0924 【水溶液とイオン09】原子の成り立ちとイオン(9) 謎はすべて解けた
前々回ではとうとうイオンとは何かということが分かり、さらに前回はそれをもとに電離という現象を学習し、化学変化とイオンの最初のヤマ、「原子の成り立ちとイオン」はいよいよ今回で終わります。
ところですっかり忘れている人もいるかもしれませんが、「原子の成り立ちとイオン」の第1回で
食塩にも精製水にも電流が流れないなら、それらを混ぜたところで電流が流れる要素はないはずだろ?なのにどうして食塩水に電流が流れるんだよ?
という疑問が提示されていて、ずっとその謎を追っていたのです。
電気分解も原子の構造もイオンとは何かも電離も、この謎を解く伏線だったのですよ。
しかしもう材料はそろいました。あとは説明するだけです。謎はすべて解けた!!by金田一少年
説明しよう
電解質が水に溶けると電離、すなわち陽イオンと陰イオンに分かれて均一に散らばっています。そこに2本の電極を入れて電圧をかけるとどうなるでしょうか。
ちなみに、この電極は、電池(電源)ではないので、+極(正極)、-極(負極)とは言いません。電源の+極に近いほうが陽極、-極に近いほうが陰極です。
電池の-極から見ていきましょう。-極から出た電子は、陰極へ到達します。すると、陰極は電子がやってきた分、-の電気を帯びます。すると、電極付近にある+の電気を帯びた陽イオンに、-の電気を帯びた電子を渡します。すると、+の電気を持つ陽イオンは-の電気をもつ電子を受け取るので、電気を帯びない原子に戻ります。
一方、陽極から電池の+極へも、電子が流れ込むはずです。すると、陽極はどこからか電子をもってくるはずです。電極付近にある-の電気を帯びた陰イオンから電子をもらってくるのです。電子を失った水溶液中の陰イオンは、やはり電気を帯びない原子に戻ります。
で、戻った原子は銅原子のように一人でいられるものはそれで終了ですが、水素原子や塩素原子のように、一人ぼっちでいられずにペアを組みたがる原子ならば、水素H2や塩素Cl2という形になります。もっとも塩素はまたすぐに水に溶けてしまいますが…。
電子の流れを見ると、
陰イオン → 陽極 → 電池の+極 → 電池の-極 → 陰極 → 陽イオン
というルートができています。
そうしたら、一瞬、
陽イオン → 陰イオン
という移動もあって輪になっていると、文字通り「回路」となってずっとぐるぐる回りそうですが、残念ながらそうではありません。
このような電子の流れが起こると、先ほどみたように陰イオンも陽イオンも原子に戻ってしまい。水溶液中のイオンは減る一方です。そしてイオンがなくなれば、電流が流れなくなるという持続可能でない話なのです。
でもそれによって塩化銅は塩素と銅となり、塩化水素は塩素と水素となるように、分解が起こったのです。
分解が終われば、電流は流れない。ある意味合理的な話です。(実際はイオンの量が0になる前に事実上電流が流れなくなるでしょうが)
ということで、
食塩にも精製水にも電流が流れないなら、それらを混ぜたところで電流が流れる要素はないはずだろ?なのにどうして食塩水に電流が流れるんだよ?
という質問の答えは、
食塩は電圧をかけてもイオンの状態は変わらない、精製水にはイオンがないから電流が流れない。でも食塩水中では電離してイオンとなっているので、イオンが電気を帯びない原子になるのと引き換えに
陰イオン → 陽極 → 電池の+極 → 電池の-極 → 陰極 → 陽イオン
というルートで電子が移動できるからなんだよ。まいったかこのやろ。
と説明できました。これにて一見落着。長かった…。
そうそう、ここまで説明すれば砂糖のような非電解質の水溶液は水に溶かしても電流が流れない理由は不要だよね。
砂糖水中にイオンはあるかどうか考えれば一発です。
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