今年も共通テストの季節がやってまいりました。大学入試問題の中から中学校理科の知識・技能と思考力・判断力・表現力で解ける問題を取り上げていく企画です。
とくに共通テストになって、思考・判断・表現力に重点を置いたために、知識面については逆に中学校理科で学習した範囲で収まってしまうなんてことが起こっており、それを丁寧に拾ってみました。
3回目のこの記事では「化学基礎」「生物基礎」から取り上げます。
そうそう、今年から「試験終了後であっても、大学入学共通テストの試験問題をSNSに投稿する等、インターネット上に掲載することはしないでください。という注意事項が加わりました。
なので、大学入試センターのサイトにある問題pdfへリンクを張ろうかと思ったのですが、まだアップされてないこともあるのですが、センターのサイトには過去3年までしか載っていないので、4年後にリンク切れになると問題が分からなくて困るな…と思ったので却下しました。
本ブログでは、
①共通テストでも中学校の理科で解ける問題があることを示すために引用の「必然性」がある
②引用する部分は色付きの背景にして明確に区別している
③あくまでも中学校の理科で解けるよという解説がメインで問題がサブという「主従関係」
④引用は当該問題のみと必要最小限度
⑤出典はさんざん大学入学共通テストの問題だよと示している
というかたちで、著作権法を意識しながら、大学入試センターの公表された著作物である試験問題を「引用」して利用しております。
化学基礎
第1問
問2 同位体に関する記述として誤りを含むものはどれか。最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。
①互いに同位体である原子では,原子核を構成する陽子の数は異なるが,中性子の数は同じである。
②同位体どうしの化学的な性質はほぼ同じである。
③同位体には原子核が不安定で放射線を放出して別の元素の原子に変わるものがある。
④炭素の同位体である14Cでは遺跡の年代測定に利用されている。
問2 互いに同位体である原子では、原子核を構成する陽子の数は同じだが、中性子の数が異なる。 ①
問5 物質A~Cは塩化ナトリウム,ショ糖(スクロース),硫酸バリウムのいずれかである。物質A~Cについて次の実験Ⅰ・IIを行った。実験の結果から考えられる物質A~Cの組合せとして最も適当なものを後の①~⑥のうちから一つ選べ。
実験Ⅰ 同じ質量の物質A~Cを別々のビーカーに入れ、それぞれのビーカーに同じ量の純水を加えてよくかき混ぜたところ、物質Aはほとんど溶けなかったが,物質BとCは完全に溶けた。
実験II 物買BとCの水溶液の電気伝導性を調ぺたところ、物質Bの水溶液は電気をほとんど通さなかったが、物質Cの水溶液は電気をよく通した。
問5 実験Ⅰでほとんどどけなかった物質Aは水に溶けずに沈殿する(高校だと難溶性の塩とかいいますね)硫酸バリウムで、実験Ⅱで電流を通さなかった物質Bはショ糖、通した物質Cは塩化ナトリウムになる。 ⑥
問7 硝酸カリウムKNO3の水に対する溶解度は,図2に示すように温度による変化が大きい。200 gの水に100 gのKNO3を溶かした40℃の水溶液がある。この水溶液を20℃に冷却したとき、析出するKNO3の質量は何gか。最も適当な数値を、後の①~④のうちから一つ選べ。[107]g
①32 ②37 ③65 ④68
問7 水が200gなので水100gで計算して最後に2倍するとか、最初から2倍して計算するとかいろいろな解き方があります。
20℃だと溶解度は31.5、水200gなら63g溶ける。加えた硝酸カリウムが100gなので、63g溶けて、37gが溶け残る。 ②
生物基礎
第1問
問2 下線部(b)に関連して,ラン科の植物Aは,緑色の葉をつけ光合成を行う が,根を介して菌類からも有機物を得ている。また、植物Aには,光合成に必要な緑色の色素を持たない白い個体(以下,白色個体)がまれに見つかる。白色個体は,菌類から得られる有機物に依存して生育するが,緑色の葉をつけた個体(以下,緑色個体)よりも小さく,生産される種子の数も少ない。次の(1)・(2)に答えよ。
(2) 緑色個体と白色個体のそれぞれの葉に含まれる炭素のうち、菌類から得た炭素の割合を四つの生育段階において調べたところ、図2の結果が得られた。この結果から考えられることとして最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
①緑色個体は、芽生えの時期に有機物を菌類に与えている。
②緑色個体は、果実が成熟する時期には、主に自身の光合成によりつくられた有機物を代謝に用いる。
③白色個体には、菌類から得た有機物が生育に必要のない時期がある。
④白色個体では、菌類から得た有機物はほぼ全て呼吸に使われるため、生体内には残らない。
問2(2)
①これはグラフからわからない
②20%菌類から得ているということは、80%は自身の光合成で得られた有機物ということ。80%なら「主に」と言っていいよね。
③白色個体は100%菌類からもらっているだけしかわからないので、生育に必要のない時期があるかどうかはわからない。
④有機物が生体内に残らないかどうかもわからない。 ②
第3問
B 近年様々な生物の生息環境が失われ多くの種が(c)絶滅の危機に瀕している。また人問活動によって本来の生息場所から別の場所に持ち込まれた(d)外来生物がその地域の在来生物に影響を及ぼす例が増えてきた。例えば在来生物であるツチガエルは、水草の繁茂している溜池(以下、池)に生息している。しかしツチガエルなどの様々な生物を捕食する外来生物のウシガエルと魚類Cの移入により個体数の減少や絶滅が心配されている。
問4 下線部(c)についての記述として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①生物の絶滅が続くと生物多様性が減少し、その結果、生態系サービスが低下し、人間の生活に不都合が生じる。
②生物の絶滅は過去に何度も生じているが、現代において絶滅のおそれのある種が増えているのは人間活動が主な原因である。
③多くの生物が絶滅するような大規模な鏡乱が生じても、その影響は生態系が自らを復元する力を超えることはない。
④食物網の上位にいるキーストーン種の絶滅が生態系全体へ及ぼす影響は小さくない。
問4 多くの生物が絶滅しちゃったら、生態系だろうとなんだろうと復元不可でしょう! ③
問5 下線部(d)に関連して、ツチガエルと外来生物との関係を調べるため、屋外調査と実験1・実験2を行った。
実験1 池内の環境を再現するために,図3のように,水槽の半分に模型の水草を密集させて設置した。そこに,ウシガエルまたはツチガエルのうち,どちらか一方の幼生(以下,おたまじやくし)を3個体入れた。おたまじゃくしは全て同じ大きさの個体を用いた。環境に十分慣れさせた後,1個体の魚類Cを水槽に静かに放し,1時間後に魚類Cに捕食されたおたまじゃくしの数を記録した。これを10回繰り返したところ, 図4の結果が得られた。
実験2 実験1 と同様に水槽の半分に模型の水草を設置し,魚類Cは入れ ずに,ウシガエルまたはツチガエルのうち、どちらか一方のおたまじゃくしを5個体入れた。おたまじゃくしは全て同じ大きさの個体を用いた。環境に十分慣れさせた後,おたまじゃくしが水草のある側とない側のどちら にいたのかを15分間記録した。これを10回繰り返したところ,図5の結果が得られた。
野外調査と実験1 ・実験2との結果から考えられる,外来生物の駆除の影響に関する次の文章中の[ア]~[エ]に入る語句の組合せとして最も適当なものを,後の①~⑧のうちから一つ選べ。
魚類Cが両種のおたまじゃくしを選り好みなく捕食しているとき、実験 2の結果から、実験1の結果は,両種のおたまじゃくしの[ア]の違いによって生じたことが示唆される。これら三つの種の捕食一被食関係のみで, 野外調査の結果が説明できると仮定すると、魚類Cだけを駆除すると,[イ]が[ウ]の個体数を減らす影響を間接的に[エ]可能性がある。このように,すでに地域に定着している複数の外来生物の駆除を行う際には,他の生物への影響も考慮して,慎重に駆除の方法を決める必要がある。
問5 実験①ではウシガエルとツチガエルの補食率が違うことが示され、実験2ではウシガエルとツチガエルで水草のある時間の割合が示された。ここから、ウシガエルとツチガエルの補食率が違いは、水草にいるかどうか、つまり居場所の違いと考えられる。
また、野外調査の結果、ツチガエルだけのときよりウシガエルもいるときの方がツチガエルは少なかった。ここからウシガエルがツチガエルを減らす要因になっている(減らす影響を間接的に強めている)可能性がある。 ⑦
ラスボス問題。2ページ半で小問1問。特定の知識を必要とするわけではないので、丁寧に読み込んでいけば中学生でも十分正解に到達できる問題。丁寧に読み込んでいけば。
生物というと理科の中でも一番の暗記科目というイメージがあるのですが、こういう問題がふえていくとまた印象が変わりますね。もっとも、考えるのが苦手で物理から生物へ逃げて必死に丸暗記して知識量で勝負してきたのに、生物でも思考力が問われる問題になったらどうすんだ?という人もいそうな予感…。
化学基礎・生物基礎のまとめ
化学基礎は3問9点分でした。化学領域は中学と高校で酸化還元や酸塩基などの定義が微妙に違っていたり、酸化数など高校で初めて学習する概念、そしてなんといってもmolの存在があり、どうしても中学の理科の知識だけでは対応ができないところが多いです。そんなわけで基礎を付さない「化学」(「化学基礎」と区別するため「化学ガチ」と呼びます)のほうは中学理科で解ける問題はありませんでした。
生物基礎も3問ですがこちらは4点問題が2つあったので11点です。生物領域についても、今回の第1問だけ見てもミトコンドリアだとかRNAだとかATPだとかヌクレオチドとかゲノムなど、中学校では扱わず高校で初めて学習する用語が多いので、このシリーズではなかなか取り上げにくい。なのですが、生物基礎、そして生物ガチもなんですが、実験の説明が下手したら3ページくらいにわたる代わりに、丁寧に図表を含めて読み込めば、知識がなくても、(グラフなどの読み取りを含めた)読解力だけでほぼ解けるような、公務員試験の数的処理を彷彿させるような問題が散見されるようになりました。このような問題は、中学生でも時間はかかるもの解けるので、本企画では格好のターゲットですが、高校生でもそれなりに時間がかかりそうなので、リアルな受験生はなんだかなぁと思っているのかもしれません。
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