閉塞前線
次の4枚の天気図をみて、12時間ごとに前線がどう変化したか見てみましょう。
1枚目と2枚目を比べると、2枚目の方が寒冷前線と温暖前線の間が狭まっていますね。
さらに3枚目4枚目は、とうとう寒冷前線が温暖前線に追いつき、重なった部分ができてしまい「人」の字のようになりました。そして重なった部分は寒冷前線と温暖前線の両方があるということで半円と三角のマークがついていて、色も赤と青が混ざってできる紫色です。
この前線が閉塞前線(occluded front)です。
寒冷前線は密度の大きい寒気が,密度の小さい寒気をどかす、つまり重いものが軽い物をどかしていくので簡単です。ところが温暖前線は、密度の小さい暖気が密度の大きい寒気をどかすというので、基本的に無理があります。そのため、温暖前線よりも寒冷前線の方が移動する速さが速いのです。すると、いつしか寒冷前線は温暖前線に追いついてしまいますね。そうしてできたのが閉塞前線です。
寒冷前線の「追いかける」寒気と、温暖前線の「逃げる」寒気がくっついて、暖気の居場所が閉じてふさがってしまう,これが閉塞前線です。
前線の断面は、まさに寒冷前線と温暖前線がくっついた形になります。温暖前線の前の寒気と、寒冷前線の後ろ側にある寒気のどちらがより寒冷かで、閉塞前線を寒冷型、中立型、温暖型の3つに分類することができます。もっとも、どうせ温暖前線の前の寒気と、寒冷前線の後ろ側にある寒気も、挟まれて上空に追いやられた暖気から見れば(そして客観的にみれば)寒気であることには変わらないので、少なくとも中学校段階では気にする必要はないでしょう。
もちろん、前線付近は雨が降ります。
温暖前線の前の寒気の方が冷たければ温暖型、海嶺前線の後ろの寒気の方が冷たければ寒冷型、両方の寒気に温度差がない場合には中立型閉塞前線となります。日本付近では、大陸から寒冷前線の後ろ側へ新鮮な寒気が供給されるため寒冷型になることが多いです。
寒冷型 (寒冷前線の延長上に閉塞前線があります)
中立型
温暖型 (温暖前線の延長上に閉塞前線があります)
停滞前線
5月のゴールデンウイークあたりから、7月半ばまで、日本列島の九州から関東のちょっと南に、ほとんどずーっと前線があるのがわかりますか。温暖前線や寒冷前線もありますが、それらとも閉塞前線とも違った前線の記号がありますね。
そしてこの前線、約2カ月ものあいだ、途中消えたりすることもありましたが寒冷前線や温暖前線のようにほとんど動きません。停まって、滞っています。
なのでこの前線を停滞前線(stationary front)といいます。
暖気と寒気の勢力がほぼ等しいので前線が停滞するのです。
一方、断面図については、気にしなくて良いです。「停滞前線 断面」で画像検索してわかるとおり、いろいろな形で書かれているので、「この形です!」というのがありません。
とはいえやはり暖気と寒気がぶつかっている以上、前線付近では雨が降ります。そして、前線が動かない。
したがって雨の降るエリアも動かず、その場所では長い間雨が降り続けるというわけです。
5月から7月の天気図ということでお気づきの人もいるでしょうが、梅雨はこの停滞前線が大きな役割を担っています。6月から7月にかけてできる梅雨前線、9月から10月にできる秋雨前線は呼ばれる前線は停滞前線の一種です。
もっとも、停滞前線は梅雨や秋雨以外のケースもあります。
次の天気図を停滞前線に注目して見てください。12時間おきに5枚あります。
低気圧に伴った停滞前線で、低気圧とともに前線も移動しているように見えますが、よく見ると、東側に伸びて西側が消えているだけで、前線そのものはほとんど動いていない、という見方もできます。暖気と寒気の押し合いになかなか勝負がつかない様子が見て取れますね。
windyを見ると、ちょうどこの付近での偏西風がムチャムチャ強くなっており、寒気も暖気も押し合いの勝負したり渦作ったりするどころでなく流されているのでしょうか…
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