分子
フランスに、 J.L. Gay-Lussac(ゲイ・リュサック)という人がおりまして、水素と酸素が体積比2:1で体積2の水(水蒸気)ができることから、「気体同士が反応したり、反応によって気体が生成するとき、それらの気体の体積間には簡単な整数比が成り立つ」という「反応体積比の法則(旧名:気体反応の法則)」を提唱しました(1805-1808)。
この説をゲイ・リュサックが唱えた年について、1805年と書かれているものと1808年と書かれているものがあります。この法則について書かれた本の出版年が1805-1808となっているためです。参考に当該本(ドイツ語で書かれています)を見つけましたのでリンクしておきます。
Das Volumgesetz Gasfoermiger Verbindungen : Abhandlungen Von Alex. Von Humboldt Und J. F. Gay-Lussac (1805-1808)
で、この法則を後に「アボガドロの法則」とよばれる
同温・同圧では、同じ体積の気体は同数の原子または複合原子を含む
という仮定で考えます。
さてここで、水素は水素原子1個、酸素は酸素原子1個とすると(水はどうするかは考えてください)
体積2の水素と体積1の酸素から体積2の水蒸気ができるということをどう表すことができるでしょうか。
前回学習した原子の特徴、とこれらをすべて満たすものって、どんなものなのか考えてください。
赤い球(酸素原子)の数が合いませんね。
原子を分割してはいけませんね。
体積比が条件を満たしていませんね。
…ということで、どうやってもできません。何かがおかしい。これが原子説の矛盾です。
ここに登場したのがアボガドロです。1811年、彼は「水素や酸素は原子1個じゃなくて原子2個がくっついてるんじゃね?」と説明しました。
こうすると、原子の特徴も守りつつ、体積比の条件もクリアした説明ができます。
この原子が何個かくっついでできた粒子が分子です。
ま、原子説を発見したドルトンは「すべての気体は極限粒子である(1個の)原子からなる」と主張していたなどの理由で、当時は認められなかったのですが、その後1860年カニッツァーロが「やっぱりアボガドロのいうとおりだよね」と主張して、分子説はやっと認められるようになりました。
水素、酸素、水のほか、窒素や二酸化炭素、アンモニアのような気体、エタノールや砂糖(ショ糖)のような有機物の多くが、分子でできています。
分子を作らない物質
分子の話をすると「すべての物質が分子を作る」とよく誤解されますが、
すべての物質が分子を作るわけではなく、分子を作らない物質もあります。
先ほど説明したように分子は原子が何個かくっついでできた粒子です。
原子を人に見立てれば、分子は「家族」
例えば水素という気体には水素原子が2つくっついた粒子、すなわち水素分子がたくさん集まっていますが、ある水素原子に注目すれば,そいつの家族は一人だけ、他の水素原子はよその家族、つまり他人!
分子を持たないというのは、家族でない人間関係です。
塩化ナトリウム(食塩)は原子が縦横斜めにNa・Cl・Na・Clと並んでいます。
ということはあるNa原子に注目すると、上下左右前後にCl原子が6個あり、特定の1個の塩素原子が相手だ!というわけではありません。また、その隣にあるCl原子に注目すると、やはり上下左右前後にNaがあります。水素分子のような「家族」よりは弱いけど「他人」よりは強い「友達」程度の関係です。
NaとClが1:1といっても特定のNa原子とCl原子がくっついて粒子をつくっているわけではありません。これが「分子ではない」ということです。
銀やマグネシウムのような金属の単体は、原子がたくさん並んでいても、基本的に他人の集まりです。「友達」より弱い顔は知っている程度のつながりで、当然「家族」ではありません。
この辺りは高校で学習する化学結合にもつながってくる話ですが、なんでもかんでも分子をつくるわけではなく、分子をつくらない物質がある、というところはおさえておきましょう。
この話は授業をもっと面白くする! 中学校理科の雑談ネタ40に詳しく掲載されていますので、読んでみてね。(おかげさまで重版です)
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