報河川監視カメラを見ることができます。

※新ブログに移転するにあたり、画像を最近のものに差し替えました。

その他、他の地域ではこんなものが使えそうです。
他の地域(関東地方)の河川監視カメラ情報
国土交通省 川の防災情報

増水の原因である台風については日本気象協会の「節子と台風」がおすすめです。
前編後編



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