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0314 【地層の重なりと過去の様子5】地層の堆積環境の推定

 さて、地層の広がりの様子がわかりました。
 ところが、それだけでは地層を見ても、興味のない人には「それがどうした」と言われそうです。
 これに対して「ぼくドラ○もん」と答えるのも一興ではありますが、その後につい「やっぱりドラ○もんは大山のぶ代に限るよ」などといらんこと言ってしまい年齢がばれるという危険も伴う、諸刃の剣。 素人にはお薦め出来ない。

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ここはひとつ、地層から過去の地球の様子がわかることを語りたいものです。

その中で今回は「地層が堆積したときの環境がわかるよ」という話をします。

課題:どうやって地層から堆積当時の環境を推定できるのだろうか

地層累重の法則

 ただその前に、「地層累重の法則」(別名:ステノスミスの法則)というちょっといかめしい名前の法則について触れなくてはいけません。

地層累重の法則(Law of superposition)
重なり合う二つの地層がある場合、上の地層は下の地層よりも新しい。

 2日連続で雪が降ってきたら、1日目の雪が積もって、その上に2日目の雪が積もりますよね。積もった雪は上の方が新しい雪になるわけです。それと同じことですから、名前のいかめしさの割には、しごく当たり前のことしか言っていないように思えます。
 ただし、地層が堆積した後に褶曲や断層などが派手に起こって見かけ上の地層の上下が逆転している場合もあります。
 それでもこの法則の地質学上の意義は大変大きいのです。詳しくはきっといつか…。

堆積物の粒の大きさとその変化

礫、砂、泥の違いは粒の大きさだけですが、れきは浅いところ、泥は沖合と、基本的には、海岸に近いところほど粒のあらい物が堆積し、沖合ほど粒の細かい物が堆積します。

 さらにこれを先ほどの地層累重の法則と組み合わせると、こんなことがわかります。
 下から上へ礫、砂、泥と粒がだんだん小さくなってくるということは、浅い場所から深い場所になったということですから、相対的に海面が陸地より上がる海進(かいしん)が起こった、と考えられます。もう少し具体的に言うと、海面が上昇した、もしくは土地が沈降した、と考えられます。
 逆も然り。下から上へ泥、砂、礫と粒がだんだん大きくなってくるということは、深い場所から浅い場所になったということですから、相対的に海面が陸地より下がる海退(かいたい)が起こった、と考えられます。もう少し具体的に言うと、海面が下降した、もしくは土地が隆起した、と考えられます。
 …っていわれるとちょっとすごい、と思いませんか?

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火山灰の堆積

 火山灰がある、ということは火山が噴火したことが分かります。火山が噴火して火山灰が積もるのは2週間程度と、地層が堆積する長い歴史からみれば一瞬なので厚みはそれほどないのが一般的ですが、噴火するたびに火山灰の層ができるので、火山灰(凝灰岩)の地層の数が噴火の数にもなります。しかも違う火山なら火山灰の成分が違うどころか、たとえ同じ火山でも噴火の時期によって火山灰の成分が違ってくるので、火山灰を調べれば、どの火山のいつの噴火のものだ、ということがわかり、地層の時代を特定するにあたり、非常に有力な手掛かりになります。さすが「鍵層(key bed, marker bed)」になるだけのことはありますね。

地層に含まれる示相化石

 そして地層に含まれるラッキーアイテム、化石です。
 その化石がどんな環境にいたかは、現生種の適応環境と対比して考えれば、大体の見当はつくというもの。例えば現生のサンゴは暖かく、透明度が高く日光の届きやすい浅い海に生息していますから、昔のサンゴも同じような環境にいたはず。ということでサンゴの化石があれば、その地層が堆積した当時の環境がどうだったか、わかりますよね。
(サンゴの中にも深海や寒流域にいる変わり者はいますが、それはおいといて)

サンゴ 暖かく浅いきれいな海

東京駅 お客さま相談室跡地前(現存せず)

ホタテ 冷たくて中浅の海
ホタテの化石の分布を調べるとその地域がどのような気候変動を受けてきたのかも推測することができます。

千葉県印旛沼村 トウキョウホタテ

シジミ 淡水(湖)や汽水域(河口)

カキ 浅い海

(静岡伊勢丹)

マンモス 寒冷な気候

マンモス展(2019年 日本科学未来館)にて

ブナ やや冷涼な気候

結論:地層の堆積物の粒の大きさから海の深さ、火山灰の層から火山の噴火、地層に含まれる示相化石の生物から適応環境など、堆積当時の環境を推定できる。

 なお、今回の内容について、限界があることは、普通の中学生は知らんでよいですが、マニアなら知っておきたいことがあります。

実際に今回解説したようなやり方で、はっきり地層の堆積環境を推定することはできない、というツッコミもあります。
・隆起・沈降やプレートの移動もありますから、現在その地層が見られる場所の過去の環境ではないという点は見落とされがち。地層から海だったことが示唆されることだけから「この場所は昔は海だった」的なまとめは飛躍があるのですが、詳しくない人はそのようにやってしまいがちですよね。
・化石の産出した場所でその生物が生息していた(現地性の化石)とは限らず,とくに貝や葉の化石などは水などで流されて移動した後に堆積した化石(異地性の化石)の可能性だってあるのであてにならない、という話も聞いたことがあります。一方、二枚貝などはら2枚の殻がついたままの化石なら、現地性の化石,2枚の殻がばらばらのぐちゃぐちゃで割れまくっているのが密集して出てくれば異地性だな、とか、海の生物の化石とブナの葉の化石があれば海にブナはいないので、ブナは流されてきたな、などと判別できる場合もあります。

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