1803 前線の通過と風向の変化

以前、寒冷前線と温暖前線の話をしたときに

すると、通過後の気温と風向の変化はどうなるでしょうか。
寒冷前線は暖気から寒気に変わるのですから、気温は下がり、暖気の南寄りの風から寒気の北風に変わります。
温暖前線は暖気から寒気に変わるのですから、気温は上がり、通過すると暖気の南寄りの風が吹くようになります。

ただし、前線通過前後の風向の変化はデリケートな部分があり、教科書レベルでもその表記に差異があります。

と、最後にちょっと含みのある言い方をしました。

 教科書レベルでもその表記に差異がある、というのは例えば寒冷前線の通過では「南寄りの風」から「北寄りの風」以外にも、通過前の風向にはあえて触れず「風向が急に北寄りに変わり」と書いてあるところや、さらには「風向は南寄りから西または北寄りに急変し」と西要素まで登場しているところもあります。そういえば北「寄り」というふわっとした表現も気になります。そりゃ真北だけではないというのはわかりますが。

 で、少なくとも平成の中ごろまでは、結構「南西よりから北西よりに変わる」と説明されることが多くありました。そのあたりが現在でも「西または北寄りに急変し」というこだわりに出ているように思えます。

一方、温暖前線は、「通過すると風向が南寄りに変わる」ことだけ書いているところと、特に温暖前線と風向の関係には触れていないところがあります。共通しているのは、通過前の風向についてはどこも明言を避けています。寒冷前線よりもはっきりしない前線なので、致し方ないでしょう。
 とはいえかつて温暖前線は「南東よりから南西よりに変わる(ことが多い)」と言われており、通過前は寒気の中にいたのに南東とは?疑問が生じますが、うまい具合に温暖前線は今も昔も「北寄りから」とは一言も言っていません。姑息ですね。

 風向の変化の説明がこっそりと変わったのは、細かい知識を覚えなくてよいようにという配慮か、それとも最近の気候変動などで八方位で説明すると例外が多くなってきたのか、私にはわかりません。案外、小学校にコンデンサーが登場した経緯のような、あまり大きな声では言えない事情があるのかもしれません…。

ちなみに気象庁にこんな資料が。カタ型寒冷前線は地上・海上実況に明瞭な風向・風速変化を伴わないことが多い。そんなパターンもあるのか…。

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