0710 自由研究のアイデア~「雲」の場合

 昔、気象庁が大手町にあった時代に、気象科学館の案内員をしていた時の話。
 ふだんは毎週土曜日に気象予報士が2人ずつ案内員としていたのですが、団体が来ないと「つ離れ」するかどうかの来館者数(最低記録は2人だったかな…)がデフォで、しかももちろん人によりますが、来館者の滞在時間も数十分程度ですから、ほとんどの時間は暇を持て余していました。
 しかし、夏休み期間中は来館者がとても多く、土曜のほかに日曜も開館し、予報士も3人体制で来館者を迎えています。ふだんは、このときは、家族連れとかだけで70~80人を記録します。

 その理由は…ズバリ「夏休みの自由研究」
 7月から8月前半は主にテーマ探しで来る人が多いです。さすがに後半になると、テーマ探しというよりは、具体的なテーマを持ってツメをどうするか、と言う人が増えてきます。以前ここでアドバイスした小学生が、後日、県の自由研究コンクールなどで入賞した、といううれしい報告をいただいたこともあります。あ、数は少ないですが、8月下旬の後半に慌てて1日で終わりそうなテーマを探しに来る人はいます。

 さて、夏休みのある日に当番していたとき、2組の小学生と保護者の方から、異口同音に次のような質問を受けました。ちなみに3年生と4年生でした。

「雲」をテーマに自由研究をしたいのですが、具体的にどんなことをすればよいのでしょうか

 相談を受ける立場としてはここが重要ですが、8月の中盤で、「ここまでやっているのですが、ここがうまくいかなくて困っています」という部分的、かつテクニカルな相談ではなく、自由研究全体の方向性を訊いてくるような質問の場合、あまりコンクール入賞などスンゴイことは狙っていない(狙えない)と思われますので、回答も、あまりマニアックに走らないことが重要です。
 そもそも雲のできかたや雲の種類については中学校の範囲です。

とはいえ、気象ではありませんが、レモンで10円玉をキレイにするとか、リンゴの褐変とか、ドライアイスの二酸化炭素とか、よくある自由研究本を丸写しして完成するようなものでは、先生はたぶん見飽きていますし、本来の自由研究の意義から離れてしまいます。
 昔、それこそ案内員を始めた頃は、自由研究を楽に済まそうとする生徒や親子を見て「これでいいのか?!」と内心憤っていましたが、最近は、自由研究をしろと課題だけ出して丸投げ(プリントと夏休み前の授業で説明をする場合もありますが)されたら、そりゃまぁそうなるだろうなぁと考えが変わってきました。

ならば、小3・小4あたりで何ができるか、一つのモデルケースを紹介します。

(1)同じ場所で時間を変えて空の写真を撮ってみよう
 小3、小4の場合、実際はおうちの人に撮影してもらうことになると思うのですが、同じ場所で時間を変えて空の写真を撮ります。
 *家から窓を開けて空が見えるならそれがいちばん。わざわざ外に出て…だと長続きしません。
 *できれば、毎日同じ時間で。とするとやりやすいのは朝かな。忙しいけど。
 *日付は当然ですが、天気も記録しておきましょう。
 *雨や台風、前線が近づいてきたときがチャンス。雨や台風、前線の通過前後で雲がどう変化したかが見られるとわかりやすいです。
 *方角もチェックしておこう。

(2)雲を分類してみよう
 *ここでは「積雲」だとか「巻雲」だとかの十種雲形で分類するのではありません。あくまでも子どもの感性でたとえば「わたみたいな雲」「糸のような雲」などという基準で分類しましょう。専門家による分類をあてはめることよりも、ここでは子どもの「仲間分けする力(どうやって分けるか)」を出すほうがおもしろい研究になるでしょう。
 (どうしても十種雲形にこだわる場合、子どもの視点で分類したあとで「参考として」わかる方に十種雲形に分類してもらうことはアリだと思いますが…)

(3)雲の種類と天気の関係はどうかな?
 雨が降る前とあとで、雲の種類はどうなったかな?ここの気づきを子どもの言葉で表せるとgood
 どうしても思い浮かばなければ「いろいろな雲があることがわかった」と終わらせる奥の手もあります。。。

(4)[オプション]雲(霧)のできかた について実験してみる
 じゃあ雲ってどうしてできるんだろう?と疑問をもち、本を調べてみました。雲というのは、実は水滴で…(中略)…そうしたら簡単に雲(霧)を実験で作る方法があったのでやってみました…的な。

(5)まとめ
 どうやら雲と雨が関係しているようだ。次は新たに興味をもった雨(もしくは台風)について調べてみたい…などで終わらせると前向きでよさげ。(汎用性が高い表現なので他の人がパクらなければいいのですが)

※この(2)(3)にどれだけその子どものオリジナリティが出せるかが勝負です。健闘を祈ります。。。

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