2170 溶質が複数ある場合の質量パーセント濃度は?

質量パーセント濃度を学習することの意義や有用性

 質量パーセント濃度の学習は、どうしても公式をもちいた計算に目が行きがちです。実際、問題も計算問題が中心で、しかも複雑にしようとすればいくらでも複雑にできるので、計算が苦手な生徒にとっては鬼門になりがちなところ、教師にとっても指導上の課題の一つになります。
 しかし、この計算に隠れてスポットが当たることは稀ですが、指導上の課題はもう一つあるんじゃないかと思っています。
 それは「理科を学ぶことの意義有用性」ってやつで、計算ができる生徒を含めて、「この質量パーセントが、私たちの生活に何に役立つの?」というところにどこまでこたえているか、ということです。

 質量パーセントを使うことで、濃度を定量的に示すことができる。濃度を定量的に示せることが、何に役立つのか。
 たとえば、エタノールの消毒液。エタノールで消毒するとき、もっとも効果がある濃度があり、その濃度より低くても濃くても効果は弱まってしまいます。では、その濃度をどうやって表現するか。「質量パーセント濃度で70%」と言えば一発なわけです。

 それから、糖度。単位はパーセントの代わりに「度」を使っていますが、基本的には砂糖(ショ糖)の質量パーセント濃度を表したものです。

溶質が複数ある場合の質量パーセント濃度は?

 糖度は一応は砂の濃としていますが、理科の授業ならともかく、野菜や果物などの農産物の濃度を考えるようなオーセンティックな文脈では(すみません意識他界系してみました)、そう単純な話ではなくなります。

 野菜や果物の成分は、決して砂糖(ショ糖)と水だけではないからです。他にも塩分とかクエン酸とかいろいろ入っていることでしょう。いろいろなものが混じっているとき、質量パーセント濃度をどう考えるのか。わかりやすい例を挙げましょう。

 食塩10gを水90gに溶かしたとき、食塩の質量パーセント濃度は10%になります。ではその食塩水にさらに砂糖を100g加えて溶かしたとき、食塩の質量パーセント濃度は何%といえばいいのか?
 ①砂糖は溶媒ではないので関係ない。あくまでも水は90gで食塩は10gだから10%である。
 ②水溶液が200g中、食塩が10gあるから5%である。

 砂糖はムチャクチャ溶けるので現実にこの水溶液は作れます。もっともこの話の本質は、2つの溶質A,Bが溶けている水溶液で溶質Aのパーセント濃度を計算する際、溶質Bの質量を無視するのか、それとも溶媒として扱うのか、という問題です。こういう極端な数値設定にしたのは、単に暗算で濃度が求められる(かつ現実に作れる)ようにしたために過ぎません。

 これ、理科の先生集めて、「どっちですか」と聞いたら、喧々諤々の議論になるか、みんな黙りこくってしまうか、「で、答えはどっちなの?」と逆に聞かれるか、「質量パーセントの定義がはっきりしてないから何とも言えないよ」と言われるかだと思います。

 普通、というか中学校理科の教科書でもそうですが、「質量パーセント濃度」というと、1種類の溶質と1種類の溶媒(水)で考えるパターンしかなく、複数の溶質というのを想定していないため、こういうことが起こります。かくいう私も、先日、ある理科がらみの仕事をしていたときに、水に複数の物質を溶かすケースが出てきて、「こういうケースだと質量パーセント濃度ってどうするんだろ」と悩んだことがきっかけです。

したたかな解答

 理科の先生たちが答えを濁していても、オーセントコートはるひ野、じゃなかったオーセンティックな世界では、砂糖以外のものが溶けている果物や野菜に対して「糖度」を示しています。では、彼らはどうやってこの問題を解決したのか?
 オーセントコートはるひ野とは、川崎にあるマンションらしいのですが、オーセンティックとうとうとして「オーセン」まで入力したら変換候補として出てきました。こんな言葉入力した覚えはないし、最初から辞書に入っていたとしたらすげーなーと。

 その答えに入る前に、「糖度」はどうやって調べているのでしょう。もちろん、水を蒸発させて残った砂糖の質量を測ればわかりますが、手間を考えると現実的ではありません。そこで誰でも簡単に測定できる糖度計を使っています。
 糖度計は、砂糖水が砂糖の濃度によって屈折率が変わることを利用しています。1%の砂糖水はこれだけ屈折する、2%の砂糖水はこれだけ屈折する、3%、4%は…とあらかじめ調べておけば、ある砂糖水の濃度はいくらかな、というときにどれだけ屈折したかをみれば、それが何%のものに相当するかが分かります。
 ところが、砂糖が水に溶けると屈折率は変わるわけですが、実は溶かすものが砂糖じゃなくても屈折率は変わります。食塩が溶けても屈折率は変わりますし、クエン酸とかでも変わります。そうすると、ある液体の屈折率が、5%の砂糖水と同じ屈折率になったとしても、調べた液体の砂糖の質量パーセントが5%だとは限らないわけです。砂糖以外のものも溶けている可能性があるわけで、なんなら食塩水かもしれません。

 しかあああし、ここで伝家の宝刀「こまけぇこたあいいんだよ」が登場します。
 何がどれだけ溶けているかは問わない。糖度計で1%ショ糖水溶液と同じ値を示せば、その溶液の糖度は1度だ。といういたって便宜的な考え割り切り方です。
 一応、同じ液体でも温度によって屈折率が変わってくるので、20℃を基準にしています。
 これがBrixブリックス糖度というやつです。1°Bx なんて書くのでちょっとかっこいいです。

 ただそうしたことで、新たな問題が起こることもお察しの通りです。必ずしもBrix値が大きいからと言って砂糖が多く含まれているわけではなくなりますから、例えば、10%の砂糖水よりも10%の食塩水の方が糖度(Brix値)は大きくなり「糖度とは?(哲学)」となりますし、同じ糖度(Brix値)のリンゴとレモンがあっても、同じくらい甘いとは限りません。まあ同じリンゴどうしで比べればそれほど問題ないのかな。
 この辺の詳しいことは、果物に表示される「糖度」の意味とは?~糖度計(ブリックス)の原理~ | 味覚ステーションが楽しくまとめてくださっています。

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