0546 顕微鏡の扱いについて質問です

平成29年告示の学習指導要領が、令和3年(2021年)度から施行されたわけですが、顕微鏡の扱いについて質問をいただきました。

 今回、生命単元の大幅な変更で、1年次に顕微鏡を使う機会がほとんどなくなったと思うのですが、今まで1年の最初の方におこなっていた「顕微鏡の使い方」が新しい学習指導要領でカリキュラムのどの位置にくるものかがすっきりしません。
 解説を読むと、1年次はルーペ&双眼実体までで、2年次にはじめて顕微鏡の使い方を学ぶということでいいのでしょうか。

 でも教科書によっては、1年の最初の水中の生物の観察(「試してみよう」的な補助的実験)で突然顕微鏡が出てきます。
 また、物質単元の再結晶で、「ルーペ(または顕微鏡)で観察」と突然出てきます。
 1年次にきちんと時間をとって顕微鏡の使い方を教えておいた方がいいのか、2年でやればいいのか、判断しかねています。
どうなのでしょうか。

平成20年の指導要領には、1年生で学習する 第2分野(1)植物の生活と種類 の内容の取扱いで「水中の微小な生物の存在にも触れること」と明記されていたんですよ。解説には「水中に微小な生物が存在していることを顕微鏡観察によって見いだすようにする。」とか「水中の微小な生物の観察を行うことは,(中略)顕微鏡観察に習熟させるためにも有効である。」とか「観察器具としては、例えば、ルーペ、実体顕微鏡、顕微鏡などが考えられる。」(←実体顕微鏡は顕微鏡じゃないのね)と、1年で顕微鏡が登場していたし、実際に1年の教科書に顕微鏡を使った水中の微小な生物の観察が載っていたわけです。

 ところが。
 平成29年の指導要領では、1年生で学習する 第2分野(1)いろいろな生物とその共通点 の内容の取扱いでは「身近な生物の観察を扱うが、ルーペや双眼実体顕微鏡などを用いて、外見から観察できる体のつくりを中心に扱うこと。」とあります。
 強引な解釈をすれば、実体顕微鏡は顕微鏡じゃないとはいえ、ルーペや双眼実体顕微鏡などの「など」に含まれ、「外見から観察できる体のつくりを中心に」とあるけど、中心じゃなくて周辺部だ、と言い張ることは可能なのかもしれません。
 しかし、2年で学習する(3)生物の体のつくりと働き (ア)生物と細胞 ア生物と細胞 には、「観察器具の操作、観察記録の仕方などの技能を身に付けること。」とあります。
 化学領域では 1年の(2)身の回りの物質 で「実験器具の操作、記録の仕方などの技能を身に付けること。」とあっても、2年の(4)化学変化と原子・分子 には実験器具の操作の技能を身に付ける…などという文言はありません。ガスバーナーも天秤もメスシリンダーも1年でやって、操作の技能を身に付ける必要のありそうな実験器具は2年から登場しないからです。
 ちなみに地学では2年の(4)で「観測方法や記録の仕方を身に付けること。」と2年で初めて出てくる気象観測の技能を身に付けることが書かれています。

 と、するとですよ。
 2年生物で観察器具の操作の技能を身に付けるとかかれているということは、ここで操作の技能を身に付ける必要のありそうな実験器具が新登場するということを意味しています。それが何かは、おわかりですよね。

 双眼実体は1年生、顕微鏡は2年生と指導要領上では明確に分けているのです。

 あれ?そしたらさぁ
 1年の教科書に、顕微鏡使った水中の微小な生物の観察が載ってるんだけど…

 指導要領にないことが教科書に書かれていることがあるんですね。範囲外の明記をしてなくても。
 とくに指導要領が改訂されて削除(小学校に移行)されたところなんかは、旧指導要領を覚えている先生方が物足りなさを感じたり、かえって教えにくくなったりすることがあるので、教科書によってはあえて残しておくことがあります。
 ただ、そのようなところは「観察1 水中の小さな生物の観察」みたいにいかにもやらなきゃいけない生徒実験という形では描かれておらず、小さめの扱いで、飛ばすことも可能になっていますね。まぁ、教科書に載っているからやらないといけないと思う人も多いでしょうが…。

だとしても2年生の教科書を見てください。顕微鏡の操作法、ちゃんと丁寧に載っていますから。
なので、顕微鏡の操作は2年生送りでいいかと思います。

なお、再結晶の観察は双眼実体顕微鏡で十分です。
これの結晶画像はすべて双眼実体顕微鏡で観察したものです。