0713 「過冷却」をどう説明する?

気象予報士の方からのご質問。

「過冷却」についてです。
小学校高学年から中学生くらいの子供に「過冷却」という現象がなぜ起こるのか・・・
その理由をどの様に説明したらよいか教えていただけないでしょうか?

「雲の中には0度以下の水が存在する。」
「その水は何らかのキッカケがないと凍りにくい。」
↑このキッカケが何故必要かを説明する良い表現をネットや書籍の中に探してみたのですが
なかなか見つからないのです。

気象予報士ですからもちろん過冷却の現象そのものについては十分理解していらっしゃいますが、それでも、それを小中学生にわかるように説明するとなると一苦労ですね。

だって、表面エネルギーのような専門的なことをいっても普通の小中学生には難しいですから、
(そこを無理に教えようとすると、たいてい不幸な結果に終わります)

さて、どうしたらよいのでしょうか。

返信

過冷却という現象の説明としてはこんな感じでどうでしょうか。

水を少しずつそーっと冷やしていったら、0℃を下回っていたことに気づかなかった。
だから衝撃を与えたりして「おい、氷点下になっているぞ!」と水に教えてやると、水はあわてて氷になります。

「何らかのキッカケ」は私はよく「この指止まれ」をやってくれる人、と表現しています。

集まらずにはいられない、よほどせっぱ詰まった状況(例えば-20度を下回る、衝撃が加わる)があればあちこちでこの指止まれをやってくれる人(結晶)が出てきますが、

集まること自体はむしろやりたい部類に入るんだけど、自分からわざわざ「この指止まれ」をやるのはめんどくさい(やるのにエネルギーがいる)。だから普通は「この指止まれ」をやってくれる人がいればそれに参加するけど、自分から指を出してまでやろうとは思わない。

そんな人たちばかりの場合、人を集めるにはどうしたらいいのでしょうか。

答えは簡単。その中にヤラセでもサクラでもいいので「この指止まれ」をやってくれる人を一人仕込めばいいわけです。それが、フラスコやペットボトルの中で雲を作る実験における線香の煙なわけですね。

小学校5年の理科でミョウバンの結晶をつくる実験がありますが、これも最初は小さな種結晶を飽和水溶液の中に入れて冷やします。種結晶が「この指止まれ」をしてくれるので、そこにミョウバンが集まりやすく、大きな結晶になります。種結晶がないと、水溶液中で「せっぱ詰まった状況」(比較的大幅な過飽和)になってからあちこちで同時に「この指止まれ」を起こすので、小さな結晶がたくさんできてしまいあまり感動がありません。

ただしこの説明の弱点は、最近は外で友達と遊ばないのか「この指止まれ」を知らない子どもが増えてきていることです。年々この例えが使いづらくなってきています。