平成元年改訂、平成10年改訂の学習指導要領のもとでの中学理科では、中和といえば塩酸と水酸化ナトリウムの黄金コンビ、と相場が決まっていました。で、このときできる塩は塩化ナトリウム、つまり「食塩」。これ以外の塩は登場しないに等しいので、塩(えん)=食塩と誤解したり、塩を「しお」と読んだりしてしまう生徒も出てきます。
平成20年改訂以降の学習指導要領では、2価のイオンも登場が許されたので、硫酸と水酸化バリウム水溶液の中和も登場します。このコンビもなかなかいいんだ。
まず、水酸化バリウム。溶解度から計算すると0.2mol/Lも何とかアリのはずなのですが、うまく溶けてくれません。しょうがないので半分の0.1mol/Lで調整しました。BTBたらして青くしてあります。ちなみに、すぐに空気中の二酸化炭素を吸収して、表面に炭酸バリウムの白い膜を作ります。
その0.1mol/L水酸化バリウム水溶液を4mLずつ試験管に入れます。
青がうすいので、BTB液をもう1滴ずつ加えました。
そこに0.1mol/L硫酸を2mL、4mL、6mL、8mL、10mL加えました。比較のために最初の水酸化バリウム水溶液を4mLをもう1本用意。
左から硫酸を加えた量が0,2,4,6,8,10mL。
白い沈殿がたまってきました。
沈殿の量は黄色くなっている3本がほぼ同じ。青の3本は一番左はゼロで、右に行くにつれちょっとずつ増えてる感じです。変だなぁ。中和点は左から3本目あたりのはずなんだけど。
翌日、もう一度見てみると、3本目と4本目以降がほぼ同じ量になっていました。
この白い物質は硫酸バリウムという塩です。ちょうど中和した左から3本目(硫酸4mL)より右は沈殿の量が増えていません。中和した分だけ塩ができるのですから、左から3本目以降、言い換えると硫酸を4mL以上では、もはや中和は起こっていない、ということがわかります。
さらに2本目(硫酸2mL)ではアルカリ性ですが塩ができている。つまり中和が起こっています。中和したからといって必ずしも中性になるわけではない、という説明も可能ですね。
こうのような中和についての誤解しやすいポイントを説明することは、塩が水に溶けてしまう塩酸+水酸化ナトリウム水溶液ではやりにくいんですよね。
なお、4mLが中性(緑色)になっていませんが、実験した人はわかると思いますが、ほんとに硫酸1滴で青から黄色に変わるんですよね。本来なら硫酸の濃度を薄めて緑色にすべきなのでしょうが、ちょっと横着しました。
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