倍率ドン!さらに倍!
液体の水が気体の水蒸気になると体積は約1700倍になる、という話は比較的あちこちの資料に載っているのですが、これがエタノールとなると一気に胡散臭くなります。
あるサイトでは記事のタイトルに1000倍以上と紹介されていますし(ただし、本文を見ると根拠になるような説明はなかった)、また別のサイトでは約400倍とされています。また検索したらAI様が「エタノールが液体から気体になると、体積は約250倍に増えます。」と教えてくれました。
250倍と1000倍ではえらい差ですが、真実はいつもひとつ!
実際は何倍なんでしょう。検証してみました。
ちなみにググって出てきたAI による概要で「エタノールが液体から気体になると、体積は約250倍になります。」とあったので、詳しく見たらエタノールではなくLPガスの話だった。ふっ、AIもまだまだ修行が足りんな。
1molの液体と気体の体積
わかりやすいようにエタノール1molで、液体のときの体積、気体のときの体積をそれぞれ求め、気体の体積÷液体の体積で調べてみましょう。
まず、エタノール1molの液体の体積を求めるために、先に質量を求めます。エタノールの分子量はC2H5OH=46、つまり1molは46gとなります。
次にエタノールの密度を表から求めてみましょう。一般社団法人アルコール協会にはエタノール水溶液の密度(文献値 )の資料があります。例えば20℃では0.7892g/cm3ですから、20℃、つまり液体状態のエタノール1molの体積は
46g ÷ 0.7892g/cm3 = 58.29cm3
一方、1molの気体の体積は 22.4 L =22400cm3 ということで
22400cm3 ÷ 58.29cm3 = 384倍
という計算で、某サイトでは384倍と、約400倍弱と結論付けています。
ちょ、待てよ!
だが、ちょっとまってほしい。
1molの気体の体積は 22.4 L ってのは標準状態、つまり0℃1気圧のときの話だよね。1気圧というのはいいとして、エタノールの沸点が78℃なのに、気体の温度が0℃ってことはないじゃないですか。
そう、気体の体積はシャルルの法則で温度を考慮しなければいけないよね。
沸点78℃(351K)におけるエタノールの気体1molの体積は
22400cm3 ×351/273 = 28800 cm3 となります。
なので
28800cm3 ÷ 58.29cm3 = 494倍 すなわち約500倍となるのです。
250倍も400倍も1000倍も残念でした…。やはりネット情報は玉石混交だなぁ…。
それを言ったらこのブログも疑わなくてはいけないのですが
他の物質だとどうなるか
もっともらしく、他の物質でも使えるように公式を用意しておこう。
分子量M 液体の密度ρ 沸点 Tf
液体の体積 VL=M/ρ 気体の体積 VG=22400×Tf / 273
膨張率 VG/VL= 22400Tf ρ / 273M
水の場合 M=18 ρ=1.0 Tf=373 として
22400*373*1.00/(273*18)=1700(倍)
おお!確かに!
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