0188 アルミ箔で銅の廃液処理(前編)

 木炭電池では、木炭に食塩水を湿らせたろ紙をまき、さらにその外側にアルミニウム箔をまきます。
ここで、食塩水を硫酸銅水溶液にしてみたら、木炭電池の性能は上がるか、実験してみました。
 10%食塩水と10%硫酸銅水溶液を比べると、食塩水の方が、モーターはよく回りました。質量パーセント濃度が同じだと、硫酸銅の方イオンの数が少なくなったためかと考えました。(また、食塩水だと O2+2H2O+4e→4OH のような反応が案外はかどるのかもしれません。備長炭がいいのは酸素をホールドしているからだし)

 その実験で、硫酸銅水溶液をつかった木炭電池のアルミニウム箔の部分がなんか茶色くなっていたことに気がつきました。

さらに放置すると、翌日、銅ができて、青かったはずの硫酸銅水溶液の色が消えてしまいました。

銅よりもアルミニウムの方がイオン化傾向が大きいため、アルミニウムがイオンになって、水溶液中の銅イオンが銅原子になったのです。

で、ふと思いついたのです。
これって、銅の廃液処理に使えるんじゃないの?

やっぱり似たようなことを考えている人がいました。
2つほど文献を。

石井幹夫、太田 励 「実験廃液の処理について-中学校における銅イオンを含む廃液の処理を中心に-」神奈川県立教育センター 研究集録20,13-16,2001

越坂 直広「実験後の廃棄物の処理を通して環境への影響や環境保全の大切さを考えさせる教材の開発」北海道立教育研究所 附属理科教育センター研究紀要第18号 (2006)

そういう文献を横目にしつつ、電気分解で使った硫酸銅の廃液に、木炭電池の実験で使い終わったボロボロのアルミニウム箔を投入!

電気分解により酸性が強まったこともあり、泡を立てて溶けていきます。

青かったはずの水溶液が灰色に…

そして銅が沈殿していきます。

色の消えた廃液。いやこれはもはや廃液ではない。もう銅イオンがないし。
 
 

析出した銅

ちなみにアルミニウム箔の残骸。まるで穴あけパンチで穴をあけたかのように、妙にきれいな丸い穴なんですよね。
 

さあきれいになった廃液を下水に流そう!

・・・と思ったら、ここでまさかの司馬懿が登場!

           r’丁´ ̄ ̄ ̄ ̄`7¬‐,-、           /
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        l'"´ ̄ ̄ヾ'"´ ̄ ̄`ヾ::幵ー{       /   こ れ は 孔 明 の 罠 だ
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         lヾ´ f}`7   ヘ´fj ̄フ  | l::i’⌒i    |    排 水 基 準 値 を
         l ,.ゝ‐イ    `‐=ニ、i | l´ ( }    ヽ
         l     {         U | l 、_ノ    ∠ヘ  超 え て る か も し れ ん
        l   / ̄  "ヽ、   | l ヽ_       \,_________
           !  ハ´ ̄ ̄ ̄`ト、  |亅〃/\
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      // `ト、__iiiii______,レ’‐’//  _,/ /スァ-、
    ,.イl{ { 々 !/´しllllト、 ̄`ヽ、 // /´,.-、 /彑ゝ-{スァ-、
  ,.イ彑l l > ゞ く l 〃 l|ハ.lヽ、 ハVゝヽ二ノ/ゝ-{、彑ゝ-{、彑ァ-、
,.イ彑ゝ-'l l ( (,) レシ′   !l `ソァ’´    _ノ7{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑{
ュゝ-{、彑l l  ` -イヘ      !l // /⌒ヽヾ/_ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、
 {、彑ゝ-'l l f⌒Yハ ’,    !l/ / ヽ_う ノ /-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ
彑ゝ-{、彑l l{ に!小 ヽ   /!l /   ,/ /彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{

東京都23区内の下水排除基準では 銅及びその化合物の排水基準は 3mg/L以下
ちなみに、アルミニウムは規定がない。

問題は、この残った水溶液にある銅が3mg/L未満か。

先ほどの文献「実験後の廃棄物の処理を通して…」によると、

肉眼で色を確認できる銅イオンが含まれる水溶液の濃度は約0.1%である。その後,色が確認できなくなった水溶液にアンモニア水を滴下し(錯イオンとし),色を確認できるのは,約0.01%までである。

ということなので、まだ排水基準である3mg/L以下をクリアしていない可能性がある。
そこであいつを召喚することにした。(つづく)