1519 はじめてのリスクアセスメント @school (9)  化学物質などによる危険性または有害性の特定(後編)

 さて、前編では各試薬のもつ危険性や有害性についてみていきました。しかし、それだけでは終わりません。

 想像してごらん(Imagine)。塩酸を使っているときを。
 試験管に入っている塩酸に、亜鉛を加えたかな。
 試験管に入っている硫化鉄に、スポイトで塩酸を1,2滴たらしたかな。
 水酸化ナトリウム水溶液とまぜて、中和しているかな。
 もしかしたら試薬瓶に入った濃塩酸を、実験用に薄めているかもしれないね…。

 問題は、これらの操作におけるリスクは塩酸にまつわるもの(発生した水素や硫化水素がらみのものを考えないとしても)だけ取り上げたとしても、同じといっていいだろうか。
 特定の濃度の希塩酸をつくるために、怪しい煙が出てる濃塩酸の試薬瓶からメスシリンダーに一定量移す操作と、スポイトやピペットでうすい塩酸をそっと1滴ずつたらして中性にする操作では、同じ塩酸を扱っているからといって、リスクの大きさは同じだと言っていいだろうか?

 ダメだよね。濃塩酸で怪しい煙が出ているということは、吸入するとヤバそう。というか実際にヤバい。ところが、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和実験で、あとちょっとで中性になりそうなときって、ピペットから塩酸を1滴たらした。青が緑になるかな?あ、黄色くなった!…でも振ったら青く戻った、ってなぜかみんながスリリングに見守っているときは、怪しい煙なんて出ていないし、当然に吸入する心配はいらないもんね。

 つまり、それを使って何をするか、作業手順も危険性または有害性の特定に必要だということです。

 さらに、そのときに窓を開けているか、保護眼鏡をしているか、手袋をしているかなんかも加味して、この物質を扱っているときにどんな危険性や有害性があるかな、ということを考えていきます。

 と、するとですよ。ここであたしがちょろっと考えているのは、この「化学物質を使った作業手順」とやらを、一つの「実験」でパッケージ化したら医院で内科医?いいんでないかい?ということ。
 たとえば「保護眼鏡をしたうえで硫黄と鉄を乳鉢で混ぜて、2本の試験管に入れ、そのうち1本を脱脂綿できつくしめてガスバーナーで加熱する。加熱後に色を観察したり、磁石に近づけたり、塩酸をたらしたりする」という一連の操作で考えられる危険性または有害性を考える、となると、生徒への実験中の安全指導にも役立ちそうですね。
 もっとも授業中にやる実験だけでなく、先生が行う予備実験を含めた準備や片づけも考えておきたい。
 そうするとリスクアセスメントをする回数がまた増える…

 しかも、前回のエクセルファイルをダウンロードしただけではだめということになりますね。あのファイルを手に入れてホクホクしていた人、残念でした。でも大丈夫。作った私がいちばん残念ですからorz

 本当は教科書に沿って実験ごとに危険性または有害性の特定やその後のリスクの見積もりなどをまとめたエクセルをアップしたいのですが、特定の教科書に沿うと、現在、来年度の教科書採択の時期だから、と~ってもまずいことになってしまうといけないので、しばらく見送りたいと思います。
 みんな、がんばってね。(冷たい)

まとめ
化学物質などによる危険性または有害性の特定には、どの化学物質を使うかだけでなく、作業内容や使用量、防護体制など、他の要因も関わってきます。

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